第37話 総力戦開始
アルスは穴の中へと飛び込んでいった。
正直、さっきのやり取りは死亡フラグにしか聞こえなかったが、アルスなら大丈夫だろう。
それよりも私達の心配をしなくては。
私は浮遊で空からウベティに報告する。
ウベティはそれを聞いて、その方向の魔物を倒す。
てか、本当に砂神龍だけなのか?
明らかに砂埃の量がおかしい気がする…。
「音空間。」
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いや……違う!!
アルトスパイダー、ソプラゴン、スッスコーピオンまでいる!!
しかも、ほとんどが突然変異個体だ!
これはまずいぞ。
一体一体強い上に、数が多すぎる。
「ウベティ!大量の魔物が来ます!!」
「どっちだ!!」
「5時の方向からアルトスパイダー、6時の方向からソプラゴン、9時の方向からスッスコーピオンがいます!」
「よし分かった!適時援護と報告を頼む!!」
「了解!!」
ウベティは5時の方向へ向かった。
私はそちらに注意しながら、6時の方向へと魔法で牽制する。
空太刀、氷刺、炎波…。
様々な魔法を駆使して、全力で戦う。
いわゆる、総力戦ってやつだ。
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アルスが穴の中へ突入して30分。
穴の中は驚くほど静かだ。
地上の魔物は、9割以上片付いた。
やはりウベティが強すぎる。
第1級剣士だが、特級に匹敵するといっても過言じゃない。
私も魔法で援護したが、逆に助けられた場面が何回あったことか…。
ちなみに、音剣は宿に忘れてしまった。
そのせいでウベティの手間をかけさせたことにしておこう!
魔物も減ってきたし、この総力戦…、もらった!!
「グォォォォォ!!!」
いきなり穴の中から甲高い声が響いた。
この声はアルスではない。
『砂神龍!!!』
ウベティと口を合わせて叫んだ。
穴の中から飛び出してきたのは、超巨大な龍。
姿は龍というよりは、ワームに近いかもしれない。
いや、そんなことはいい。
アルスは…。
アルスはどこだ……。
「…、ゆ、ユウ……。」
「…っ!!アルス!!!」
「おい!早く逃げろ!!」
穴の中を覗くと、全身ボロボロのアルスが這いつくばっていた。
愛剣はポッキリと折られ、内臓がえぐられている。
その時、砂神龍はアルスのほうを向く。
まずい…、アルスが死ぬ。
「グォォォォォ!!!」
「やめろぉぉぉぉ!!!」
『ドォォン!!!』
鈍い音と共に、砂埃が舞い上がる。
アルスのほうに、砂神龍は突撃した。
突撃の瞬間、私はアルスのにっこりと笑う笑顔が見えた。
まるで、「今までありがとう」。と伝えているようだった。
いや。そんなはずはない。
アルスが死ぬはずがない。
どうせ私の後ろで笑ってるに違いない。
後ろを振り返る。
そこにいたのは、絶望したウベティ。
前に振り返る。
穴の中を見る。
血溜まりと、アルスの着ていたローブ。
「う…ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私は叫んだ。
なんで叫んだかは分からない。
そして、私からみて6時の方向には、前の手が血で染まった砂神龍。
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私は『死ぬ』という単語には敏感だ。
現世でのトラウマから、他の生物を殺したり、殺し合いを見るのは好きじゃない。
魔物に対してもそうだ。
襲ってきた奴は仕方なく殺したが、襲ってこない奴を殺したりはしない。
もちろん、殺すときもためらうことが多い。
今はどうだろうか。
そんな感情捨てちまえ。
明確な殺意を持った私は、砂神龍の方向にクラリネットを構える。
私の…、今できる最大魔力を込める。
「……よせ!ユウ!!吹き飛ぶぞ!!!」
ウベティが何か言ってるけど知ったことか。
魔力が全てこもった。
全身全霊を込めて、あの魔法を唱えた。
「死嵐!!!」
その穴の隣に、さらに大きな穴が開いた。
自分の頬は、涙と雨粒の区別がつかないくらいびしょ濡れになっていた。
次回第38話 課題曲Ⅰ「ざんげとまよいのうた」




