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元音楽教師、音楽ですべてを変える 〜第二の人生は音楽の世界?!〜  作者: 塩素
第4章 出世編

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第37話 総力戦開始



 アルスは穴の中へと飛び込んでいった。

 正直、さっきのやり取りは死亡フラグにしか聞こえなかったが、アルスなら大丈夫だろう。

 それよりも私達の心配をしなくては。

 

 私は浮遊(フライムーブ)で空からウベティに報告する。

 ウベティはそれを聞いて、その方向の魔物(モンスター)を倒す。

 

 てか、本当に砂神龍だけなのか?

 明らかに砂埃の量がおかしい気がする…。

 

「音空間(サウンドメイン)。」

      

        ・

        ・

 いや……違う!!

 

 アルトスパイダー、ソプラゴン、スッスコーピオンまでいる!!


 しかも、ほとんどが突然変異個体だ!

 これはまずいぞ。

 一体一体強い上に、数が多すぎる。

 

 

「ウベティ!大量の魔物(モンスター)が来ます!!」

 

「どっちだ!!」


「5時の方向からアルトスパイダー、6時の方向からソプラゴン、9時の方向からスッスコーピオンがいます!」


「よし分かった!適時援護と報告を頼む!!」


「了解!!」



 ウベティは5時の方向へ向かった。

 私はそちらに注意しながら、6時の方向へと魔法で牽制する。

 空太刀(エアスラッシュ)、氷刺(シャーベットニードル)、炎波(ファイアウェーブ)…。

 様々な魔法を駆使して、全力で戦う。


 いわゆる、総力戦ってやつだ。

      ・

      ・

 アルスが穴の中へ突入して30分。

 穴の中は驚くほど静かだ。

 地上の魔物(モンスター)は、9割以上片付いた。

 やはりウベティが強すぎる。

 第1級剣士だが、特級に匹敵するといっても過言じゃない。

 私も魔法で援護したが、逆に助けられた場面が何回あったことか…。

 ちなみに、音剣(サウンドソード)は宿に忘れてしまった。

 そのせいでウベティの手間をかけさせたことにしておこう!

 魔物(モンスター)も減ってきたし、この総力戦…、もらった!!



 

「グォォォォォ!!!」



 いきなり穴の中から甲高い声が響いた。

 この声はアルスではない。

 


『砂神龍!!!』



 ウベティと口を合わせて叫んだ。

 穴の中から飛び出してきたのは、超巨大な龍。

 姿は龍というよりは、ワームに近いかもしれない。

 

 いや、そんなことはいい。

 アルスは…。

 アルスはどこだ……。



「…、ゆ、ユウ……。」


「…っ!!アルス!!!」


「おい!早く逃げろ!!」



 穴の中を覗くと、全身ボロボロのアルスが這いつくばっていた。

 愛剣はポッキリと折られ、内臓がえぐられている。

  

 その時、砂神龍はアルスのほうを向く。

 

 まずい…、アルスが死ぬ。



「グォォォォォ!!!」


「やめろぉぉぉぉ!!!」 



『ドォォン!!!』

 


 

 鈍い音と共に、砂埃が舞い上がる。

 アルスのほうに、砂神龍は突撃した。

 突撃の瞬間、私はアルスのにっこりと笑う笑顔が見えた。

 まるで、「今までありがとう」。と伝えているようだった。

 

 いや。そんなはずはない。

 アルスが死ぬはずがない。

 どうせ私の後ろで笑ってるに違いない。


 後ろを振り返る。


 そこにいたのは、絶望したウベティ。


 前に振り返る。

 穴の中を見る。


 血溜まりと、アルスの着ていたローブ。



「う…ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 私は叫んだ。

 なんで叫んだかは分からない。

 

 そして、私からみて6時の方向には、前の手が血で染まった砂神龍。

       ・

       ・

 私は『死ぬ』という単語には敏感だ。

 現世でのトラウマから、他の生物を殺したり、殺し合いを見るのは好きじゃない。

 魔物(モンスター)に対してもそうだ。

 襲ってきた奴は仕方なく殺したが、襲ってこない奴を殺したりはしない。

 もちろん、殺すときもためらうことが多い。


 今はどうだろうか。

 そんな感情捨てちまえ。

 明確な殺意を持った私は、砂神龍の方向にクラリネットを構える。

 

 私の…、今できる最大魔力を込める。

 


「……よせ!ユウ!!吹き飛ぶぞ!!!」


 

 ウベティが何か言ってるけど知ったことか。


 魔力が全てこもった。

 全身全霊を込めて、あの魔法を唱えた。





「死嵐(デスストーム)!!!」





 その穴の隣に、さらに大きな穴が開いた。

 自分の頬は、涙と雨粒の区別がつかないくらいびしょ濡れになっていた。






次回第38話 課題曲Ⅰ「ざんげとまよいのうた」

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