帰郷への開拓路 2話「共鳴の荒物」
イェル(私は観察して、多くの情報を得るのに適している存在だと自前の翼から多くの人を感応して、考えることがたくさんある。多くの動植物は、ここ最近になって存在している。彼等は小さ過ぎる昔の同胞の成れの果てだ。それでも同胞ならば…)
そこに悲しみもない。何故なら、それすら、憎悪に満ちている歴史がまだ塗られていないからかもしれない。彼、イェルはまだ、骸の主の意識を感覚が掴んでいたがそれを手放してしまうような対話をしてしまうかもしれない。その狭間だ。
外輪の眼より
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「ひ、ひぇえ、マガ鍋に食らいついておる…こんな魔物見たことがないですぞ!勇者様!」
マガ鍋とは、骸の来訪者を分解する際に用いる鍋であり、食べる為のではなく、食べさせるのである。彼等をバラバラにしてから、咀嚼する我々同胞の触手型の鍋であり、ここで、存在の記憶に我々の蒼き瞳の記憶を刷り込み、風に乗せて、蒼き瞳の大気を我々の記憶で満たして、骸の「」に貢献する。それが我々戦士の、「勇者」の使命である。その管理をしている人間であるマモンがその鍋の触手を引きちぎられるのを目撃する。
伝わるように表現するなら、ゾウリムシ?もしくはカブトガニのような存在がマガ鍋の無数の触手を貪り食っている。これが錬成場内での確認された惨劇だ。
「勇者様…お助けを!」
「ひゃぁ!!」
貪られる人々の悲鳴と共に彼等の一部は異様な紫色の体を纏っている毛を生やした人となりかけている異形の記憶に侵食された個体も見受けられた。
イェル「皆、混濁していない者は私の後ろに下がれ」
イェルは翼を糸状に伸ばして、周りの小道具や建造物のあらゆる箇所に張り巡らせて、相手に意図的な音響を微力に流して、認知されないように人々をその災厄から隠す。
イェル(これは酷い、すぐに被害の出た人々の転生を行わなければ…彼等を大主の元へ一度繋ぐ。それが最善だ。かのようなことは今まででもそうない。記憶を無理やり奴等の骸に変えられてしまう)
ー承諾した半径翼2枚分の長さの該当の人々をアムルが抽出しようー
大主と繋がり、その場に眩い光が立ち込められ、人々はバラバラに崩れ落ちて、肉塊が獣や草木に変わった。従者である錬金術師は驚き、悶え苦しみ、泣き崩れる。
「私の親しき者よ…先に逝ってくれるな」
そう嘆き、彼は項垂れるが、何も心配することはない。彼等は故郷へ帰っただけだ。
ガサガサと音を立てて逃げるそのカブトガニもどきをイェルは糸で素早く拘束して、そいつに糸を刃物のように突き刺し、内部の情報を聞き出す。どうやら、彼等はとんでもない程までに「繁栄」に重きを置く存在らしく、彼等は効率的な身体であれば、どのような形態をも厭わないというような特性のある醜悪な存在だった。我々は大主から伝え聞く「形の再臨」を望んでいるにもかかわらず、元の命令源が「変容と繁栄」するという、範囲が広い彼等本体の分身である「共鳴の荒物」は我々の性質と遠くかけ離れていた。
「イェル様…少し取り乱しました。私の仲間は天国で幸せになれるのでしょうか?」
「保証しよう」
(なんだ。正気に戻ったか…)
彼等の概念は分かった。大きく生存本能がある支配闘争が記憶レベルで強い存在だ。我々ともまた性質が異なる。しかし、彼等は固い外皮を持つ種という形態を歪められるほど、骸を蔑ろにするはずがない。イェルは慎重に報告に帰る。




