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元音楽教師、音楽ですべてを変える 〜第二の人生は音楽の世界?!〜  作者: 塩素
第2章 冒険編

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第10話 アルス、それでも私は

 


 アルスから突きつけられた2つの選択肢。

 

 これまで磨いてきた音魔法(サウンド)をさらに磨きあげる。

 

 それともアルスの元で音無魔法(ミュート)を習い始めるのか。

 

 普通の人ならば、かなり迷うところだろう。

 だが、私の答えはその言葉を聞いた瞬間から決まっている。




「私は……音魔法(サウンド)を極めます。」




 その時、アルスは表情を変えて、私が座っている丸太から押し倒すようにして胸ぐらをつかんできた。

 その顔には、怒り、嬉しさ、悲しみ……。

 とにかく不思議な顔をしていた。

 

 そして、目からは一筋の雫が流れていた。



「どうして!?俺はお祖父様の意思を繋ぐために音無魔法(ミュート)を作ったんだ!

「じゃあユウも一緒に極めることが、お祖父様への恩返しになるんじゃないのか!」



 アルスの口からでた言葉は、姿に見合ってないというか、子供のような怒り方だ。

 

 アルスは実のお祖父さんが亡くなり、相当の悲しみが襲っただろう。

 しかし私の前だからか、涙を流したり悲しむ様子は一度もなかった。

 

 だから感情的になるのも分からないことはない。



「俺はてっきりユウなら……お祖父様の弟子なら!俺の歩んだ道を一緒に極めてくれると思ってたんだ。でも、何でユウはそこまで音魔法(サウンド)にこだわるんだ?」



 アルスは感情的になったことを「ごめんごめん。若い人にいきなり怒鳴るのは、失礼だったね。」と謝りつつ、私を丸太に起こしながらそう言った。

 

 アルスの顔には、疑問の顔と、私の意見を受け止める覚悟を決めた顔をしていた。



「逆に私は、師匠が教えてくれたものだからこそ、繋ぐ必要があると思っているのです。」

「師匠は私に、この世界のことや魔法を教えてくれた尊敬すべき人です。できれば、敵(かたき)を取るために、音無魔法(ミュート)を極めたいという思いもありました。」

「でも、師匠から教わった音魔法(サウンド)をここで捨てるわけにはいかないと思います。」



 ここでふと、師匠との会話が脳裏に蘇る。



「(ユウよ、この世界で大切な事はな……音の力なんだよ。音の力で魔法も放てるし、奏でるものによっては、人を笑顔にすることもできる。私が目指したのは……、

『音楽の力で世界を救う』ことだ。……)



「だからアルス、それでも私は、音を奏でるんです。」


「……はっ!」



 アルスは私の決意を聞いて、鳩が豆鉄砲食らったような顔をして大きく飛び上がった。

 目からは大粒の涙を浮かべた。

 アルスの何か、心の内を思い出させるようなことをだったのだろうか。


 私は、アルスの目を真っ直ぐ見て伝える。


 アルスは激しい嗚咽の中、頑張って口を開く。



「…俺は馬鹿だ。…何でその大事な事を忘れていたんだ!」



 アルスは小さな木に向かって拳を突きつける。

 その小さな木は根元からポッキリと折れた。

 アルスはその倒れた木のように、絶望した顔をしていた。



「ユウ。ホントにすまない。俺も昔からお祖父様のその夢は聞いていたんだ。でも最近、お祖父様と話す機会がなくて、忘れていたよ。」

「お祖父様が求めたのは、アルディートの討伐だけじゃない。」



「世界を音楽の力で救うことだったな。」



 アルスは自分の頬をペシペシと叩き、私の方を真剣な眼差しで向いてきた。



「…ユウ。もし俺を許してくれるのならば、共に違うやり方で、お祖父様の夢を叶えに行かないか?」



 そう言って手を差し出してくる。

 アルスから出てきた言葉には、謝罪と決意が混じっていた。

 私もそれに答えるようにアルスの手を握る。



「もちろんです。一緒に師匠の意思を繋ぎましょう!」


「……っ!うん!!」



 アルスの目からさらに大粒の涙が流れた。

 あまり覚えていないが、私も少し涙が出ていたと思う。

 男同士の固い握手。今

 後この約束は決して忘れることはないだろう。

 


「これからのことを話そう。さあ、座ってくれ。飯を食べながらゆっくりと……。」



 私とアルスはすでに焼けていた魚を頬張る。

 かなり真っ黒に焦げていたが、今の私達には、とても美味しく感じられた。



「それでねユウ。これからどうするかと言うと、まずは冒険者として名を売ることが一番だと思うんだ。」



 待ってました。

 この世界にきて、師匠から聞いていた冒険者という職業。

 簡単に言うと、ド〇クエのように旅をしながら、町を転々とする職業だ。



「多分アルスの弟子とか、孫ですとか言ったら伝わるとは思うけど、その証明が出来るか怪しいんだよね。」

「名声、実力、そして見合った財力を持ち合わせてこそ、世に認められるってもんだ。」



 どこぞの海賊みたいなこと言われたけど、確かに一理ある。

 オクタ町での一件。

 私はアトラの弟子として町に出たし、オクタ町の過半数の人々は私のことを師匠から聞いていたらしい。

 でも私は、引き止められて、クラリネットの演奏を要求された。

 あれはある意味、「アトラの弟子であるなら、証明しろ。」と言われたようなものだったなと今理解した。

 もし、クラリネットがなかったらどうなってたことか……。


 これ以上考えるのはやめよう。



「分かりました。でも冒険者って簡単になれるんですか?」


「…だって、この世界の4分の3は冒険者だよ。各地にある冒険者受付センターに行って手続きすると、ほぼ誰でもなれるよ。」



 なるほど。

 冒険者ってのは、この世界ではほとんど当たり前になれる職業らしい。

 アルバイトみたいな感じだろうか。



「そうと決まれば、早速、次の町へ行こう!」


「え〜とね……。ここから東に進むと、ビブラーという小さな集落がある。そこに向かおう。」

    

「わかりました。明日出発ですね。」

       ・

       ・

 私達は食事を終えて、丸太の上で星を見ながら目を閉じる。

 明日からは、アトラ・フラットの意思を繋ぐために、弟子と孫の2人で進んでいくんだ。



 そう決意し、静かに夢に落ちてゆく。




アルスの心を動かしたユウ。

この2人には、アトラの意思を繋ぐ使命がある。2人の違うやり方でアトラの成し遂げられなかった、アルディート討伐+世界を音楽で平和にするため、日々前進してゆく……。


次回第11話 ビブラー集落、攻略困難?

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