第19話 協力
ウベティの依頼?を達成した私達は、今日も今日とて依頼を受けに来た。
今日こそは第3級依頼を見つけよう。
でもやっぱり第3級レベルはなかなか見つからない。
そんなに人気なのだろうか……。
「……やっぱりないですね。仕方なくS級でも受けますか?」
「…もうちょっと探してみない??まだ見てないところがあるかもだし。」
「わかりました。探しましょう。」
それから30分ほど粘っていたが、見つからなかった。
その時、入口が何やら騒がしくなった。
私達も気になってふりかえった。
「…ねえあの人、特級冒険者の……、」
「絶対そうだよ!雰囲気が違うもん!!」
「すげぇ本物だよ……。」
視線の集まる先から、明らかに強者感漂う見たことある男が入ってきた。
似合わないローブは、ボロボロになった生地によって、歴戦の猛者であることを証明しているようだった。
その男は、赤髪の若そうな人だ。
でも、彼の顔には幸せそうな笑みがこぼれていた。
その知っている顔の男は、私達のいる方へ向かってきた。
「やあ、ユウとアルス。昨日はありがとう。」
「なんだウベティか。全然大丈夫だよ。そっちはうまくいったのかな?」
「あぁ、親父にもあの後フィーネを紹介して、なんとか追放は免れたよ。」
「それは良かったです!それで、今日はなぜここに??」
「それがな…何やら特級レベルの依頼が入ったみたいなんだ。さっき本部から緊急連絡が来たんだ。」
「どうやら、私が一番近くにいるから駆けつけてほしいってことみたいでさ。」
「なるほどです。頑張ってくださいね!」
「おう!ユウたちも頑張れよ!!」
そう言い、ウベティはカウンターへ行った。
昨日の事もあって、ウベティはかなり穏やかになっていた。
私もウベティの追放を阻止できて、少し安心した。
と思った矢先、カウンターからウベティの声が響く。
「…どうしてだ!私一人じゃあダメなのか!!」
「はい…。本部からこの緊急依頼は2人以上で受けさせろと命令されていまして……。」
「そんなの知らん!私は一人でも行くぞ!!」
「あぁちょっと、困ります!依頼返してください!!」
聞こえてきたのは、あの女性とウベティの言い合いだった。
小耳に聞こえた情報によると、あの特級レベルの依頼は、2人以上のパーティーでないと受けられないらしい。
ウベティは特級だから、助けられる冒険者はそう簡単にはいないだろう。
そんな中、アルスが私の肩をつついてきた。
「……ユウ行きなよ。」
「……え?アルス本気ですか??私ただの第3級なのに……。」
「だって、剣士の相方として魔法使いが良いと思うし、この場所にはユウより強そうな魔法使いはいないし…。」
「それにユウ。名目上君は第3級魔法使いだけど、魔力量や、死嵐を使えることを考えたら、第1級にも比例する強さだよ?」
「うーん。自分ではそうは思わないんですけど…。大丈夫でしょうか。」
「そうさ!位なんて気にしないで行ってあげなよ。名声も上がるチャンスだよ!!」
「…そこまで言うならわかりました。行ってみます!」
「うん!頑張ってきてね!!」
アルスにちゃちゃっと言われ、ウベティの元へ行った。
特級レベルの依頼…。
私に受けれるのだろうか…。
「あの、ウベティ。私で良ければ行きますので、一旦手を離してあげてください。」
「……ユウ。お前大丈夫か?特級だぞ??」
「……、一応私は第3級冒険者兼魔法使いですが、特級魔法の死嵐を使えますし、魔力制御法も心得ています。」
「……確かにそれは心強いな。」
「……よし分かった。ユウの熱意に賛同しよう。よろしく頼む、ユウ。」
「こちらこそです。足を引っ張らないようにがんばります!」
「では、お二人で登録いたしました。こちらが依頼です。ご健闘をお祈りしております!」
受付センターの冒険者や、受付の女性、そしてアルスに行ってくると告げて外に出た。
今日からウベティとの協力が始まる。
◆◆◆
一度宿に戻り、旅の準備を始めた。
クラリネットの調子を確認し、カバンの中には、万が一のための予備のクラリネットも入っている。
(特級……どのくらいやばい依頼が降ってくるんだろうか……。)
震える手を今一度強く握りしめて、私はウベティが待つ宿の入口に急いだ。
ウベティもさっき一度家に戻り、フィーネに行ってきますしてきたらしい。
早い。
ウベティはもう入口付近で腕を組んで待ち遠しそうにしていた。
やはり特級冒険者は行動の効率がケタ違いだ。
「…ユウ、やっときたか。これが今回の依頼だ。」
「えぇ、待たせてごめんなさいウベティ。依頼ですね、どれどれ……。」
「……っ!!!」
私はその文字をみた瞬間に、全身が震えだした。
ーー緊急依頼 アルディート配下討伐ーー
・特級向け依頼 アルディート5凶配下討伐
『冒険者連盟本部よりの緊急依頼』
・場所…ソプラノ第2都市郊外、魔の洞窟最深部
・報酬…冒険者連盟会長就任権
「あぁ…アルディート……うっ!!」
「おいおい、大丈夫かよ…。」
「……。すみませんウベティ。過去のことを思い出してしまって。」
間違いなく、アルディート5凶配下の名前が刻まれていた。
そいつの名は…。
『神速のスピリトーソ』
音速を超える速さの足を持ち、敵を翻弄して一撃で倒すという。
師匠から聞かされていた。
奴には近づくなと。
私は震えを殺して、ウベティに話しかける。
「とにかく、先を急ぎましょう。緊急ということですので、一刻を争うものでしょう。」
「よし分かった!ユウ、しっかり援護を頼むぞ!」
「はい!もちろんです!!」
そうして、私達はスピリトーソの住処と思われる魔の洞窟へと向かった。
◆◆◆
魔の洞窟は、ソプラノ第2都市から南へ15分。
以外と近くにある。
スピリトーソがソプラノ第2都市へ来るのも時間の問題なのだ。
だから緊急…特級レベルの依頼なのだ。
ウベティはかなり走るのが速い。
私よりも大きい身体なのに。
さぞ鍛えられているのだろう。
私はそれに追いつくのが精一杯だった。
「ユウっ危ない!……っと。良かった…。」
「ありがとうございますウベティ。危うく入る所でしたよ…。」
私は無心で走っていたから、洞窟の入口に気づかずに入りそうになった。
ウベティが必死に止めてくれた。
「この魔の洞窟は、一度はいると、目的を達成するまで出られないと言われているからね。ホントに危なかったよ。」
「……ここが、魔の洞窟!!」
山のふもとにあり、入口は嫌な魔力で遮られているようだった。
その中からはアルディートに似たような、とてつもない魔力を感じた。
私は殺していた震えが溢れてきた。
ウベティは優しく背中をさすってくれる。
「ユウ落ち着きな。たとえ命に変えてもお前だけは助ける。だから安心しろ。」
「ウベティ……。でも、そんな事にならないように私も最善を尽くします。」
「……よし!覚悟を決めました!いつでもいけます!!」
「いい気合だ!よしユウ、行くぞ!!」
そうして、私達はその洞窟に潜り込む。
私の第3級魔法の『懐中電灯』を灯しながら、どんどん奥へと潜ってゆく。
道中では、たくさん魔物が出てきたが、すべてウベティが倒してくれた。
少し妙だ。
普通洞窟というのは、入り組んでいているはずだ。
それなのに、一向に道が分かれる気配もなく、ゆっくりと強大な魔力へと近づいているのを音で感じた。
正直罠にしか感じなかったが、私達は進むしかなかった。
◆◆◆
少し広いところに出て、一度休息をとることにした。
休息と言っても、武器の確認や、水分補給程度で、ウベティと会話を交わすことはなかった。
私も水を飲んで、残りを頭から被った。
そうして、ウベティの方へ向かう。
「ウベティ?準備できましたけど……。」
「っ……!!」
「ふっ…騙されたね。アトラの弟子のユウくん♪」
私の首には、そいつが抜いた剣が、数ミリの所までかけられていた。
ウベティの姿はない。
ただその広場には私と、『スピリトーソ』と見られる男の子の姿しか無かった。
次回第20話 その先に 7/28 21:00




