↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元音楽教師、音楽ですべてを変える 〜第二の人生は音楽の世界?!〜  作者: 塩素
第2章 冒険編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/43

第20話 その先に

21:00から少し投稿遅れました申し訳ありません……



 その男の子は浮遊(フローティング)を完璧に操って、身長の足りなさを補っている。

 だから、私の首にまで剣が届いているのだ。



「僕の名前は『スピリトーソ』。アルディート様直々の配下だよ。まあ、君なら分かるよね。」


「俺を…殺しに来たのか??」


「うん…本当は今すぐにでも殺したいんだけどねっ。ちょっと君とお話したいんだよ。」


「話…?何を…。師匠の悪口か?それとも、アルディートの自慢か??」


「そんな単純なことじゃないさ。君にね、考えてほしいことがあるんだよ。」


「なら一度、剣を離してくれるか?喉元にあると、安心して口を開けないからな…。」


「…じゃあ、速くそのクラリネット離しなよ。」



 私が持っていたのは、カバンに入っていたもう一つの予備。

 これはアルスが改造した、いわば近距離戦闘用クラリネットだ。

 それはあるキーを押さえると、マウスピースの先から30センチほどの長さの剣になるという優れものだ。

 私はとっさに、洞窟にはいる前に持ち替えていたのだ。

 そしてそのクラリネットが、スピリトーソの肋まであと数センチの所まで到達していた。



「…分かった。」


「よし、じゃあ僕も剣をしまってあげるよ……。」

「そのかわり、君の手足は拘束させてもらうよ。」


「ちょっとまて、それは話が違うだろ!」


『手足拘束(レストレイント)!!』


「……くっ!!」



 私の手足は頑丈な縄で拘束された。

 こんな魔法もあるのか。

 でも今はそんな事を考えている暇はない。

 こいつを信じても大丈夫なのか??

 こうやって無力化させて、安全に殺そうとしているのではないか……。

 

 しかしスピリトーソは本当に、その場に剣の鞘ごと落としていた。



「…ほらね?拘束はさせてもらったけど、殺すつもりはないから安心しなよ。」

「…あ、もしかして殺されると思った?おもったよねぇぇぇ??」


「…そっ、そんな事ない!とにかく早く話を進めてくれ。」


「分かった分かった。じゃあ本題に入るけど……。

」



『君、アルスに騙されてるよ??』



「……は?何言ってんだお前。」


「事実だよ。アルスと言うか、君はアトラに騙されてるんだよ。」



 スピリトーソから出てきた、衝撃的な発言。

 アルス…師匠は嘘をついている。

 いや、真に受けるな。

 私を騙すための口実に決まってる。



「…信じられないのは分かるけどさ、今までのアルスの行動や言動を振り返ってみなよ。」

「何かおかしいとは思わなかったのかい??」


「そんなこと……あっ…。」



 その瞬間にこれまでのアルスとの事を思い出した。

 確かにそうだ。

 アルスは重要なとこでドジを踏んだり、大切なことを忘れていたり……。

 師匠もそうだ。

 音無魔法(ミュート)の存在すら教えてくれなかった。

 第2級魔法は結果的には使えたけど、1年半も放置されたわけだし……。

 いやいや、世界的な英雄として知られている師匠とその孫だぞ?

 そんなことするわけがないじゃないか。

 私は険しい顔でスピリトーソに反論する。



「そんなことない!だってアルスは…師匠は!!」


「アトラは悪いやつなんだよ。アルディート様こそが、この世界を救う神なんだ。」


「ありえない。俺は初めて会った時に殺されかけたぞ!!」


「それは、アトラの弟子だったからだろ?そりゃ、悪い奴の弟子は殺すに決まってる。」

「正義と悪は紙一重。どっちが正義かなんて、君みたいなミジンコに証明できるのかなぁ??」


「…確かに、俺みたいな奴にそんなこと証明できない。」

「だが、俺はアトラ・フラットの弟子だ。たとえそれが悪であったとしても、それを全うする!」



 そう言い切ると、スピリトーソは少し険しい顔になり、切り替えるように話を進める。



「…そうかい。じゃあ、一つ賭けをしないか??」


「賭けだと…??」


「そうさ。君がこれから1ヶ月間、僕の元で働け。そうしたら、僕たちは手を出さないであげるよ。」


「…何言ってんだ?そんなことするわけないだろ!!」


「……。これを見てもそう言えるかな!?」


「……っ!ウベティ!!」



 スピリトーソの魔法によって、石壁に幻影か映し出さた。

 そこに見えたのは、恐らくこの洞窟の最下層に落とされ、絶えない魔物の群れと必死に戦っているウベティの姿があった。



「君が賭けをしない限り、ここから出すことはできないし、彼が自分から出ることも不可能だ。」

「さぁ、どうするんだい?ユウくん。」



 ここで賭けにのっても、ウベティの解放は確実ではない。

 かといって、ここでスピリトーソと戦っても勝率は限りなく0に近いだろう。



「……分かった、賭けを飲もう。ウベティを解放してくれ。」


「ふふ、いい返事だよ。じゃあ、ウベティを連れ戻してあげるね!!」


◆◆◆


 それから少したった。

 ウベティはこの広場に戻ってきた。

 泥だらけになりつつ、傷はほとんど無いように見える。

 流石ウベティだ。



「ウベティ!無事で良かった!!」


「ユウこそ!……なんで手足縛られてるんだ?」


「あぁ…これね。さっきウベティを落とし穴から庇おうとしたら、別の罠にかかったようで…。」


「なるほどな、今解いてやる。」


 そういえば、スピリトーソはどこへいったのか。

 それは…ウベティを連れ戻す前のことである。



(そうそう。僕の存在は誰にも言わないこと。そして明日の早朝、この洞窟前に来ること。もちろん、アルスにも伝えたらダメだからね??)



 スピリトーソはウベティに姿を見せていない。

 私は恐らくスピリトーソの事を言ったら、即座に殺されるのだろうと音で感じた。

 だから、ウベティが落とし穴にかかった事にしておこう。



「それでユウ。最下層まで落ちたが、さっきまでの膨大な魔力の原因は掴めなかった。」

「そのスピリトーソとかいう奴もいなかった。」


「私もこの付近で音空間(サウンドメイン)を常時展開してましたけど、それっぽい雰囲気は無かったですね。」


「とりあえず、この依頼は異常なしということで大丈夫そうだな。ユウ、お疲れ様。」


「あ、あぁ。お疲れ様でした。」



 軽くハイタッチを交わして、洞窟から出た。

 洞窟入り口の結界もなくなっており、『この洞窟にスピリトーソがいる』という疑惑も完全に晴らされた。

 奴(スピリトーソ)は子供のようだけど、頭はかなり冴えるようだ。

 多分、私の数十倍賢いだろう。


◆◆◆


 私達は都市に戻った。

 入り口の門には、見覚えのある奴がいた。


「ユウ!ウベティ!良かった…。無事で何よりだよ!!」


「…アルス。心配かけましたね。ただいま帰りました。」



 アルスは私達の手を握りながら、目には涙を浮かべていた。

 私はさっきのスピリトーソの話のせいで、素直に喜べないのがたいそう悔やまれる。



「それで、例のスピリトーソは討伐できたの?」


「それが、あの洞窟には居なかったんだ。もしいたら、こんなかすり傷で帰れるわけがないだろう。」


「いなかった…。そうか。まああいつは神速って言われるくらいだしね。仕方ないよ。」

「それよりも、今日は無事に帰ってこれたことを祝おう!さあ、酒場に席を取ってあるよ!!」


「おう、今行くよ!ユウも来いよ!!」


「…分かりました。すぐ追いかけます!」



 そう言って私は、酒場とは真逆の受付センターへと急いだ。

 飛行(フライムーブ)を使って……。


◆◆◆


 受付センターのいつもの女性に、私は慌てて報告しに行く。



「…あの!特級依頼を受けた者です!いま終わりました!!」


「うわっ!!あ、ユウさんですね。お疲れ様でした。依頼は全て達成されましたか?」


「それが…このスピリトーソと言う奴が洞窟にいなくて、討伐できずに帰ってきたんです。」

「だから、厳密に言うと達成できてないんです。」


「あーそうでしたか…。それなら、報酬はお渡しできない形となりますが…。」



 私はここで嘘の演技に入る。

 演技は得意な方だ。



「…うぅ…ぐすっ……。私だって必死にやったのに……。報酬もらえないなんて……。」


「あぁちょっとユウさん…。」


「どうにかして依頼を達成してきますから、どうかその時は報酬を貰えないでしょうか?」


「…分かりました。そこまで言うなら…。ただし、本来の報酬とは異なる物になりますが、よろしいですか??」


「はい!よろしくお願いします!!」


「はい。ではこちらの依頼は、『無期限依頼』とさせていただきます。メンバーはユウ、ウベティの登録のままでよろしいですか?」


「いいえ、私のみにしてください。」


「かしこまりました。ご健闘お祈りしております!!」


「ありがとうございました。頑張ってきます!!」



 この依頼は、スピリトーソと行動するためのアルス達への口実だ。

 普通に1ヶ月もいなかったら怪しまれるに違いない。

 依頼と言うことなら、納得してくれるだろう。


◆◆◆


 その後酒場に行き、旅立つ前最後の時間を楽しんだ。

 

 これから何があるか全く分からない。

 スピリトーソに洗脳されたり、殺されるかもしれない。

 はたまた、意思が変わる可能性も……ないとは言い切れない。

 

 私はそれでも前に進む。

 

 師匠の意思のため、この世界のため、そして、音でさらにその先に行くために……。






2章完  次回第3章 スピリトーソ編〜疑念のユウ〜


次回第3章第21話 ひとり旅+α  未定 21:00

※活動報告にてお知らせします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。