第8話 魔王VS継ぐ者
目の前に現れた白髪のおじいさんは間違いなく、私の師匠だった。
師匠の放った空太刀が、間一髪でアルディートの死嵐を放つのを防いだ。
アルディートは顔を真っ赤にして怒っている。
「アトラ…貴様!死んだのではなかったのか!!」
「…ああ。一度死しかけたさ。でも、私の一番弟子が、孫が助けてくれたんだよ!」
その瞬間、私の背後からさらに人が近づいてくる気配がした。
ふと前を見ると、師匠の他にもう一人いた。
冒険者のローブに身をまとった、身長、体格ともに恵まれている男。
年齢は30代くらいに見える。
その男の音は、少し師匠と似たような音だった。
「君がユウ?初めまして!!」
「俺は、アルス・フラット。アトラお祖父様の一番弟子で、孫だよ。」
師匠の一番弟子は実の孫だった。
ていうか、一番弟子は生きていたんだ。
「あ、両腕が斬られているね…うわぁ、痛そう……ちょっと待っててね。」
そう言うとアルスは立ち上がり、彼の両手に魔力が集まる。
アルスは一気に私の両腕に魔法を放つ。
「超再生!!」
その瞬間、私の腕が再生していく!
これは……相当腕が立つ者しか使えない魔法だ。
確か特級魔法で、治療魔法の中でも最高峰の魔法だと師匠が教えてくれたっけ。
師匠も、これはなかなか使えないと話していた。
私は復活した両腕で立ち上がり、アルスにお礼を言う。
「ありがとうございます!助かりました!!」
「あなたが師匠も蘇らせたと言うことですか?」
「厳密に言うと違うんだ。お祖父様はまだ生きていたんだよ。呪いのせいで死んだように見えていただけさ。」
「だから、俺がその呪いを焼き切り、お祖父様にさっきの超再生をかけて、回復させたってわけさ。」
「……なるほど…。」
うん。
難しすぎて分かんない。
まあとにかく、師匠が生きていてよかった。
とその時、師匠とアルディートが双方向の背中側にふっ飛ばされた。
「……ぐぅぅぅ!!」
「……お祖父様!大丈夫?」
アルスはすごく優しい人だ。
それに加えて、年齢不相応というか、少し子供っぽいところがある。
私や師匠と接するときも、母親にケガをさせてしまった子供のように駆け寄っていく。
「…ああ、大丈夫だ。ありがとうアルス。」
「そして…ユウよ。心配をかけたな。私はこの通り生きている。安心してくれ。」
まあ、目の前の敵見たら安心出来ないんですけどね。
森の奥までふっ飛ばされたアルディートは、すでに目の前に戻ってきていた。
「…くぅっおのれ!アトラと糞ども!根絶やしにしてくれる!!」
そう言うと、アルディートは魔力を高めていく。
大地が震えているようだ。凄まじい魔力だ。
「アルディートよ。私一人だったら正直負けていただろう。でも、今は2人の継ぐ者がいる!!」
「我らの魔力、とくと味わえ!アルディート!!」
私とアルスは、師匠に向けて魔力を集める。
2人の魔力が膨れ上がる!その瞬間……
「死嵐!!!!」
2人の死嵐が森を飲み込む。
まるで、世界の終わりのような魔力の衝突が始まる。
「……くっっ……アルディートめ。前よりも強くなっていないか?!」
「……ユウ!アルス!気を引き締めろ!!」
『……はいっ!!』
「…ふっ。ハッハッハッっっっ!アトラ!!そんなものか?!」
師匠が押されているのは「音」で感じる。
しかし、負けるわけにはいかない。
私とアルスも最大の魔力を師匠へ込める!
「お前の敗因は、私達をこの地へ集結させたことだ!!」
「これで終わりだ!アルディート!!」
「……ぐっ、ぐおぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アルディートが私達の魔力に飲まれてゆく。
私達の魔力が、アルディートを打ち倒したのだ。
しかし、アルディートは消えゆく身体を抑えるように口を開く。
「……ふん。私は…これしきではやられない…いずれ貴様らを……墓場に送ってくれっ……。」
アルディートはそう言うと、灰となって消えた。
「はぁ……やったぁぁ!!」
「師匠。アルディートを完全に倒せたんですよね!?」
「とりあえずは大丈夫だろう…だがあいつのことだ…まだ何があるかわからん…ユウよ……アルスよ、よくやっ……。」
アトラはそう言って倒れた。
アルスは、師匠の首元に手を当てる。
恐らく、脈を確認しているのだろう。
「今度は死んでしまったよ。これは魔力切れによる疲労と、寿命が重なったんだね……。」
「お祖父様は最後に役目を果たしてお亡くなりになった。立派な最期でした……。」
「短い間でしたがありがとうございました。安らかにお眠りください。」
私達は胸に手を当てて、森とは言えなくなった森の中で星空を見あげる。
私は不思議と悲しみや怒りは湧いてこなかった。
師匠の立派な最期に感銘を受けているのだろう。
そして私たちは、アルディートに勝利?した。
だが、アトラ・フラットという大切な人を完全に失ってしまった……。
アルディートは倒れた。しかし、完全勝利ではなさそうだ。これから、ユウとアルスの旅はまだまだ続いてゆく。
次回第9話(第2章)音無魔法




