第16話 第3級レベルの依頼(クエスト)
朝日がカーテンの隙間から、私の顔を照らしていた。
気持ちのよい快晴の元、私とアルスは最初の依頼を受けるべく、『ソプラノ総合受付センター』に向かった。
行く道の途中では、朝早くにも関わらず多くの人が行き交っていた。
これから冒険に出る人もちらほらいるようだ。
そうして宿から5分ほど歩くと、大きな木造の小屋のような場所に着いた。
「ここだよ、ユウ。ここで依頼を受けられるんだ。」
この場所が、受付センターらしい。
確かに、入口から出入りする人は、冒険者っぽい服装をしている。
中に入ると、正面にカウンターのようなものがあった。
左には昨日アルスが言っていた順位表、右には壁一面びっしりと紙が貼ってある。
その紙には依頼の内容やランク、報酬が書かれており、冒険者が一つ、また一つと剥がしてカウンターに持っていっているようだ。
「…とりあえず、この中から第3級向けの依頼を探そう。」
アルスはそう言うと、他の冒険者に紛れながら紙を一つずつ見る。
私もそれに続いて探した。
「…C、…S、…第2級。あれ…なかなか第3級がないぞ?」
私は必死に探すが、なかなか見当たらない。
第3級は世の中的に人気の依頼なのだろうか。
その時、肩をトントンとされ振り返ると、アルスが嬉しそうに紙を持っていた。
「ユウ!あったよ!しかも、この都市内での依頼だからかなり楽だよ!!」
その紙を見てみる…。
◆◆◆
・第3級向け依頼 ラッキーを探して
・場所…ソプラノ第2都市圏内、番地150/325
・報酬…第2級魔法、『飛行』のスコア、ソプラノ紙幣3枚
◆◆◆
と書かれていた。
何を探すのか分からないが、とりあえずカウンターに持っていこう。
カウンターには、私より少し年上っぽい女性がいた。
「これ、お願いします。」
「では、冒険者ライセンスをご提示願えますか?」
そう言われ、私とアルスは自分達の証を見せた。
女性は一通り目を通すと、すぐに返してくれた。
「ありがとうございました。では、こちらの第3級レベルの依頼を発行します。少々お待ちください。」
そう言うと、カウンターの奥にある事務所的な所へ入っていった。
私はその間にアルスに聞く。
「依頼発行って、何をしてるんでしょうか?」
「依頼を受ける人の登録と、依頼の詳細が書かれた『依頼』という紙を持ってきてくれるんだよ。」
「それがないと、詳細も分からないし、報酬も貰えなくなるからね…。」
登録してもらって、依頼という紙を渡されてからが本番と言うわけだ。
そうしていると、女性が戻ってきた。
「はい、登録完了しました。これが依頼です。ご健闘をお祈りしております!」
頭を下げた女性に、私たちも「ありがとうございます。」と頭を軽く下げ、受付センターから出た。
そして、アルスと渡された依頼を読む。
「ええと……私の家から逃げ出したペットのラッキーを探してください……?」
私はその瞬間呆然とした。
第3級の依頼って、こんな単純なのか?
もっと魔物とバチバチにやり合うのかと思ってた。
アルスに問いかける。
「ねぇアルス。第3級ってこんなに単純そうものなんですか?」
「うーん…でも第3級だから単純ではないかもしれないよ?一応、気を引き締めて行こう。」
アルスもその依頼の内容に驚いていた。
どうやらこの依頼は、第3級の中でも、特殊なもののようだ。
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私達はその後、依頼主の番地へ向かった。
そこには小さな家があり、敷地の中には美しい庭が広がっていた。
玄関前に行くと、待ち構えていたかのように依頼主のおばちゃんが出てきた。
「おや、あんたたちが依頼を受けてくれた冒険者さんだね。ありがとうねぇ。」
おばちゃんは嬉しそうに私達と握手した。
私はそのおばちゃんに尋ねる。
「それで、逃げ出したラッキーとは、どんな動物なのでしょうか?」
「……『ピアニッシモンキー』だよ。ほんとにすまないねぇ。」
私はよく分からないが、隣のアルスが「あちゃー」と溜息をつきながら頭を抱えた。
「……分かりましたおばちゃん。今日中に見つけてきますよ。」
「ほんとにありがとう。よろしくお願いします。」
そして、家を出た。
私はアルスに聞いてみる。
「ピアニッシモンキーってどんな奴ですか?モンキーだから、猿みたいな……。」
それを聞いて、アルスは溜息を大きく吐く。
「はぁ…ユウ。そいつはね、目に見えないくらい小さい猿なんだよ。魔力探知が出来なきゃ探せないんだ。」
「小さいからどこにでも入れるし、どこにでも隠れられるからね……。」
アルスが嫌そうにした理由がようやく理解できた。
ラッキーとはミジンコサイズのペットの猿で、魔力探知して姿を見つけても、すばしっこく逃げ回るようだ。
どうりで第3級の依頼なわけだ。
というか、単純に魔物を討伐する依頼より面倒くさくないかこれ……。
「…とりあえず魔力探知をしようか。」
そう言うと、アルスは目を目をつぶり、心を落ち着かせて精神を研ぎ澄ませる…。
魔力探知とは、生き物が動く瞬間を数コンマ単位で捉えることが出来る、熟練者がなせる技だ。
私もいつか、それが出来るように特訓している。
「……見つけたよ。」
「場所は、ここから西へ500m先、西商店街の裏路地だよ。」
そう言うと、そっちの方向を指差す。
いくら天然のアルスでも、魔力探知で探った方向は間違えないだろうと思い、ついて行く…。
商店街へ着くと、開店に追われている店の人がたくさんいた。
事情を説明し、シャッターを開けるのを待ってもらった。
最後の店の人に声をかける。
「冒険者さんや…こっちも商売があるから早めに頼むよ!!」
そう言いつつ、シャッターを開けるのを止めてくれた。
たくさんの人に迷惑をかけているから、早めに済ませないといけないな。
その時、アルスが急に走り出した。
「ユウ、いたよ!商店街の入り口付近!」
「俺は先回りするから、正面抑えてて!!」
声が遠ざかりつつ、アルスは反対側から飛び出して、店の裏を駆け抜けているのを音で感じた。
私も正面の入口に向かって、ゆっくりと距離を詰める。
その瞬間……。
『……ドォン!!』
「いってぇ……。」
間違いなくアルスの悲鳴と大きな音が同時に、商店街に響いた。
私は何があったのか、音で察した。
(アルス。ドジ踏んでコケやがった!絶対今じゃないだろ!!)
今すぐにアルスを殴りに行きたいが……おっと、今はそんなことを考えている場合じゃない。
今の音に驚いて、確実にラッキーはどっちかに逃げたはずだ。
しかし、魔力探知が使えない私はどっちに逃げたか全く分からない。
(くっそ…こんな時に役に立てないなんて……。)
そう思った時、さっきのシャッターを開けるのを止めた人が私に話しかける。
「おい!まさか逃げた方向がわかんねぇんじゃねぇだろうな……。匂いでも『音』でもいいから、なんとか見つけてくれ!!」
そう言われ、私は背中を刺されたように思い出した。
音だ。
師匠から学んだ、もう一つの得意魔法……。
アルスのように目を閉じて、意識を研ぎ澄ませた……。
『音空間!!』
心の中で叫んだ瞬間、周囲の全ての音を聞けるようになった。
人の呼吸音、虫の鳴き声……そして、猿の足音!
「そこだぁぁッッッ!!」
「ウキッッッ?!!!」
私は潰さないように、その空間を手で覆った。
手のなかでは、小さな物が暴れる感覚と猿のような声が響く。
捕まえた。
「とっ、とったどぉぉぉ!!」
取ったのは魚じゃなくて猿だけどまあいいか。
商店街の至る所から歓声が上がった。
アルスは泥まみれにして帰ってきた。
「やったねユウ!でもどうやって……。」
「師匠の教えですよ。師匠の技に助けられたんだ。」
そう言うと、アルスは納得したように、私の手からラッキーを受け取った。
アルスの顔からは、どこか懐かしむような、悲しむような音が聞こえた……。
◆◆◆
その後、依頼主のおばちゃんにラッキーを返すと、1日で終わらせたことに驚きつつ、「ありがとうねぇ」と感謝された。
そして受付センターに依頼達成の報告をしに行った。
「お疲れ様でした。これが報酬の品です!」
そう言われ、報酬である飛行のスコアと、ソプラノ紙幣3枚がちゃんと貰えた。
報酬を受け取った私達は、日の暮れた帰路を行き、宿へと戻った。
部屋に戻った私はベッドに横になる。
その中で、今日の事を振り返る。
(音だ。音が世界を救うカギとなる。この調子で音魔法を極めていこう!)
1日1日が過ぎるにつれて、着実に師匠やアルスに追いつくための道を、彼らとは違うやり方で一歩ずつ進んでいるのを夢の中で感じていた。
次回第17話 便利な飛行、ただし危険?
※一旦今回の話で、3〜4日を目安にお休みします。
その間に、4〜8話のリメイクに徹底します。
投稿出来るようになる日の21:00から、最新話公開します。よろしくお願いします。




