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帰郷への開拓路 6話 「アンチテーゼ 旅路 深淵とは、不滅を燃やす不滅」

ソラ(我が一部と同等、イェルは贄となり、民を救い、感無量だ。蟹への快進撃も私達を助けたのもイェルによる功績だ。が、しかし、一向に蟹は我々の養分として、支配下に置かれる気は全く持ってないようだ。守護者は総出で、翼を広げ、杖で突進しているが、蟹、「共鳴の荒者」は弱らない。あの杖で突進する者の中で“人の形”を保っていられないのはおらぬが、残っている残存兵は女性ばかりで非力だ。我々の守護者の軍勢である配下も、弓を引くが、年々命中率が落ちている。五分五分で困った闘いだな)

ソラはエラと共に空中を浮遊する翼を持つこの星の守り手の弓兵達の前線のさらに前へと進む。彼等は荷物を持つ兵士が忙しそうに射手に手渡し、“蟹”へ攻撃を仕掛ける。


ソラ「おい、少しは痛いのだろう?来訪者」


?「我が祖の輪はこれでは絶えぬ」


幾十にも重なった不気味な声の主は「共鳴の荒者」だ。彼との対話は危険極まりない為、ソラは常にエラを隣に侍らせる。何故なら、彼女?の誘惑により、判断を鈍らせる為だ。「誘惑」とはあらゆる誘惑である。それは誤って喉を詰まらせるようなことがないようにする為でもある。エラは恋人の様にソラの近くでひっ付き従う。


?「我が祖は全ての骸の為の奉仕を望んでいる。その叡智をあなた方にも同じように歩んでほしい」


ソラ「私達の故郷への設計図を汚してほしくはない。我が図とアムルと瞳に触れらるのは我が心様に反するとここの全てが物語っている。突撃隊をさらに増やしてくれ、エラ」


エラ「分かったわ…私も彼等の盾として、突撃する。飲み込まれそうな我が民を放っておいては置けない。」


ソラ「是非」


彼らの会話は無機質だ。何故なら、感情を抑制して、護るべき存在があるからだ。


許しを経た彼女は翼を使い、杖で踊る。そして、蟹へ杖を掲げながら近づく。

それに追従し、守護者達は翼を使い、同じような動きで、羽ばたく動作をした後、杖を持って、蟹へ急降下し、突撃した。ソラに合わせて、地上の人々も杖を持ち、蟹へ突撃する。


?「我が祖の意向に沿い、貴様らの興醒めを怠ろう」

蟹は声のトーンが少し薄くなり、殻を脱いで脱皮した。それを見たソラは奴の弱点を暴いた。それは彼等の存在が何層にも分かれていて、中央にすら、存在の核はないことに気づいた。その解析はエラの翼で行えるだけで十分だった。


ソラ「貴様のやり口は分かった。違う種類の泡を吹かせてやる」


瞬く間に、ソラ、彼の右翼が鋭くなり、光を纏った。右からは赤く、左からは青く、光を宿す。赤く光るは内側に畝り、青く光るは慈雨のような放物線を描き、その右翼の翼の剣は蟹を貫き、殻全てを壊した。


?「我が再生力も発展に貢献できたか?、舞い踊ろう。我が曇りなき精神でな…」


“共鳴の荒者”は樹木と化し、そこで散り散りになる。奴の泡ですら、花吹雪だ。

ソラがやつを倒したのだ。

これで、大きな来訪者の崩壊と歓迎は事態の収束を迎えたのだ。


ソラ「我が同胞達よ、近々、豊潤を齎し、礼をしよう。ありがとう」

勇者であるソラは民に労いの言葉をかける。人々は安堵した表情でソラを見上げる。


エラは蟹が散る中で、下の方に人にしては見覚えのある顔がこちらを振り返る。男だ。こちらをまじまじと見てくるが、何を言いたいか、彼の心の声は聞こえる。

ギーク(ユミか?)


エラ「あなたの奥さんは誘惑の光より輝く。そんな存在ではなかろうか?我が同胞の新たな姿を携え、有益に利用しているな。決着は着く。そう目の前をみて信じた方が良いかもしれないぞ?ケントウシャ…ふふケモノならず…ふふ…」


ギーク「妻が存命かわかるか?英雄殿?顔は広いからな…言伝はあるか?」


エラ「ギーク殿、貴殿は我々からも特別な存在に近い。ほとんどの命が“この荒者”の木へ還ることを望んだ。しかし、貴殿は生き残った。故に、顔の広さに免じて、暗示を授ける。“貴殿の鼓動が不穏として働いていなければ存命だろう”」


確信に至る情報をエラは持っていた。それは伝わったようだ。


ギーク「分かった…甘ったるい言葉の癖は抜けていないらしいな。あんたの言葉…」


ギークは涙を拭う。そして、何故が、口から吐瀉物が噴き出る。


エラ「どうした?その心の欲する妻と共に、我々への恵みとして、育み、営む経験を持つ夫婦として周囲にみせ、我々からあなたに称賛させる機会を早くくれないか?再会せよ。吐瀉物を吐くとは豪快に苦労したのだな。」


この世界では、子供がいることはステータスになりやすい。何故なら、自らが大地に、命を削って贈り物をしたとする文化があり、場合によっては食べ物や祝福、それらが多く守護者様から頂けるのだ。エラはそうしろと分かりずらい言葉で悪態をつく。


ギーク「俺は酔わない。結構だな。むしろ酔い潰れてる。気分はいつも一心同体の感覚を保っていたいのさ」


エラ「やはり、高すぎるその体力も問題だな。ギーク。」


二人は花畑に似合わない、金色の装飾の入ったローブの集団が歩いてこちらに向かってくるのが見える。「錬金術師」だ。先行しているのは「魔術師」である。魔術師は戦う錬金術師のような感覚であり、彼等はローブの頭に金色の装飾品がある。他は腹に金色の装飾があり、解析や分析、知見を主とする「錬金術師」だ。所謂、検察である。


地面を見ながら歩き回るその黒い金色の車輪が描かれた集団の1人の男がエラに近づく。

マモン「エラ様…アムル様からの命にてイェル様が矢に自身を吹き込み、杖へ変貌される時、その男に託した杖を、多くの命を守りながらも言伝を残されました。故にソラ様にお伝え願います」


エラ「その旨、真偽の判断はこの私が承った。その情報はソラへ伝える価値がある。詳しく話すのは後だ。目の前の杖を持った男の“価値が分かっての”愚行なら慎め。それが賢明だ。」


ギーク「俺に価値があるってことはさっきの悪態混ざりの忠告を聞かなくていいのな?」


エラ「それで良いなら、私が落ち込むだけで済む。しかし、マモン。この男の面倒をみれるか?私は其方の部下と行動すべきことがある。その男の子供の世話をしたいのだ。丁重に扱え。今後もあの様な魔物が振り立つとマガ鍋の管理なども大変だろう?マモンよ。火の聖域の中継地、あるいは近くの宿屋で彼を癒してやってほしい。彼に獣に成り果ててほしくないのでね。」


マモン「御意」


ギーク「マモンさんよろしく!前より少しやつれたな。綺麗な顔だな。」


マモンは少し微笑む。


ギークはその野太い声の主マモンのローブを取り、呆れた表情の白い髪の男に握手し、挨拶をする。瞳は青く、彼はギークより若そうな印象だが、二人とも年齢はあまり大差がないのだ。


マモン「ギークさんは子供を授かったのでありますか?」


ギーク「失礼だな。エラさんは起こりもしなさそうな冗談しか知らないんだ。」

結構ふざけた態度で、ギークは軽口を言う。


マモン「私もその冗談は嫌いじゃないですがね…」

マモンは苦笑いをする。


エラ「マモン…それでは戯れろ。我は錬金術師達に挨拶へ赴こう」


エラは翼で一瞬にして黒いローブの集団へ移動した。


ギーク「やっと、大地が綺麗になったな。マモン。」


マモン「ええ…」

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