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元音楽教師、音楽ですべてを変える 〜第二の人生は音楽の世界?!〜  作者: 塩素
第4章 出世編

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第31話 帰ってきた我が家



 カエスーラを出て3日後の夜、私はソプラノ第2都市へと帰ってきた。

 とりあえず、ウベティの家やアルスと泊まっている宿の方へと向かった。

 

 深夜の風が冷たい。

 弱い肌色の街灯が肌に突き刺さる。

 カエスーラと違い、ヒト混みによる騒がしさ。


 (あぁ…本当に懐かしい。)


 宿の酒場につくと、騒がしい声の中から、あの3人の声が聞こえてきた。

 やはりここにいるんだ。

 早速入ろう。

 

 

「そうなの!ウベティたらね、いっつも甘えてくるんだよ!!まあ私は嬉しいんだけどね〜。」


「ははっ!ラブラブでいいねぇ…!!」


「ちょっ…フィーネ…、わざわざここで言わなくても……。」



 いつもの奥の席からそんな声が聞こえた。

 一旦その席の近くに座ってみる。

 私は今回帰ることにを誰にも話してないから、恐らくここに私が居ると思っていないだろうな。

 だから私がここまで近づいているのにバレてない。

 そうだ。少しイジワルしてやろう。

 皆の驚いた顔が楽しみだ。

 

 私は旅に出る前、魔法用のクラリネットを持ち、音剣(サウンドソード)をいれた鞄を持ち、毛皮のローブを着ていた。

 そして、その鞄の中には、こういう時のために変装用の仮面を持っているのだ!

 さらに、私はフィーネが言っていた魔法、変声(ヴォイスチェンジ)を使う。

 

『ユウはいかつい漢に大変身した!!!』

 3人の席の前に行く。

 


「…おいお前たち、少し良いか?」


「……何??」


「ちょっと聞きたいんだが、この街にユウという冒険者はいるか??」


「あぁ…ユウね。ユウなら今依頼に出てるから居ないけど……何か用があるの??」


「あいつの暗殺依頼が出ている。陛下からの依頼だ。」


『なっ…!!』



 アルス、ウベティ、フィーネが一斉に声をあげてひっくり返った。

 笑いをこらえながら私は変装を続ける。



「あいつは3日ほど前、大罪を犯したのだ。」


「まさか……、一体、どんな……。」 


「それは……、」

「かつての友人に手紙を送らずに帰ってきた罪だ。」


『……は??』


「おい、もしかしてお前……、」



 ウベティに勘付かれて、仮面を脱ぐ。

 3人は私の顔を見てさらに驚いた。



「ははっ!皆の反応面白かったですよ!!」

 

「ユウ…。心臓に悪いよ…。」


「ごめんなさいねアルス。まあこうして無事に帰って来たんですから。」


「それもそうか…。おかえりユウ!!」


「私達からも、おかえりなさいユウ。」


「うん。ただいま。」



 3人へのドッキリは大成功し、皆に迎えられて帰ってきた。

 その後は依頼のことは話さずに、とりあえずいっぱい飲んだ。いつまで飲んだかは覚えてない。

       ・

       ・

 翌日、私はアルスに呼ばれて研究室に来た。

 この1ヶ月間、アルスは研究に没頭していたらしい。

 私に名声を集めさせておいて、自分はやりたい事をして過ごしていたとは…。

 まあ別にやりたい事をするのは悪くない事だ。


 アルスが何を研究していたかと言うと、いわゆる

魔法薬(ポーション)の研究らしい。

 魔法も剣術も最高峰に極めているアルスに必要あるのだろうか…。



「ねぇアルス。これはあなたが使うために研究してたんですか??」


「まさか。もちろんこれを売って、大儲けしようと思ってるんだ!」


「…ですよね……。」


「……でも、研究がちょっと行き詰まってるんだ。もしよかったら、ユウにも手伝ってほしいな。」


「まあ…、私は音魔法(サウンド)ですし、こんな道具があったら役に立つしれないし……はぁ…、分かりました。手伝いますよ。」


「やった!じゃあたまにここに来てよ!!多分僕は当分ここに住み込みで作業するからさ。」



 アルスは完全にお金稼ぎに手を取られてしまっている。

 まあ、確かに金欠なのには変わりないからな。

 正直助かる。

 

 この1ヶ月で変わっていたのはアルスだけではない。

 ウベティとフィーネにも変化があった。

 昨日酒場で会った時、ウベティは前よりもきっちりとし、フィーネはさらに大人っぽくなったような気がした。

 どこか、転換点があったのだろうか。


 街並みにも変化があった。

 どうやら一度、魔物の襲撃を受けたらしい。

 街には結界が張られているが、それを凌ぐほどの魔物の数と強さだったようだ。

 でも、このソプラノ第2都市は、世界でも有数の魔物撃退の意識の高い場所らしく、街中の地下には、魔力を込めると出てくるトラップや、特級魔法で作られた結界に守られる避難所もある。

 それに加えて、ウベティやアルスといった強者がいるので、被害は最小限に抑えられる。

 しかし、木で作られた家が黒焦げになっていたり、商店街の方では、商品が散乱していたりと、所々で被害の状況が見えた。

 

 最近、魔物裂目(モンスタークラック)といい、この襲撃といい、魔物の活動がかなり活発になっているのがかなり気になる。

 近いうちに相談しておく必要がありそうだ。

       ・

       ・

 もちろん、私自身にも変化があった。

 この世界にきて6年。かなり生活にも慣れてきた。

 まず、この世界の食事は両極端なものが多い。

 めちゃくちゃ美味しいか、めちゃくちゃ不味いかだ。

 恐らく、魔族とヒトの共存の影響で、それぞれのニーズにあったものが混在しているのだろう。

 そのため、私が食べられる物がかなり分かるのうになってきた。

 やはり食事は大事だからな。


 そして、この世界には常識がない。

 というよりも、法律と言うものがないのだ。

 誰かの物を奪ったり、破壊したり、殺したり…。

 それを取り締まる者もいなければ、止めようとする者もほとんどいない。

 正直これに関してはまだ慣れない。

 50年前に、治安維持のために国が出来たと聞くが、まずは法律だろといつも思う。


 とにかく何より困ったことと言えば、現世で自然にやっていた事が出来ないという点だろうか。

 例えば、トイレが無かったり、季節がなかったり、箸やフォークが無かったり。

 現世ではもちろん、それが当たり前の国もあるだろうが、日本に住んでいた私にとっては、かなりキツかった。

 魔法を使えるのは確かに便利だが、この世界の生活は大変だ。メリットに対するデメリットが大きすぎるのだ。

 でも、皆と話した通り、私はこの世界を音楽で救うまで、絶対に死ぬことは出来ない。

 


 (おお、神よ。私を見守っていてください。)

 

 

 深夜の宿の部屋で一人、この世界の神に祈りを捧げるのであった。







次回第32話 報告会

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