第11話 ビブラー集落、攻略困難?
早朝。
目を覚ました私達は、昨日の残りの焦げた魚を頬張り、足早にその場を去った。
そして、朝日の昇る方角に向かって一歩ずつ足を伸ばす。
「日が昇ると、魔物が出てくるから注意しよう。」
そういえばそうだった。
マフィー(アルディート)が、日が昇る間は魔物が出るって教えてくれたっけ。
まあ、この辺にでるソプラゴンは瞬殺出来るけど……。
先に進むと、何が出てくるか分からないから注意して進むに越したことはないだろう。
「おぉ……。さっそく、アルトスパイダーの群れがこっちに来てるね。」
「ユウ。あいつらは群れで糸で絡め取ってから相手を襲うんだ。火で糸を焼き切ってから本体を攻撃したほうがいいよ。」
なるほど…頭の良い魔物もいるようだ。
一人で何も知らないまま向かってたら、やられていたかもしれないな。
「火炎!!」
2人で飛ばしてきた糸を焼き切りつつ、私は得意魔術である「空太刀」で本体を狙った。
お互いの援護もあり、さっきまで道を埋め尽くしていたアルトスパイダーは、ほとんど姿を消した。
「いい連携だね。案外ユウとは気が合うね!」
確かに、今までで一番戦いやすかったかもしれない。
まあ、これまで3回しか敵と戦ったことないんだけどね……。
・
・
日が私達の真上に登った頃。
アルスが集落と見られる場所を山の上から見つけた。
「はぁ……あ、ユウ。ここがビブラー集落だよ!」
息を切らせながらアルスが私を手招きして、下を見せた。
そこには、決して大きいとは言えないが、たくさんの家々が連なっていた。
でも、思っていた集落じゃなかった。
現世でいう城下町のように、大きな家を囲うように家が建っている。
そして、その周りにはさらに大きな塀が建っていた。
「あれ、昔来た時にはこんな塀はなかったんだけどな……。何かあったのかな。」
「とりあえず、行ってみましょう。」
私がそう言うと、アルスは「そうだね!」と顔を明るくして、山を下って行く。
こうして目の前に見えた集落は、上から見たよりも大きく感じた。
塀があるせいだろうか。
その塀は、3メートルくらいあり、周りには用水路のような小さな川が流れている。
私達は入口と見られる大きな門の前にきた。
門には門番らしき兵士が2人、槍を持ち、立っている。
普通に失礼しまーす…というわけには行かないよな……。
「貴様ら何者だ。ビブラーのヒトではないように見えるが……。」
「私達はしがない冒険者です。旅の疲れを癒やしたく、この集落に参った所存でございます。」
「一晩だけでも泊めてもらえないかな?」
私達はごまをするようにおねだりした。
「気色悪い。出ていけ無礼者!!」
槍を突きつけられる。
もう少し伸ばしたら喉を突かれるほどの距離だ。
すると、アルスは血相を変えた。
「無礼者はどっちだ!私達はあの英雄、アトラ・フラットの意思を継ぐものだ。ここを通せ!!」
アトラは兵士1人の胸ぐらをつかんで怒鳴り上げた。
兵士のもう一人は少しその手を抑制しながら、落ち着いて話した。
「アトラの弟子とは知らず失礼した。だが、この集落の長、『マエストーソ・ドルチェ』様の命令だ。この集落に一人も通すわけにはいかないのだ。」
理由はともかく、そのマエストーソという人の命令で、誰でも入ることはできなくなったわけだ。
そのせいで塀も作られたんだろう。
「分かりました。ですが、もう少しこの近くで野宿させていただきます。それはよろしいですか?」
「まあ、よかろう。だが、なるべく早く離れることをおすすめする。マエストーソ様に見つかったら私らはともかく、お前らもどうなるか分からない。」
案外、この兵士達は優しかった。
マエストーソは独裁者なのだろうか。
とりあえず、数日間は近くの森の中で火を起こして野宿することになった。
でもここで野宿することにしたのは、私達の作戦なのだ。
時間は先ほどの山下りの前に戻る……。
◆◆◆
「ユウ。恐らくだけど、これだけの塀があるということは、簡単には入れないと思うんだ。もし追い返されたりしたら、近くで野宿しよう。」
「……なぜ??」
「ふふ…。それはお楽しみさ……。」
アルスの顔には悪巧みしている悪い人の顔が浮かんでいる。
これは何か企んでいるな……。
◆◆◆
アルスはなにも考えていなかった。
茂みの中からさっきの兵士をじっと見つめているだけだ。
もう3時間も動かない。
しびれを切らした私はアルスに聞く。
「アルス……ホントにこれで集落に入れるんですか?」
「えぇ…ああ……うん。大丈夫だよ…任せて!」
アルスの額からは冷や汗が垂れていた。
呆れつつも、私は後ろの丸太に腰掛けて動きを待つ。
その時、私の耳にはある音が聞こえた。
「…誰か!……助けて!!」
音のする方向を見ると、一人の小さな少女が息を切らせながら助けを求めて走っている。
なんと、後ろからはアルトスパイダーの群れが!
あの兵士2人は少女に向かって「早く!こっちに!!」と手を招くようにするだけで1歩も動かない。
そうか。
マフィー(アルディート)から、「町には結界が張られていて、魔物が出ない。」と聞かされていた。
あの兵士達は自分達が襲われることを恐れて助けにいけないんだ。
なんとも腰抜けな。
そう思った直後、少女は躓いて転んだ。
「はぁ…はぁ…ぁ…あぁぁぁぁ……。」
少女は転んで動けず、死を覚悟している。
アルトスパイダー達は糸を出す準備をしながら少女に襲いかかろうとしていた。
でも私は兵士とは違う。
もう目の前で誰も死なせないと決めたのだ。
「アルス!ちょっと行ってくる!!」
アルスの頭上を跳び箱のように越えて少女に向かっていった。
「ちょっと…ユウ?」
アルスの困惑した声は、もうかなり後ろから聞こえた。
アルスは少女の存在にまだ気づいていないようだった。
いや…気づいていたのか??
とにかく、私は少女を助けるために必死に走った。
アルトスパイダー・・アルト歌手のような唸り声をあげるのが特徴の大きな蜘蛛。口から糸を出す者と、口で捕食する者に分かれて狩りをする、集団戦を得意とする知能の高い魔物。
次回第12話 少女の夢
※これから頑張って毎日21:00投稿出来るようにします




