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元音楽教師、音楽ですべてを変える 〜第二の人生は音楽の世界?!〜  作者: 塩素
第4章 出世編

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第38話 課題曲Ⅰ「ざんげとまよいのうた」



 新しく開いた穴の中には、ぺしゃんこに潰れた砂神龍の亡骸がギリギリあるのが分かった。

 

 そして元の穴の中にも入る。

 アルスが生きている様子はなく、亡骸もない。

 落ちているのは、アルスの血と服だけだった。

 骨もない。身体の肉片も落ちてない。

 砂神龍に喰われたか、ボロボロすぎて認識できないのか…。

 

 アルスは死んだ。


 砂神龍の討伐は成功したが、喜びの潮風よりも、懺悔の波の方がとてつもなく勝っていた。

       ・

       ・

 私達はメッツォスッスへと戻ってきた。

 アルスのローブと、砂神龍の骨を持ち帰った。

 村では、私達の帰りを待っている村人が大勢いた。

 しかし、村人たちは、いつもは3人で帰ってくるのに、その光景が見られないことから察知して、気まずそうにそれぞれの家へと戻っていった。

 

 私達は、初めて村に来たときに手当てをしてくれた魔族の家に戻った。

 

 何か様子がおかしい。

 その魔族はいつもニヤニヤしているが、甲高い声をあげて笑っていた。

 


「あの…、何がおかしいんですか…。」

 

「ふふっ。君たちの仲間の…、アルス・フラット。死んだんだろう??」


「……何が言いたい!!」


「ハッハッハッ!!それは良かったねぇ!!これでアルディート様の計画がまた進んだねぇ!!!」

 

「アルディートの……、お前は誰だ!!!」


「私は『リゾルート』。アルディート5凶配下の一人、奇術のリゾルートだよぉ。」


「なんでここにいる!なぜアルスが死んだことを笑うんだ!!」


「まぁまぁ落ち着きなよ。ゆっくり説明してあげるからねぇ…。」


 私は、ウベティが斬りかかろうとしたのを慌てて止めた。

 スピリトーソは怪しいけど、正直悪いやつじゃなかった。

 アルディート配下であることに変わりはないけど、話くらいは聞くべきだろう。

 


「私がここにいる理由はねぇ……、言えないねぇ。」


「なぜ?」


「……。言えないねぇ。」


「くっ!ふざけているのか!!この野郎!!!」


「ちょっ、ウベティ…。落ち着いてください!」


「離せユウ!こいつを殺す!!」


「おやおや…、いいのかいウベティ。私とやりあったら……、君が負けるよ??」


「……くそっ。」



 ウベティは扉をこじ開けて外へ飛び出た。

 ウベティの目には、怒りと殺意のこもった涙が浮かんでいた。

 彼の様子も気になるが、今はリゾルートから色々聞き出すのが先だ。

 と思っていると、リゾルートから話始めた。

 奴の口調が変わる。



「そういえば…、君はスピリトーソと1ヶ月くらい冒険してた、ユウ・シャープだったな?」


「そうだ。」


「……、スピリトーソから聞いたと思うが、あのアルスという男は、嘘をついている。」

「君は、フラット一族の企みを知ってるか?」


「いや、初耳だ。教えてくれ。」


「まず、奴らは5年以内に、全世界の生物をピアニッシモ化させる。すなわち、身体と魔力を最小化させるんだ。」

「そして、そこから1ヶ月の間に全ヒトと魔族を殺害。世界侵略を完遂させるということだ。」


「なんと…、でも魔族は、生命を蘇らせる魔法を使えるって聞いたが…。」


「力を失った奴が、そんな大魔法を使えると思うのか??」


「……。」


「…。正直、アルスがこんなことで死んだとは考えられない。だが、今回の戦いで、奴らに大打撃を与えられたのは確かさ。」



 アルスが生きている…。

 まあ、あり得る話だろう。

 


「俺は…、これから何をすればいい。アルディート側についた方がいいのか?」


「それはダメだ。アルディート様はお前を嫌っておられる。」

「寛大なお方な為、配下との接触は許可してくださっているが、直接となると、お前の命が危ないぞ。」


「……。」


「そうだなぁ…。じゃあ君はまず、ソプラノ陛下と会ってみたらどうかなぁ?」


「陛下と?何のために??」

 

「あの陛下はアルディート様と少し繋がりがある。会えば何か力を貸してくれるかもねぇ。」


「……、分かった。都市に帰ったらウベティと行くことにする。」


「いや、一人で行くんだ。」


「なぜだ?」


「言えない。」


「…そうかよ。」


「とにかくね…、アルスが致命傷を負った今が好機だ!君にも是非頑張ってほしいんだよねぇ。」


「……、努力はする。スピリトーソによろしく言っておいてくれ。」


「それでこそだ!じゃあまた会おうねぇ……。」

 


 リゾルートを背に向け、外へ出た。

 ウベティを探さなきゃ。

 

 アルスの死…。

 さっきまでは懺悔の波が襲っていた。

 だが、その波の中には、安堵という小魚が紛れ込んでいるのを音で感じ始めていた。







次回第39話 自由曲「ウンベシュ・レクイエム」

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