第14話 想いを込めて
翌日、窓から差し込む光が私の目を覚ました。
かなり早い時間に起きたようで、太陽がちょうど今、顔をのぞかせたくらいだ。
『今日この集落を出るんだよな…。そうだ、集落1周走りに行ってみるか。』
この集落では色々な事があった。
それを思い出すように私は、集落の周りを走る事にした。
山々に囲まれた集落の朝は、小鳥たちのさえずりや、自然の美味しい空気に包まれていた。
しかし、ランニングしていると昔の嫌なことを思い出す…。
現世での私の教え子…清水君の訃報を聞いたのが早朝のランニング中だったからだ。
でも私はもうくじけない。
アトラ、アルス、マエストーソ、そして…ミライ。
皆が私に期待してくれている。
世界を救うと信じてくれている。
私がこの世界から不必要とされるまで、私は進み続ける。
そう決意したのだ。
・
・
ランニングから帰ると、今日解放される兵士に会った。
彼は昨日、マエストーソの家に導いてくれ、私に兵士を解放してくれと泣いていた奴だ。
「あ、ユウさん!おはようございます!!」
「あ、おはようございます…。」
彼の顔は、昨日の兵士としての顔とは打って変わり、穏やかな優しい顔だった。
「その、なんというか…かなりの変化ですね。」
「兵士としてではなく、やっと一人の冒険者仲間として話せるので……。」
「僕は昨日言ったように、愛する妻と子供、そして病気の親父を残してきました。それから5年…今頃戻っても、親父が生きている保証はないでしょう……。」
「……でも、僕は昨日のミライ様の勇敢な姿を見て決意したんです。妻と子供の前で暗かったらいけないと。」
その冒険者は、登ってきた朝日に照らされているせいか、尊敬すべき尊い存在だと認知させるくらい立派だった。
サヨナラの前に、一つ聞いておこう。
「……ほんとの名を教えてください!!」
私は走り出した彼の背中に向かって叫んだ。
彼は私の方にふりかえる。
「『サク・リード・スケルツォ』。第1級冒険者です!!」
そう言い残し、朝日の方へ消えていった。
彼の背中には、決意と勇気が混じっていた。
その後私は部屋に戻り、再度冒険者のローブを身につけた。
左手には、クラリネットの入ったケース。
右手には、冒険者ライセンスの入った小さな鞄を持っている。
部屋から出ると、ちょうどアルスも準備が終わったようだ。
「ふぁ……ユウ、おはよう。いよいよだね。」
アルスは眠そうな目を必死にこすりながら話す。
私達がアトラの意思を継ぐ、物語のステップを踏み出す準備が今日、整った。
集落の入口の門へ向かうと、既に最後の兵士(冒険者)達を見送ったマエストーソとミライの姿があった。
なんだかんだで、2人の親子は、本来あるべき姿を取り戻していた。
とても仲良さそうで何よりだ。
「ユウ、それにアルス。お前たちには、感謝してもしきれないな。私の出来ることはしたつもりだが、もしまた困ったら、いつでもここに寄ってくれ。」
「アルスさん。それに、ゆっちゃん!私も頑張るから、2人も頑張ってね!!」
2人それぞれが、私達に励ましの言葉を言い、握手を交わした。
その一瞬……。
とても和やかな時間が流れた。
「それじゃあ、またね。」
「マエストーソ、そして、ミライ。また会いましょう、必ず!!」
私達の背中は、既に登っている太陽に照らされ、マエストーソとミライの前に影を作り出した。
アトラの意思を継ぐユウとアルス。
ユウと結ばれるために努力することを決めたミライ。
今度こそ娘を守るため、妻との約束を守るために動き出したマエストーソ。
それぞれが皆、想いを込めて一歩ずつ前に進んでゆく……。
次回第15話 冒険者の証 7/19 21:00
※現段階で、0〜3話リメイクしてます。よろしくお願いします。




