第9話 音無魔法(ミュート)
師匠の亡骸を焼き、お骨を集めた。
このお骨はアルスに持っておいてもらおう。
アルスに渡すと、「大切にします。」と深々とお骨に向かって頭を下げた。
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私はアルスと共に、先ほどの壮絶な戦いを繰り広げた森から出て、近くの川の辺で夜を明かすことにした。
私は、火を起こす際に、このアルスもアルディートとかに化けないだろうなと少し疑っていた。
「アルスさんは火を起こしてる間どうされますか?」
「どうって……やることないからここにいるけど?」
よかった。
また魔物がでるかも……とかで席を外すことはないから、アルディートが化けている可能性はないと見ていいだろう。
一応さっきのこともあるので、自分のクラリネットをすぐ隣に置いておく。
クラリネットを取り出した時にアルスの目が光る。
「これ、クラリネットだよね。ちょっと見せてよ。」
「…素晴らしい楽器だね。お祖父様の物だろう?」
「もしよかったらあげますよ。師匠の形見ですからね。」
「いや、それは大丈夫だよ…。」
「……ねえ、これは単純に君が演奏するためのもの?」
なんでこんな事を聞くのかと考えた時、アルディートの言葉が脳裏によぎった。
(今は、こうやって手に魔力を込めれば魔法などいくらでも出せる。)
その後、沈黙が少し続いた。
アルスは一度深呼吸をして、場の空気を変える。
「ユウ。音無魔法って知ってる?」
「いえ、初耳です。」
「音無魔法ていうのはね、今から90年前に、私が対アルディート用に作り上げた物だよ。」
「100年前の戦いでは、まだアルディートは完全に倒せていなかったし、ボロボロになったお祖父様が家に帰ってきたのを見たんだ。その時、何か出来ることはないかと思って。そして研究に研究の末、10年間でたどり着いたのが、この音無魔法ってわけさ。」
「私もそれまでは、楽器を使っていたよ。」
「そんな過去があるなんて…。
「じゃあ、この魔法はその名の通り音無しで魔力消費も無しで魔法を繰り出せる…ということですか?」
「うーん。半分合ってて半分違うかな。
「君の仮説の通り、音が無くても魔法を繰り出せるのは合ってる。でも、魔力を使わないってのは違うんだ。」
「確かに魔力消費は、極めて0に近づけられる。でもその代償が伴うことがあるんだよ。」
「……それは、寿命を削ることなんだ。」
「私は、アルディートからその魔法について少し耳にしたんです。その時私は、なんで師匠は教えてくれなかったんだろうと少し疑問を抱きました。」
「しかしそれは、師匠が私の魔法をみて、私が自滅する可能性があったから教えなかったのではないでしょうか?」
「なるほど…。アルディートもそれを見抜いてあなたを触発させて自滅させようとしたと??」
「はい。そういう事だと思います。」
「ユウにそんなに力があるとは正直思わないんだよな。
「でもいざという時には、自分の身体を捨てる覚悟のある者の音がするね。」
力がなさそうって失礼な。
私はこれでも特級魔法を使えるんだぞ!
まあ、私は愛する者もいなければ守り抜きたい者もいない。
いざという時には、私は身体を犠牲に道連れにする覚悟というか、諦めの心が常にあった。
そこでふと私は疑問に思う。
「でもアルスさんは、音無魔法を使ってますよね?なぜ平気なのですか??」
「これを極めし者は、寿命をほぼ削らずに使用できるようになるんだよ。私も最初は30歳くらい老けたかな。」
「……。」
沈黙があった。
さっきの沈黙よりも、長く、そして重い。
アルスはゴホンと咳払いをしてまた場の空気を変えた。
「それでね、俺が聞きたかったのは、これからどっちを極めるのかいと言うことさ。」
『音魔法か音無魔法か。』
私はその瞬間、これからの人生を決める重要な決断を強いられていると音で感じた。
この世界の魔法の繰り出し方
この世界には音無魔法と音魔法がある。今までユウが使っていたのは後者だ。
音無魔法は、手に魔力を込めて魔法名を叫びながら放つ。しかし、扱いきれない者は寿命を削られ、最悪、命を絶ってしまう恐ろしい方法だ。
次回第10話 アルス、それでも私は




