↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元音楽教師、音楽ですべてを変える 〜第二の人生は音楽の世界?!〜  作者: 塩素
第3章 スピリトーソ編〜疑念と信念〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/43

第24話 音を凌ぐ



 私は今日から奴に、音速(スピードオブサウンド)を習うことになった。

 そもそも魔法かどうかも分からないこの技。

 私に使えるようになるのだろうか…。



「じゃあ早速やっていくよ。ユウくんは、第3級魔法の『疾走(スプリント)』は使えるよね?」


「あぁ、一応使える。ほとんど使ったことはないけどな。」


「いいね。じゃあまず、疾走(スプリント)を限界まで高めてみよう。」

「君の魔力で高めた魔法は、恐ろしいほど強力になる。君の放つ空太刀(エアスラッシュ)のようにね。」



 言われた通りに疾走(スプリント)を高めていく。

 魔法を高める方法は簡単だ。

 普通に放つよりもさらに魔力を込めて放てばいい。

 強すぎると暴発したりすると聞くけれど、音楽をやってきたおかげか、そのへんのさじ加減は得意なようだ。

 スピリトーソも褒めるくらいには上手いようだ。


◆◆◆


 ある程度時間がたった。

 確かに高めた疾走(スプリント)は速かった。

 でも、スピリトーソの速さには一向に追いつける気がしなかった。

 途中でスピリトーソの音速(スピードオブサウンド)を目で追えるか確かめたり、追いかけっこをしたりもした。

 しかし、全てにおいてスピリトーソが完全に上回っていた。

 スピリトーソが340m / sだとすると、私は100m / s程度だろう。

 

 私はへとへとになって、一度木陰で休息をとる。

 がぶ飲みした水が口から滴るのを荒く拭った。



「なあ…その音速(スピードオブサウンド)って本当に魔法なのか?」


「……厳密に言うと違う。」

「魔法は魔力を高めて放つのが基本でしょ?でも音速(スピードオブサウンド)は違う。全身の力を振り絞って放つ…技なんだよ。」


「その技が疾走(スプリント)から派生していると?」


「…まあ、そんな所なんじゃない?確証はないよ。」


「おいおい…大丈夫なのかよ…。」



 もしアルディートから授かった技だとしたらどうだろう。

 私に使えるようになるわけが無い。

 

 まあ、速く動けるようになることは悪いことじゃないから、この技の練習は無駄ではないのかもしれない。


◆◆◆


 会議当日、すなわち3日後。

 ある程度はスピリトーソに追いつけたかもしれない。

 音速までは行かないが、かなり速く動けるようになった。

 今日は会議が始まるまで、スピリトーソと実践形式で戦うことになった。

 正直勝てる気がしないが、これからのためにも、ここで一方的にやられるわけには行かない。



「…さあ行くよ!しっかりついてくるんだよ!!」


「…こい!スピリトーソ!!」



 私は木刀を構えてスピリトーソを迎え撃つ。

 スピリトーソも木刀を持ち、音速(スピードオブサウンド)を使い、至る所から攻撃を仕掛けてきた。

 しかし、私はスピリトーソの動きを何度も見てきたし、自分も速くなってきた。

 スピリトーソからの攻撃をギリギリで防ぐことが出来ている。

 

 だが、これはもう何回目だろうか。

 これでもさっきから30回以上やられている。

 このままではいけないと思い、今回はスピリトーソに力ずくで攻撃を仕掛けてみた。

 すると、ちょうどスピリトーソの攻撃と重なり、均衡状態となった。



「…やるね、ユウくん。前より速く、強くなってるよ!」


「……何とか追いつくようになってきた。どうだ?疲れてきたんじゃないか??」


「…、隙ありだよ!!」


「……うっ!!」



 油断した所にスピリトーソの木刀が懐に入った。  

 急所を突かれてその場に倒れ込んだ。

 速さ関係なく、油断でやられた。

 



「今回もダメだったね。さあ、もう1回やるよ。」


「…はぁ……はぁ。もう無理だろ。いくらなんでも速すぎるんだよ…お前。」


「…でも何回も僕の攻撃防げてるじゃん。かなり成長してるよ。」


「それじゃダメだ。戦場だったらもう、お前に殺されてる。1回で勝負が決まるんだから、それを決められるようにならないと……。」



 スピリトーソの励ましを遮るように話した。

 でも本当に、戦場では一発勝負だ。

 1回の油断や隙で死んでしまう。

 それを何とかしないと意味が無いじゃないか。

 せっかくスピリトーソが鍛えてくれているんだから、それに少しは応えなければならない。

 いくら信用してないとはいえ、自分を強くしてくれているんだから。



「…あのさ。試しに魔法を使って戦ってみたら?」


「魔法を使って??」


「そう。君は剣の扱いはまだ慣れてないでしょ。だから、君の得意な魔法で勝負するんだよ。」


「…でも、お前は木刀だろ?そんなの魔法で防げるわけないじゃないか。」


「まあ、実践あるのみ。やってみよう!!」


「……分かった。」



 そうしてクラリネットを準備して、魔法を放つ準備をする。

 多分スピリトーソは、私の魔法を避けるかさばくはず。

 本気でやっていいんだよな。

 魔法が当たって死にました、とか無いだろうな…。

 まあ考えてても仕方ない。

 やってやる。


 何回目か分からない手合わせが始まった。

 相変わらず凄まじいスピードで動くスピリトーソ。

 とりあえず音空間(サウンドメイン)を展開して、奴の動きを読む。



「…はっ!……よっ!!」


「…ユウくん、さっきより動きが速くなってるよ!いいね!!」


「…集中してるから話しかけないでくれ!」



 スピリトーソの攻撃を、さっきはギリギリで受けていたけれど、今回はかなり余裕をもって回避出来た。

 音空間(サウンドメイン)のおかげか、魔法を使うことへの慣れなのかは分からないけど、さっきより明らかにいい動きが出来ている。



「…避けてるだけじゃつまらないな。もっと攻撃してきなよ!」


「じゃあお望み通り……空太刀(エアスラッシュ)!!」


「…っ……おぉ…、いいね!楽しくなってきたよ!!」


「…まだまだ行くぞ、スピリトーソ!!」


◆◆◆


 こうして1時間。

 ずっと均衡状態が続いていた。

 お互いに回避したり、相殺したりと、一向に勝負の一撃にたどり着くことは出来なかった。


 が…この瞬間。

 スピリトーソが勝負を仕掛けてきた。



「…そこだっ!終わりだよ、ユウくん!!」


「……ふっ。かかったな、スピリトーソ。」


「……なっ、動けない!これは……。」


「これはただの落とし穴さ。さっきからお前、攻撃の瞬間だけは直線的な動きになっていた。」


「それを予測して、戦闘中にこれを掘ったの?」


「…そういう事だ。終わりだ、スピリトーソ!」



 コツンと弱く頭を叩いた。

 その瞬間、私は達成感と高揚感で満たされた。

 スピリトーソから1本とれた。

 その嬉しさは、私にも計り知れないほど大きいものだった。



「…やった、1本取ったぞ!!」


「あぁ、本当に凄いよユウくん!僕から1本取るなんて…!」

「正直、君が音速(スピードオブサウンド)を習得出来なかったのは残念だけど、君は僕の動きを見切った。それだけで十分だよ。」


「そうか…その……なんだ……素直に礼を言う…ありがとう。」


「あ、ユウくんがついに心を開いた!嬉しいなぁ。」


「そんなつもりで言ってな!…。」

「……確かにまだ信用してはいないけど、素直に感謝はしてるよ。」


「まあ、照れてるユウくんを見れただけで良しとしようか。」


「……うるさい。とにかく速く準備して、会議に行くぞ。」


「はぁぁい!!」



 こうしてスピリトーソから1本とれた私は、家に戻り汗を拭った。

 正装に着替えて会議会場へと向かう。


 音速(スピードオブサウンド)の本質や、習得は出来なかったが、それを凌ぎ、一撃を入れられた事は、大きな一歩となるだろう。

 これからの会議でどんな結末になるかは分からないが、スピリトーソが鍛えてくれたこの時間を無駄にはしないよう、上手く立ち回っていこう。


 剣士の道は、とりあえず後回しだ。






次回第25話 国境都市の危機 8/18 20:00

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。