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元音楽教師、音楽ですべてを変える 〜第二の人生は音楽の世界?!〜  作者: 塩素
第3章 スピリトーソ編〜疑念と信念〜

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第23話 カエスーラ国境都市



 激闘から15分。

 ほとんど休む間もなく歩き出した私達。

 全身が悲鳴を上げる中、国境と見られる川の付近に、連なる家々を発見した。

 恐らくここがカエスーラ国境都市だ。


 しかし遠くから見えた都市には、その川をまたぐのを防ぐようにレンガ塀が建てられていた。

 まるで都市が半分に分断されているようだ。

 

 こういう事はスピリトーソに聞くのがいいだろう。



「この都市は、前からこんな感じだったのか?」


「いや…今から50年くらい前だったかな?その頃にヒト達の全面戦争があって、その秩序を正すために国が出来たんだ。」

「その時、ソプラノ共和国とアルト・テノール連合共和国の国境のど真ん中にあったカエスーラは、町を分断されたのさ。」


「アルディートや師匠達は関与してないのか?」


「うん。全く無関係だったはず…。勝手にヒト達が争って、殺し合っただけさ。惨めだよねぇ。」


「……。」



 スピリトーソによると50年前、全ヒト総力戦争という争いがあったらしい。

 きっかけとしては、人のワガママな性格のせいと言われていて、詳しくは分かってないらしい。

 そして、魔族であるアルディートや師匠達は全く関与していない?戦争のようだ。

 それを抑え込むために、ヒト達は今一度再結成し、今の国が出来たんだとか。

 しかし、その頃には半分以上のヒトが犠牲になったらしい……。


 そんな話をしながら、町へと入っていく。

 そこまで大きな町ではないが、決して発展していないわけではなかった。


 町を歩いていると、ふと声をかけられた。

 おばちゃんだ。



「…おや、冒険者かい?ここに来るなんて珍しいねぇ。」


「どうもこんにちは。ここの町にはあまり冒険者は来ないんですか?」


「もちろんさ。こんな国境の町なんて、遠いし、危険だらけだからね。」


「…きけん??」


「そうだよ。この町は知ってると思うけど、今2つに分かれている。」

「でもね、お互いの国のお偉いさん達は、一つにして占拠してしまいたいと考えてるんだよ。」


「…だから、いつ戦争が起こってもおかしくないと…。」


「そういう事さ。だから冒険者はわざわざこんな所には来ない。」



 どうせなら両国で分け合ったらいいのに。

 そういうわけにもいかないんだろうな。

 人は欲望には逆らえない。

 領土を取ったほうが格上だと勝手に思い込んでしまうのだ。

 私も人だから、そういう考えは否定は出来ない。



「…とりあえず、宿を案内してよ。疲れたんだよね…。」


「おっとすまない。じゃあついてきてくれ。」


「頼むよ。」

  

◆◆◆


「ここだよ。ここが一番安全だね。」


「…ここって、ただの一軒家ですよね?」


「そうさ。この町に宿なんてものはない。だから私の家に泊めてあげるのさ。」


「それは…恐縮です。でも本当によろしいのでしょうか??」


「いいのさ。冒険者さんの話も聞きたいし。」


「…ありがとうございます!」



 そうして、このおばちゃんの家に泊まることになった。

 この町は住む家と食品の屋台くらいしか無いらしい。

 確かに一軒家もあるが、アパート的な物も多く見られる。

 軽く身支度を済ませて、おばちゃんにお茶を出してもらった。

 机に3人で座り、ゆっくり話す。



「…それで、今の町の状況はどんな感じなんですか?」


「1つの町として成っているけど、実質的には対立している2つの町になっているね。」

「しかも私達はこの国境を越えられないんだ。」


「それはなぜでしょうか??」


「……殺されるからさ。」

「また逆も然り。あちらから入ってきた人も殺される。」


「……。」



 いわゆる冷戦状態というか、昔歴史で習ったような事が目の前で起きている。

 なんとか私達で解決できたらいいが、国同士の対立でもあるから、首を突っ込むのは不適切だろう。

 

 そんな考えもしなそうな奴が一人。

 スピリトーソ。

 奴がとんでもないことを言い出した。



「…それなら、僕たちも手伝いますよ。」


「……どうやって?」


「もちろん、戦争に参加するんだよ。」


「……は??」


「多分僕たちが加勢すれば、間違いなく勝てるんじゃないかな。」


「…でも、人を殺すのは気が引けます…。」


「…そう。じゃあ僕だけでもやるよ。なんなら今からでも宣戦布告しようか?」



 挑戦的なスピリトーソを抑えていると、おばちゃんが静かに口を開く。



「それは…それはやめてくれ。私達の命が助からないかもしれない。」

「それに、あと3日後に会議がある。それまではおとなしくしといてくれんか?」


「……仕方ないなぁ。」


「あぁ助かるよ。」



 とりあえずスピリトーソ戦争の危機は去った。

 それにしてもこのおばちゃん、誰かに雰囲気が似てるんだよな…。

 誰だったかな。



「…そういえば、お名前は?」


「あぁ、そうだったね。」

「私は『ミラノ・ドルチェ』と言うよ。」


「…ドルチェ??あ、もしかして…。」

「ミライのおばあさん?」


「え…あぁ。そうだよ。ミライは私の孫だね。」



 なんと、ミライのおばあさんだった。

 確かに言われてみれば、ミライやマエストーソに似ているかもしれないな。

 まさかこんなところで会うとは…。



「…どうしてミライを知ってるんだい?」


「それはですね…ビブラー集落で色々ありまして…。」


「詳しく聞いてもいいかい?」


「あ、僕も聞きたい!!」


「まあ、2人がそこまで言うなら、聞かせますよ。」


「………。」



そうしてミライとの出会いや、ビブラー集落での一件を話した。

 途中でスピリトーソが不思議な顔をしていたが、まあ大したことじゃあ無いだろう。


◆◆◆


 ミラノさんが、夕飯を作ろうかと言ってくれた。

 私達は疲れていたから、おつまみのような物を出してもらって、夜まで酒を飲んで過ごしていた。


 やがて眠くなった頃に、部屋に案内された。

 2人一緒がいいかと聞いてきたので、もちろん別部屋でお願いしますと言うと、スピリトーソが馴れ馴れしく「寂しいよぉ」とか言ってきたので、一発デコピンを入れておいた。

 私達は会議の行われるまで、この町にいさせてもらえる事となった。

 今日は久しぶりにベッドで寝れる。

 今夜はよく眠ることが出来そうだ。

 この国境都市の問題。

 今度の会議で解決できればいいんだけどな…。

 そう思いつつ、泥のように眠った。


◆◆◆


 翌日、朝日が珍しく出ている時間帯に起きた。

 疲れていたせいか、いつものようにランニングする気力も無かった。



(ミラノさんに疲れを癒す食べ物とか教えてもらおうかな。)



 そう思いつつ、リビングへ向かった。

 リビングへ行くと、朝食の準備をするミラノさんがいた。

 まだスピリトーソは起きていないようだ。



「あ、おはよう。朝食もうすぐ出来るからね。」


「おはようございます。わざわざすみませんね。」


「いいんだよ。私も久しぶりの客人で楽しいからね。」


「本当にありがとうございます。」

「…ところで、疲れに効く食べ物とかって何かご存知無いですか?」


「…疲れに効くかい?そうだね……。あ、丁度いいのがあるよ!」



 そう言って、棚の奥から何かが入っている瓶を取り出してきた。

 その時、ちょうどスピリトーソが起きてきた。



「これさ。この『オケの実のシロップ』。これを飲むと、すっと疲れが取れるよ。」


「…ん……ちょっと一口…飲ませてほしいな。」


「おや、おはよう。さあどうぞ。」


「……ん!?これは……まずっ!!」



 スピリトーソは飲んだ瞬間に、眠そうな目がきりっとした。

 ある意味いい刺激にはなったか…。



「そんなに不味いのか?ミラノさん。私にもください。」


「どうぞ。」


「……え、めちゃくちゃ美味しいです!」


「それは良かったさ。本来この果実は、世界で一番甘いと言われているほどだからね。」

「…もしかすると、君は甘いもの嫌いだったかな?」


「げほっ……いや、そんな事は無いよ……むしろ好きだし…。」


「…多分こいつは魔族だから、ヒトの食べるものが口にあわないのではないのでしょうか。」



 そう。

 あの師匠やアルスも魔族。

 2人も私と好みが違っていた。

 私が好きなものを嫌い、私の嫌いなものを好んでいた。



「…確かに、魔族さんにはちぃときつかったかもね。ごめんね。」


「いや、いいんだよおばちゃん。おかげで目は覚めたから……。」


「そうかい、それはまあ良かったと言っておこうか。」



 そうして、朝の騒動?を終えて、朝食を取った。

 カエスーラの郷土料理という、魔物の干し肉と野菜のスープ。

 この世界の食事にしては美味しいくらいで特別美味しい訳ではなかったが、一番温かい食事だった。

 


 その後スピリトーソに連れられて、少し町外れの草原にやってきた。



「スピリトーソ、なんでこんなところに呼んだんだ?」


「それはね……君に音速(スピードオブサウンド)を教えておこうと思ったんだよ。」


「……え?前は剣士の道を通らないと教えないとか言ってなかったか??」


「そうだったけど、何か嫌な予感がするんだよね。」


「…あの会議の事か?」


「そう…。そのまま戦争になる予感がする。」

「だから今のうちに教えておこうと思って。」


「……。」



 スピリトーソの感はよく当たる。

 やはりアルディートの配下なだけあって、察知能力は長けている。

 まるで、未来を知っているかのように…。


 とにかく私は、今後に備えてスピリトーソ最大の奥義である『音速(スピードオブサウンド)』を習うこととなった。


 不測の事態は避けなければならない。

   






次回第24話 音を凌ぐ  8/18 20:00

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