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元音楽教師、音楽ですべてを変える 〜第二の人生は音楽の世界?!〜  作者: 塩素
第2章 冒険編

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第17話 便利な飛行、ただし危険?



 私達は今日も酒場で一息ついていた。



「ユウおつかれ!いやー大変だったねぇ!!」


「お疲れ様です。本当に…最初の依頼がこんなに大変だとは思いませんでしたよ。」

「……それで、このスコアって飛行(フライムーブ)っていう魔法のやつですよね?」


「そのはすだよ…どうしたの??」


「いや…今更こんな第2級魔法なんて、なんの役に立つんですか?」


「…ユウ、それ本気で思ってるの?その飛行(フライムーブ)って相当便利なものだよ。」


「文字通り、空を飛ぶだけじゃ……。」


「だけじゃないよ!これがあれば、今の数十倍は移動が楽になるよ!!」


「……。」



 いきなり立ち上がって大きな声を上げたアルスは、他の人からの視線を浴びて、気まずそうにゆっくり座った。

 アルスは軽く咳払いをして、また話し始める。



「…まあ、とにかく今度そのスコアを吹いて、飛行(フライムーブ)を使えるようにしよう。」


「分かりました。じゃあ、明日この近くでやりますか?」


「うーん……ここらへんよりは、都市から離れた所のほうがいいかもね……。できれば森の中とか?」


「何か理由があるんですか??」


「やってみればすぐに分かるさ……。」

      


アルスはそう言うと、少しニヤついていた。  

   

 酒場を出て、部屋に戻る。

 私達は明日、ここから15分ほどの距離にある森の中ですることになった。

 なぜ森の中かは分からないけど、何か特別な理由があるのだろう……。



「じゃあユウ。また明日!」


「はい。おやすみなさい、アルス。」



 私はベッドの上で、少しの間スコアを読んでいた。

 いつ寝たかは覚えていない。


◆◆◆


 翌朝、いつものような眩しい太陽の光が……届いてこなかった。

 気だるい気分で目覚めた。

 

 そう。

 この世界にきて初めて、雨が降っていたのだ。

 そのせいか、少し頭が痛い。

 天候のせいで出来ないとかありそうだな…。

そう思いつつ、廊下にでると、ちょうどアルスと鉢合わせた。



「……あ、おはよう。今日はだめかもしれないね…。」


「やっぱり雨だと危険ですか?」


「…そうだね。雨もそうだけど、雷が危ないんだよね……。」


「確かに、森の中だし、自分も高い位置に行くから、雷に当たりやすくなるんですね?」


「そのとおりさユウ。どうにか出来ないかな…。」



 そう話しながら階段を降りていると、ある冒険者らしき人が声を掛けてきた。



「あの……、飛行(フライムーブ)の練習がしたいと聞こえたのですが…。」


「…あ、はいその通りです。でもこの雨と雷で出来ないんですよね……。」


「それなら、『ソプラノ国立練習場』に行ってみてはどうでしょうか?」


「ソプラノ国立練習場??」


「……あぁ!その手があったね。ありがとう、冒険者さん!!」


「いえいえ〜。お気をつけて!!」



 私はアルスに連れられて、その練習場へと向かった。

 アルスはそこを知ってるのなら、最初からそうすれば良かったのに…。

 まあアルスはすぐ忘れるから仕方ないな……。

 そう思っているとすぐに、それらしき建物にたどり着いた。

 ドーム型の建物で、かなり大きそうだ。



「ここが、ソプラノ国立練習場だよ!」

「実はここ、お祖父様も建設に携わっていたんだよ。」


「…え?そんな場所を忘れてたって事ですか!?」


「いや、忘れてた訳じゃないよ。ただ、外のほうが、飛行(フライムーブ)の実感を掴みやすいかなぁと思って…。」


「……アルス、お気持ちはありがたいですけど、こういう大事な事は、早めに言ってください。」

「私だって、自主練とかしたいんですから……。」


「…分かった。ごめんねユウ。今度からそうするよ。」

「気を取り直して、早速中で練習しよう!」



アルスの切り替えの速さには驚かされる。

 私はやれやれと思いながら、アルスの背中について行った…。

  

 中に入ると、様々な施設があった。

 対面練習、打ち込み練習、防御練習……。

 その中で、一番奥にあった総合練習室へと足を運んだ。

 体育館みたいな内装で、広さはかなり広い。

 天井もこれでもかというくらい高かった。

 早朝と言うこともあって、人もまばらだった。



「さて、早速飛行(フライムーブ)の練習をしたいんだけど、スコアは持ってきたかい?」


「ええもちろん。そういえば、私スコアから魔法を覚えるなんてした事ないんですけど……。」


「まあそうだろうね。お祖父様も自分で教えるほうが好きな人だったし、今は音無魔法(ミュート)があるから、スコアも数を減らして来てるんだ。」

「…でもスコアから覚えると、音魔法(サウンド)でも、かなり楽に発動させられるようになるんだ!それに、威力も音無魔法(ミュート)より上がるんだよ!!」


「…なるほど、分かりました。じゃあ早速吹きますね。」



 そう言い、私は譜面台を取り出してスコアを置いた。

 そして、そのスコアを吹いていく……。

 そういえば、魔法以外でクラリネットを吹くのはオクタ町にいた時以来かもしれないな……。

 いざ久しぶりに吹くと、自分の音ながらも、クラリネットの美しい音色に魅了される。

 

 ここにくるまで、色々なことがあったな……。



『♪♪♪』



 演奏を終え、アルスに問いかける。



「ふぅ……終わりましたよ。ここからいつも通り魔力を込めればいいのですか?」


「そうだね。今スコアを吹いたことによって、飛行(フライムーブ)がしやすくなるようにチューニングされたってわけさ。」

「普段通りにやれば、その実感がわいてくると思うよ。」


「分かりました。では、やってみます!」



いつも通りに魔力を音に込めて…。



「飛行(フライムーブ)!!」


「……おぉぉ!!」


「凄い…本当に空跳んでる!夢みたいだ……。」



 私の身体は空高く打ち上げられ、練習場の一面を見渡せるようになっていた。

 でも、これどうやって制御するんだろう…。

 

 そう思っていると、アルスが叫ぶ。



「ユウ!そのままだと、天井にぶつかるよ!!魔力を抑えて制御するんだ!!」


「…っ…分かりました!魔力制御法ですね!!」

「……あれ、なかなか言うこと聞かないな…。」



『……ゴツン!!』

「……いったぁぁぁい!!」



 その瞬間、天井に勢いよく頭をぶつけた。

 まずい、このままだと床に真っ逆さまだ。

 かなりの高さからの落下で、運が悪かったら死ぬ勢いだ。

 その時、アルスが落下点に入る。



「もう、ユウ。しょうがないなぁ……。」

「『空座布団(エアクッション)』!!」


「うっ……。」



 アルスの魔法によって、私の落下の衝撃は抑えられた。

 

 助かった。



「…アルス、ありがとうございます。危うく死ぬところでしたよ……。」


「ほんとに気をつけてよね…。それでユウ、魔力制御法が上手く出来てなかったようだけど……。」


「そうですね、普段の魔法は制御出来ているので問題ないと思うんですけど…何か原因があるんでしょうか?」


「そうだな……、前にお祖父様から聞いた話なんだけど、重力に逆らう感じで魔力制御すると良いみたいなこと言ってたけど……。」


「重力に逆らう……なかなか難しい例えですね。」


「そうなんだよ。だから、飛行(フライムーブ)は最初が難しくて、危ないんだよ。多分、習得難易度は第1級にも比例するんじゃないかな。」


「だから森の中でやろうって言ってたんですね?」


「そうさ。だって町中で落ちて、空座布団(エアクッション)があるとはいえ、もし家とかを壊したら牢屋いきだからね。それはごめんだよ。」


「そうですね……まあ、何度かやってみます!」



 そう言ったものの、何回…何十回と試してみてもダメだった。

 少し良いところまで行くものの、どこかで魔力制御がダメになる。

 まるで、魔力が暴走するかのようだ。



「はぁ…はぁ……だめですね…。全然習得出来る気がしないです。」


「…なかなかここまで出来ない人は初めてかも。ユウの魔力なら、とっくに出来ててもおかしくないんだけどな。」


「何か根本で間違えてるんでしょうか??」

「例えば、邪気が混じっているとか…。」


「邪気か……。確かにユウからは少し邪気を感じるけど、他の人と大差ないんだよ。だからそれは原因じゃないと思うんだ。」


「……。」



 悩んでいると、さっき宿でこの場所を教えてくれた冒険者がやってきた。



「あ、いたいた!さっきのお2人さん!!」


「さっき教えてくれた冒険者さん!こんにちは!!」  


「…なんかボロボロだけど、もしかして飛行(フライムーブ)が全然できない感じ?」


「そうなんです。何回やってみても、最後に制御を失って落ちてしまうんです。何か方法はないでしょうか??」


「うーん……あっ。君さ、第3級魔法の『浮遊(フローティング)』は使えるのかい?」


「いえ、使った事ないです。」


「恐らく原因はそれだよ。最初に浮遊(フローティング)で感覚を掴むんだ。それから、飛行(フライムーブ)をやると、楽に出来ると思うよ。」


「……分かりました。教えていただきありがとうございます!」


「うん!頑張ってくださいね!!」



 そう言うと、その冒険者は防御練習室へ入っていった。

 さっき言われた第3級魔法の浮遊(フローティング)。

 昔、師匠から少し教わったことがある。

 

 使った事はないけれど、恐らく出来るはずだ。



「よし、じゃあアルス。浮遊(フローティング)をやってみます。」


「うん!見せてよ。」


「ふぅぅ……浮遊(フローティング)!!」



 放った瞬間、床から数十センチだけ浮いた。

 これが浮遊(フローティング)か。

 さっきと違って、制御出来ているようだ。



「良いね!よく制御出来てるよ。」


「はい!確かにこれで少し感覚が掴めたかもしれません。」



 一旦、浮遊(フローティング)を解除した。



「重力に逆らう……。それは恐らく、自分を無重力にするような魔力制御をする必要があったのだと思います。」

「もう一度、飛行(フライムーブ)をやってみます!」


「ユウなら出来るよ!頑張って!!」


「はいっ!!」



 そして、改めて音に魔力を込める。



「飛行(フライムーブ)!!」


(よし、ここまでは良い。ただ、ここからだ。)


「自分を無重力にするあの感覚……。」

「……くぅぅ!おりゃぁぁぁ!!」


「…っ!ユウ!!成功してるよ!!!」



 とっさに目をつぶったので、もう一度開いてみた。

 すると、さっきまでできなかった魔力制御…上下左右を自由自在に操れるこの感覚。

 

 完璧に出来たのだ。

 

 練習場の中を少し飛んでみた。

 それにしても、この魔法は確かに便利だ。

 少量の魔力で、走るよりももっと速く、疲れることなく移動することができる。

 戦闘にも使えそうだ。


 ゆっくり解除して、アルスの元へ戻った。



「アルス、やりました!僕にも出来ましたぁ!!」


「うん、やったね!流石我がお祖父様の弟子だ!」


「そういえば、飛行(フライムーブ)を使っている人を見たことがないのですが…。」

「こんなに便利なら使えばいいのに……。」


「一応、飛行(フライムーブ)含めた飛翔系魔法は、依頼を受けた時と緊急時以外での使用は認められていないんだよ。」

「万が一、ぶつかったりしたら危ないからね。」  


「確かにそうですね。私も気をつけます。」



そうして、飛行(フライムーブ)を覚えた私は、次なる依頼へと歩んでいくのであった……。






7/25 0〜8話のリメイクを終えて、復帰しました

是非最初から改めて見ていただけるとありがたいです



次回第18話 特級冒険者 7/26 21:00

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