第27話 新たな町
大騒動を引き起こした会議から1週間がたった。
国境に集まってゆく人々の目線の先には、カンラとフリオーゾが立っていた。
空高く立つ国境の上に2人。
これから盛大な式典が開かれようとしていた。
「…カエスーラの皆様。この度、私達は東西の町の領土問題に決着をつけたことをご報告いたします。」
「これより、俺…俺達の町は、正式に分割される事に決まった。」
「いろいろと思う事もあるかも知れませんが、皆様どうか、ご理解ください。」
「そして今回の決定に基づき、両側の町への移動は自由にする。なお、町の名前はこのまま引き継ぐこととする。」
「町は分割されましたけれど、皆様の協力でより栄えた町にしていきましょう!!」
「…うぉぉぉぉ!!!」
「さすがカンタビレー様だ!よくやってくださった!!」
「フリオーゾ様万歳!!!」
両側の町から盛大な拍手が上がった。
2人は軽く手を振りながら拍手に応えた。
隣にいるミラノさんは、やっと決まったことにホッとして、涙を流していた。
「盛大な拍手をありがとうございます。さて…今回の立役者にもお言葉をもらいましょう。」
「ユウ、アルス。こちらへ…。」
「……え??」
予想外の振りをかけられた。
周りの人の目線が一気にこちらに注目する。
私はスピリトーソと軽くうなずき、浮遊を使い、2人のいる場所へと向かった。
「…えぇ、改めて私はユウ・シャープ。こちらはアルスです。私達は通りすがりの冒険者としてこの町に来た者です。」
「今回、カンラ様のご指名を受け、会議にご参加させていただきました。」
「おいおい…そんな奴が決めたのかよ……。」
「カンラ様達も落ちたもんだな……。」
街の人の反応は想定内だった。
そりゃそうだ。
ただの部外者が大事なことを決める会議に参加して、貢献している。
批判されるのは当たり前だ。
すると、フリオーゾが立ち上がった。
「…皆の者、よさんか!」
「……。」
フリオーゾの号令によって、町の人達は一気に静かになった。
真剣な顔のフリオーゾの前に、カンラがさらに立ち上がる。
「ユウ達は、かつての英雄…アトラの弟子なのです。それ以外に理由がいりますか?」
「なに…あのアトラの弟子だと…?」
「アトラって、かつて魔王を倒した伝説の…。」
それを聞いた住民たちは、驚いたのち、再び歓声をあげた。
カンラがどうして私達によくしてくれるのか理由が分かった。
アトラの弟子だというだけで、凄いヒトになるらしい。
スピリトーソ(アルスに偽装中)はかなり不満そうな顔をしているが…。
とにかく、私達の存在意義も証明することが出来て、式典は大成功で幕を閉じた。
◆◆◆
式典が終わり辺りはすっかり暗くなった頃、式典の宴が始まっていた。
宴は国境の門をまたぎ、両側の町のヒトが入り乱れてのどんちゃん騒ぎとなっていた。
人混みをかき分けて、私達はカンラ達のいる席へと向かった。
そこでは、カンラとフリオーゾはもちろん、会議に参加していた両国の外交官達の姿もあった。
スピリトーソを見て、また失禁しないといいけど…。
「…皆様、式典お疲れ様でした。」
「あっ、ユウ!ちょうどいいところに来ましたね!あなた達の話をしていたのですよ!!」
「私達の話ですか…?」
「そうですわ。半信半疑だったけど、本当にアトラの弟子だとは思いませんでしたもの。生きている間に会えるなんて光栄ですわ!」
「いやいや…頭を上げてください。私達はただの冒険者ですから…。」
頭を下げてくるカンラ。
スピリトーソを見てガクガク震えるフリオーゾや外交官。
アルスということにされて終始不満そうなスピリトーソ。
とてもカオスな状況の中、私はカンラにあることを尋ねた。
「…カンラ、この辺で剣士の修行が出来る場所を知っていますか?」
「剣士の修行ですか……あっ、フリオーゾ様。ご存知でしたよね??」
「あぁもちろん。私の息子がやっている『ドゥラメンテ道場』。こっちのカエスーラ西村にあるぞ。」
「本当ですか?なら今度、案内していただいてもよろしいですか??」
「当たり前だ。恩返しをしなければと思っていたからな。」
「ありがとうございます!!」
固い握手を交わした。
私は剣士として、少し修行してもいいだろうという気持ちが芽生えた。
スピリトーソはそれを聞いて、少し笑顔になった気がする。
奴に勧誘されてたから少し気に食わないが、私にとって損はないだろう。
◆◆◆
翌日。
私達もあの後かなり飲んで寝落ちしてしまった。まだ頭がズキズキする中ふと周りを見る。
情けない姿で寝ている人が山盛りだ。
しかし、様子がおかしかった。
ヒトが少ない。
カンラやフリオーゾはともかく、隣で寝ていたはずのスピリトーソもいない。
もう一度よく周りを見てみる。
上だ。
カンラ達は昨日の式典会場まで登っていた。
私もすぐに駆けつけた。
何かあったんだろうか。
「…いったい何事ですか?朝早くからここに集まるなんて……。」
「僕から説明するよ…。」
「…昨日の深夜、街の近くの森に『魔物裂目』が出現したんだ。」
「魔物裂目??」
「そう。その名の通り、魔物が大量に出てくる裂け目さ。発生条件や原因も分からないけど、とにかく最悪な物だよ。」
「ほら…あそこを見て……。」
「……!!!」
スピリトーソが指をさす方を見る。
そこにはぱっくりと割れた空間が歪み、中から恐ろしい魔力が流れているのを音で感じた。
裂け目の全長は、10メートルくらいある。
私は少し不安を抱き、スピリトーソにこっそり問いかけた。
「…アルディートの仕業じゃないのか?」
「まさか。アルディート様は裂け目までは操れないって言ってたよ。」
「じゃあ…自然現象って事か?」
「そうなるね…僕はアルスがやったと思ってるけど。」
「……ふん。まあとにかく監視を続ける感じか?」
「そうだね。それしかないよ…。」
◆◆◆
その後も交代しながら監視を続けていた。
後にスピリトーソから聞いた話で、少しずつ分かってきた事がある。
まず、魔物裂目から出てくる魔物は、ほとんどが突然変異のものらしい。
しかも、尋常ではない強さをしているようだ。
過去に、特級魔法使いと剣士の2人で立ち向かったが、ものの10分でやられてしまったという歴史があるらしい。
しかもたちの悪い事に、一つの村や街を壊滅させると、その裂け目は消滅するらしい。
そこまで聞くと、完全に誰かが操っているとしか考えられない…。
とにかく今はどうすることも出来ないから、被害を抑えるための対策をしよう。
盛大な式典のすぐ後に、この町を壊されるわけにはいかない。
次回第28話 新たな力 8/22 20:00




