第15話 冒険者の証(ライセンス)
あれから1週間。
私達は次の町へと歩みを進めていた。
出てくる魔物を倒し、食べ物を確保したり、たまにドジを踏むアルスを支えたり……。
何も変わらない日々を過ごしていた。
そう。
もう3ヶ月もだぞ。
「アルス。ほんとにこっちで合ってるんですか?」
「うん……もうすぐ着くはずなんだけど……あ。」
その瞬間、私は悟った。
アルス、方向間違えたんじゃないか?
案の定、私達は真反対の方向めがけて歩いていたようだ…。
◆◆◆
さらに半年後、やっと次の町についた。
次からは、私が地図担当になろう。
アルスは少し申し訳なさそうな顔をしながら、自慢げに話し始める。
「ユウ。ここが、次の町『ソプラノ第2都市』だよ。ここは俺の生まれ故郷なんだ!」
そう言われて町を見ると、その広大さに驚いた。
恐らく、現世の東京くらいある敷地に、たくさんの商店街や家々が山のように連なっていた。
そして、たくさんの人や動物で賑わっている。
私はふと、アルスの言葉を思い出す。
(…ん?ちょっとまてよ。アルスの生まれ故郷って言ってたよな……。)
(アルスもしかして…生まれ故郷の場所忘れてたの?!物忘れって次元じゃねえぞ!!)
それから、私達は宿を借りた。
そこに併設されている酒場で、今日は飲むことにした。
普通の倍以上の距離を歩いて、疲れた身体を癒すのだ。
酒に関して聞いた話だと、この世界では酒が飲める年齢に制限はないらしく、誰でも飲めるらしい。
恐らく、500年以上も生きる者もいるこの世界では、年齢など気にしないのだろう。
そうして、アルスと賑わう酒場でようやく席を見つけて座ると、彼は慣れた口調で酒を頼んだ。
「お酒好きなんですか?聞いたことのない銘柄をささっと注文してましたけど…。」
「ははっ。お祖父様が大好きでね。不思議と世界の銘柄をほとんど覚えたんだよ。」
そんな会話をしている中、おつまみと酒が運ばれてきた。
私は何種類かある中から、ふと気になった物を飲んでみた。
りんごのような…ぶどうのような……、不思議な味がした。
この世界のワインみたいなものだろうか。
特別おいしいわけではないが、不味くはない。
・
・
その後、私達は2時間以上飲んでおり既に日をまたいでいた。
酒場には、酔っ払って寝たアルスや、その他にもアルスのように寝ている人やまだ飲んでいる人がまばらにいた。
その時、ある若い男が酒瓶片手にやってきた。
「おい!そこのひ弱そうなお前!冒険者ランクを見せろ!!」
その男は机に乱入し、もう片方の手を私に突きだした。
仕方ないので、私の冒険者の証を渡した。
「えっ…さっ…第3級?!!しっ…失礼しました!!」
その男は私の証をみた途端に酒瓶を落とし、証を机に投げて酒場から飛び出した。
その騒ぎを聞いたアルスはゆっくりと目を覚ました。
「ふぁ……ユウ、寝ちゃってた。ごめんね。」
アルスはもう酔いが覚めたのか、呂律はまわっていた。
ふらふらもしていない。
私は一応、アルスを片手で支えながらさっきの事を話す。
「あはは!そいつ…多分かなりランク低いんだろうね!」
「私達をかってに低いって決めつけて、煽りたかったんだろうね……ざまぁみろ!!」
アルスは愉快そうに笑った。
私はそんな時、ふと疑問が浮かぶ。
「冒険者のランクって何階級あるんですか?」
私は、このライセンスを渡され、第3級冒険者としか書かれておらず、何階級あるのか知らない。
アルスはそれを聞いて、酒場にある本棚から、冒険者の証説明書という本を持ってきた。
「えぇっと……あったあった。ここにある通り、冒険者ランクは下から、『C…B…A…S。その上に第3級〜特級』と続くよ。」
魔法と違って、アルファベットまで入ってややこしくなった。
多くのゲームだとSが一番強いのに……。
まあいい。
数字が入ったら凄いって覚えよう。
てか、あのビブラー集落で出会った「サク」という人は、相当凄い冒険者だったんだな……。
「でも、私達はなぜ第3級からスタート出来るんでしょうか?」
「…マエストーソ様のご奉仕さ。特級の位になると、自分が認めた冒険者のランクを決めれるからね。」
私は感動しそうになった。
見知らぬ人に冒険者とすら認めたくないって言ってたのに……。
今度あったら、マエストーソ様って崇拝しよう。
でも、次合うときはお義父さんって呼ぶかもな……。
「それでね。これから、ランク昇格目指して、様々な依頼を受けていくんだ。この町を拠点にね。」
「その功績が認められると、昇格依頼を受けられるんだ。それを達成すると、ランクが昇格するって仕組みだよ。」
「上のランクに行くと、どんな利益があるんでしょうか?」
本のページを探しながら聞くと、アルスはすぐにその詳細が書かれたページを見つけた。
「えぇっと…あったあった。ランクが上がると、その分得られる報酬が増えるんだ。」
「さらに、依頼も難しくなるから、自分達の実力も上がるし、名声向上にも繋がるだろう?」
なるほど。
上に行くほど、師匠の意思を継ぐ行動になるというわけだ。
アルスはさらにページを指差す。
「…これが一番重要なことで、そのランクの功績順上位10パーティは全世界の受付センターに名前が載るんだ。」
「まだ第3級だから、そこで1位になってもそこまでだけど、もし、特級の1位になったりしたら…。」
それはもう、知名度爆上がりだろう。
アルスはここを目指しているんだな。
「分かりました。アルス、これからもよろしくお願いしますね。」
「…正直、ユウにここまで付き合わせて悪いと思ってるんだ。」
「でも一人の弟子として…孫として改めて頼むよ……。よろしくね!!」
アルスは頭を下げながら、私に手を差し伸べた。
もちろん。
私も師匠から色々な事を学んだ。
それに報いるのが、弟子として出来ることだと思う。
「当たり前ですよ!一緒に行きましょう!!」
「…っ…ありがとう!」
私がその手を握り返すと、アルスはもう片方の手で自分の涙をぬぐいながら笑った。
その夜の出来事から、私達の絆はさらに強靭な物へと変化を遂げた。
私達は、明日からの依頼に備えて、部屋で泥のように眠るのであった……。
次回第16話 第3級レベルの依頼
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