第31話 帰ってきた我が家
カエスーラを出て3日後の夜、私はソプラノ第2都市へと帰ってきた。
とりあえず、ウベティの家やアルスと泊まっている宿の方へと向かった。
深夜の風が冷たい。
弱い肌色の街灯が肌に突き刺さる。
カエスーラと違い、ヒト混みによる騒がしさ。
(あぁ…本当に懐かしい。)
宿の酒場につくと、騒がしい声の中から、あの3人の声が聞こえてきた。
やはりここにいるんだ。
早速入ろう。
「そうなの!ウベティたらね、いっつも甘えてくるんだよ!!まあ私は嬉しいんだけどね〜。」
「ははっ!ラブラブでいいねぇ…!!」
「ちょっ…フィーネ…、わざわざここで言わなくても……。」
いつもの奥の席からそんな声が聞こえた。
一旦その席の近くに座ってみる。
私は今回帰ることにを誰にも話してないから、恐らくここに私が居ると思っていないだろうな。
だから私がここまで近づいているのにバレてない。
そうだ。少しイジワルしてやろう。
皆の驚いた顔が楽しみだ。
私は旅に出る前、魔法用のクラリネットを持ち、音剣をいれた鞄を持ち、毛皮のローブを着ていた。
そして、その鞄の中には、こういう時のために変装用の仮面を持っているのだ!
さらに、私はフィーネが言っていた魔法、変声を使う。
『ユウはいかつい漢に大変身した!!!』
3人の席の前に行く。
「…おいお前たち、少し良いか?」
「……何??」
「ちょっと聞きたいんだが、この街にユウという冒険者はいるか??」
「あぁ…ユウね。ユウなら今依頼に出てるから居ないけど……何か用があるの??」
「あいつの暗殺依頼が出ている。陛下からの依頼だ。」
『なっ…!!』
アルス、ウベティ、フィーネが一斉に声をあげてひっくり返った。
笑いをこらえながら私は変装を続ける。
「あいつは3日ほど前、大罪を犯したのだ。」
「まさか……、一体、どんな……。」
「それは……、」
「かつての友人に手紙を送らずに帰ってきた罪だ。」
『……は??』
「おい、もしかしてお前……、」
ウベティに勘付かれて、仮面を脱ぐ。
3人は私の顔を見てさらに驚いた。
「ははっ!皆の反応面白かったですよ!!」
「ユウ…。心臓に悪いよ…。」
「ごめんなさいねアルス。まあこうして無事に帰って来たんですから。」
「それもそうか…。おかえりユウ!!」
「私達からも、おかえりなさいユウ。」
「うん。ただいま。」
3人へのドッキリは大成功し、皆に迎えられて帰ってきた。
その後は依頼のことは話さずに、とりあえずいっぱい飲んだ。いつまで飲んだかは覚えてない。
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翌日、私はアルスに呼ばれて研究室に来た。
この1ヶ月間、アルスは研究に没頭していたらしい。
私に名声を集めさせておいて、自分はやりたい事をして過ごしていたとは…。
まあ別にやりたい事をするのは悪くない事だ。
アルスが何を研究していたかと言うと、いわゆる
魔法薬の研究らしい。
魔法も剣術も最高峰に極めているアルスに必要あるのだろうか…。
「ねぇアルス。これはあなたが使うために研究してたんですか??」
「まさか。もちろんこれを売って、大儲けしようと思ってるんだ!」
「…ですよね……。」
「……でも、研究がちょっと行き詰まってるんだ。もしよかったら、ユウにも手伝ってほしいな。」
「まあ…、私は音魔法ですし、こんな道具があったら役に立つしれないし……はぁ…、分かりました。手伝いますよ。」
「やった!じゃあたまにここに来てよ!!多分僕は当分ここに住み込みで作業するからさ。」
アルスは完全にお金稼ぎに手を取られてしまっている。
まあ、確かに金欠なのには変わりないからな。
正直助かる。
この1ヶ月で変わっていたのはアルスだけではない。
ウベティとフィーネにも変化があった。
昨日酒場で会った時、ウベティは前よりもきっちりとし、フィーネはさらに大人っぽくなったような気がした。
どこか、転換点があったのだろうか。
街並みにも変化があった。
どうやら一度、魔物の襲撃を受けたらしい。
街には結界が張られているが、それを凌ぐほどの魔物の数と強さだったようだ。
でも、このソプラノ第2都市は、世界でも有数の魔物撃退の意識の高い場所らしく、街中の地下には、魔力を込めると出てくるトラップや、特級魔法で作られた結界に守られる避難所もある。
それに加えて、ウベティやアルスといった強者がいるので、被害は最小限に抑えられる。
しかし、木で作られた家が黒焦げになっていたり、商店街の方では、商品が散乱していたりと、所々で被害の状況が見えた。
最近、魔物裂目といい、この襲撃といい、魔物の活動がかなり活発になっているのがかなり気になる。
近いうちに相談しておく必要がありそうだ。
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もちろん、私自身にも変化があった。
この世界にきて6年。かなり生活にも慣れてきた。
まず、この世界の食事は両極端なものが多い。
めちゃくちゃ美味しいか、めちゃくちゃ不味いかだ。
恐らく、魔族とヒトの共存の影響で、それぞれのニーズにあったものが混在しているのだろう。
そのため、私が食べられる物がかなり分かるのうになってきた。
やはり食事は大事だからな。
そして、この世界には常識がない。
というよりも、法律と言うものがないのだ。
誰かの物を奪ったり、破壊したり、殺したり…。
それを取り締まる者もいなければ、止めようとする者もほとんどいない。
正直これに関してはまだ慣れない。
50年前に、治安維持のために国が出来たと聞くが、まずは法律だろといつも思う。
とにかく何より困ったことと言えば、現世で自然にやっていた事が出来ないという点だろうか。
例えば、トイレが無かったり、季節がなかったり、箸やフォークが無かったり。
現世ではもちろん、それが当たり前の国もあるだろうが、日本に住んでいた私にとっては、かなりキツかった。
魔法を使えるのは確かに便利だが、この世界の生活は大変だ。メリットに対するデメリットが大きすぎるのだ。
でも、皆と話した通り、私はこの世界を音楽で救うまで、絶対に死ぬことは出来ない。
(おお、神よ。私を見守っていてください。)
深夜の宿の部屋で一人、この世界の神に祈りを捧げるのであった。
次回第32話 報告会




