↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元音楽教師、音楽ですべてを変える 〜第二の人生は音楽の世界?!〜  作者: 塩素
第2章 冒険編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/43

第20.5話 運命の赤い糸は存在する〜フィーネの初恋〜



 私はフィーネ・ポコ 25歳。

 ソプラノ第2都市で生まれたごく普通の女の子。

 そんな私は、ある男性に恋をするんだ。


 ウンベシュ・ティームト 32歳。

 彼は当時、S級冒険者として頑張ってた最中だったんだ。


 そんな2人の出会いを遡ってみよう。


◆◆◆


 今から18年前。

 私(フィーネ)は夜、お父さんと一緒にご飯を食べに商店街に来ていた。


 その頃の私は、何でもイヤって言ってしまう…いわゆる、イヤイヤ期だった。

 そんな調子だから、ご飯屋さんでお父さんに叱られてしまう。



「…いい加減にしなさい!フィーネ!!」

「何回言ったら分かるんだ!俺はきちんとお礼を言いなさいと毎日言ってるはずだ!!」


「…だって、イヤなんだもん……。」


「っ…!!またイヤって言って……他人に良くしてもらったならまずありがとうだろ!?」


「……イヤ。」


「…分かった、もう勝手にしろ。」


「あぁ…お父さん……。」



 私は店内でお茶をこぼした。

 その時にいた店員のお姉さんに拭くのを手伝ってもらった。

 でも私はお礼を言うことが出来なかった。


『ありがとう』っていうたった5文字の言葉だけど、当時の私にはとても言いづらく、重い言葉だった。


 そうしてお父さんは先に家に帰ってしまう。

 お姉さんは一緒に行こうって言ってくれたけど、そこでもイヤイヤは発動してしまう。

 だから私は暗闇の中、1人で帰ることになった。

 商店街の中は人が多く、街灯もあるから安心できた。

 でも一度商店街から出ると、ほとんど街灯のない道だ。

 しかもここから30分も歩かなければならない。

 私はお父さんを探しながら少しずつ歩いた。



「…お父さん?どこにいるの??フィーネが悪かったから、出てきてよ……。」


「……こっちだよ。フィーネ。」


「あ!お父さ……っ!!!」



 そんな中不幸が訪れる。

 その声は確実にお父さんの声だった。


 しかしその声のした裏路地に行くと、お父さんはいなかった。

 そのかわりに3匹の、知能の高い『ナトゥラーレ』という2足歩行の魔物(モンスター)がいたんだ。

 そう、この魔物は唯一の夜行型。

 私のような子供をさらって食べるんだ。


 そして彼らの得意魔法は『変声(ヴォイスチェンジ)』。

 その名の通り、一度聞いた音や声を真似する第2級魔法だ。


 どうやってお父さんの声を聞いたのか…。

 私はふと壁を見る。

 

 血だらけの男が壁につるされていた。

 見るも無残な姿に……。

 

 殺されていた。


 

 殺す前に変声(ヴォイスチェンジ)で声をコピーしたんだろう。

 本当に性格のお悪いこと。

 絶望する間もなく、奴らは私に近寄ってくる。



「さあフィーネ、こっちにおいで。お父さんが良いことしてあげるからさ……。」


「イヤ…イヤっ……誰か助けて!!」



 私はその魔物達になす術なく手足を縛られて口を塞がれた。

 こうやって無力化して食べるんだ。



(イヤ…死にたくない…まだ死にたくない!!)



 泣きながら必死にもがいたその時…。

 ある青年が後ろから大声でやってきた。



「おいナトゥラーレども!女の子に手を出すんじゃないぞ!!」


「なんだお前。俺らとやる気なんかおい?」


「とにかくその子を離すんだ。さもなくば私の愛剣で細切れにするぞ!!」


「ふん、やれるものならやってみやがれ!この人質がどうなっても良いならな!!」



 私は首を絞められながらナイフを突き立てられていた。

 その少年も威勢は良いものの、こうやって人質に取られていたら手出しできないよな…と思っていた瞬間…。

 私の身体はナトゥラーレではなく、青年の身体の中にすっぽりと埋まっていた。

 私の手の縄と口枷を取ってくれた。



「…大丈夫かい?もう安心だよ。」


「うん…あ、あぁ、ありがとう。」


「どういたしまして!!さあ、君は危ないから下がってて。ここからはこいつらを細切れにするからね。」


「うん、分かった!頑張ってね!!」



 私は人生で始めて素直な気持ちを伝えられた瞬間だった。

 私の心を解放してくれたのは親ではなく、助けてくれた青年だった。


 人に気持ちを伝えるのって、こんなに気持ちいいんだ……!!


◆◆◆


 5分ほどたった後、裏路地から青年が戻ってきた。

 彼は返り血で血まみれになったローブを着て、愛剣にもびっしりと血がついていた。

 怪我も少ないようで安心した。



「奴らはもういなくなったよ。君、怪我はないかい?」


「うん大丈夫。それよりお兄ちゃんは大丈夫なの?」


「あぁ…血まみれだけど、俺の血じゃないからね。言ったでしょ、細切れにするって。」


「まあ、そうだけど。」



 私はこの青年に連れられて家までの道を行く。

 ナトゥラーレは群れで動くから、周りにも何体かいたみたいだけど、ウベティの事をみて怖がって襲ってこなかった。


 それにしても、ナトゥラーレはかなり強い魔物って聞いたことある。

 それをものの5分ほどで片付けてくるなんて…。 

 

 一体この青年は何者なんだろう。

 そう疑問に思った私は、帰る途中に聞いてみる。



「ねぇ、お兄ちゃんは何者なの??」


「俺はS級冒険者、第1級剣士のウンベシュ・ティムートだ。君の名前も教えてほしいな。」


「うんべし…てぃむと?長くて難しいや。」

「ウベティでもいい??」


「…。まあ何でもいいよ。」


「あ、私はフィーネ。フィーネ・ポコって言うの。」


「フィーネか。いい名前だね。」




 ウベティは第1級剣士だった。

 それなら瞬殺できるのも納得できる。

 そんな中、ウベティは申し訳なさそうに話す。



「その…君のお父さんを助けられなくてごめん。」

「もっと早く来てれば……。」


「…私ね、お父さんと喧嘩しちゃってたの。ごめんなさいって…言おうとしてて……でも……お父さっ……死んじゃって……うぅ……。」


「あぁぁ…、ごめんよフィーネ…。俺のせいだ。」


「ぐすっ…私のせいだよ。お父さんと喧嘩せずに、私がちゃんとしてたら……。」


「……。フィーネ。こっちを見て。」


「……??」



 ウベティは私の両肩を掴んで、私の目線に合わせた。



「いい?フィーネのせいでなんて言わないで。これはナトゥラーレ達が悪いし、早くこなかった俺の問題でもあるんだ。」

「……だからさ、これからは俺が君を守ってみせるよ。命に変えても。」


「………。」


「正直、俺なんかに君の父親みたいに出来るとは思ってないよ。」

「でも、1人になる君に、寂しい思いはしてほしくないんだ。」

「…だから、もう安心していいんだよ。君の帰る場所はここにあるから…。」


「…うぅ、ウベティ!!」



 私は涙が止まらなくなって、ウベティの胸に飛び込み大声で泣いた。

 その後、いつまで泣いてたか分からないけど、ウベティにおんぶしてもらって家までたどり着いた。


◆◆◆


 その後、私は泣きつかれて寝てしまってたから、起きたときには家のお布団で、辺りは暗闇から光に満ちた世界が広がっていた。


 リビングに行くと、ウベティが朝ごはんを作ってくれていた。

 なんだか本当の家族みたいだ。



「あ、フィーネおはよう。よく眠れた?朝ごはんもう少しだから待っててね。」


「ウベティおはよう。机で待ってるから。」



 ウベティの作る朝ごはん。

 野菜を煮たスープと焼きたてのパン、それに薬草のスムージー。

 昨日の疲れと怪我を癒すために、最適でおいしい料理だ。



「ねぇウベティ。なんで昨日からずっとここに居てくれたの?」


「昨日言ったでしょ。命に変えても守るって。だから今日から俺達は家族みたいなもんだよ。」

「フィーネが嫌じゃなかったらだけど……。」


「…イヤ……嫌じゃないよ全然!嬉しい!本当に……うぅ……ありがとう!!」


「あらら…フィーネは泣き虫さんだね。よしよし。つらかったね。」



 また泣きじゃくる私を、ウベティは優しく頭を撫でてくれた。


 最愛の父を失った悲しみは大きく、私の心を削っていた。

 しかし、ウベティという私の心を救ってくれた青年への感謝、そしてだんだん過ごしていくうちに芽生えてくる『恋愛感情』が、次第にその悲しみを打ち消していったんだとか……。


◆◆◆


「と、そんな事があって、私達は結ばれたんだ。」


「へぇ…。そんな過去があったんですね。驚きました。」


「昔ウベティも、私と同じくらいの年で両親を亡くしたらしいんだ。」

「その教訓を生かしたウベティが、私の事を救ってくれたっていうね。なにか運命を感じる話でしょ?」


「はい!とっても素敵です。改めておめでとうございます!!」


「ふふ、ありがとうね、ユウ。」



 そう、これはあの日。

 ウベティかフィーネと結ばれた次の日の早朝、私がランニングから帰った後にフィーネと話した時のことである。

 幸せそうにフィーネの横で眠るウベティを見ながら、私達は少しだけ話を交わした。



「でもウベティは『フィーネは私に興味はない』って相談してきてましたけどね。」


「そうなの?まあ彼は超がつくほど鈍感だから。照れ隠しとかで避けてたんだけど、嫌われたって思っちゃったんだろうね。」


「あはは。ウベティならやりかねないですね…。」



 そんな中、幸せそうに眠る男が目を覚ました。

 周りをキョロキョロして、私がいることに驚いた。



「んっ……。ってユウ?なんでここに??」


「おはようございます、ウベティ。少しフィーネと話をしていましてね。」

「無事に結ばれて何よりです。」


「…まぁ、フィーネがどうしてもっていうから、俺も仕方なく…。」


(ベシッッッッ!)


「いったぁ…。何すんだよフィーネ。」


「私、ウベティのことずっと好きだったのに、ウベティが気づかないのが悪いんだよ?」

「……それとも、また泣いちゃおうかなっ…??」


「くぅ…分かった分かった。おれが悪いよ。ごめんよフィーネ。」


「分かってくれたらいいんだよ、ウベティ。」



 抱き合う2人を見て、私は邪魔しないようにこっそりと席を立った。


 境遇の似た2人のパートナーは、お互いに助け合いながら進んできた。

 

 あの出会いから18年。

 本物の家族になることが出来たんだってさ。








フィーネ・ポコ……ウベティの妻。母は早くに病死、父は魔物により殺害。ウベティに助けられてから、恋心を抱くようになった。回復(リカバリー)のみ使える。


ウンベシュ・ティームト(ウベティ)……フィーネの夫。彼の両親は25年前、魔物襲撃事件により殺害される。彼に宿るのは、他人に同じ思いをさせない正義感。フィーネに言われて努力して特級冒険者となった強者である。彼もまた、心のうちには彼女に抱く思いがあったんだとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。