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22.ウルスタットは、兄の言いなり。

ありがとうございます。

やっと評価をいただけました。

評価してくださった方、本当にありがとうございます。

 ◇◇narrator─Urstat◇◇


 僕、じゃなくて…………私の名前はウルスタット・R・アリアドル。騎士学園中等部騎士科にして、アリアドル家の次男だ。

 兄であるイングウェイに誘われて、余暇を利用して私設王都自警団の活動に参加している。

 この私設王都自警団は、ブレイブ騎士学園の高等部騎士科の生徒が中心となった非公式の団ではあるが、第二騎士団副長を親父に持つ兄を中心とし、第二、第三騎士団の子弟からなる三十人近くの組織だ。更には、その中には、王族に連なるお方も入っているから権威すらある。


 その日は、朝から西地区の貧民街(俗に言うスラム)に出張っていた。西地区は、冒険者ギルド支部もあり、他地区よりも比較的荒っぽい連中が多い地区。それでも所詮、腕力と素行の悪さだけの我流の連中。学生と雖も、正統な騎士剣術を学んでいる我々に適う筈もない。



「ウルスタット。そっちに行った」

 声の通りに通せんぼして、逃げてきた獣人の男を捕まえる。

「身分証明書か、身元を保証する者は居ますか?」

 出来るだけ丁寧に言う。

 こんな犬畜生が混じった奴に丁寧な言葉なんて必要無いだろうとも思うが、そこはそれ、あまり横暴な言動をして、騎士学園の品位を落としてもいけない。

 男はすごすごと、ポケットから黄ばんだ紙を出す。開くと折り目からポロポロと破けてくる。


「冒険者見習い証か…………。何年前だこれ?」

 横から紙を見て言葉を発するのは、兄のイングウェイ。それは冒険者タグすら貰えていない、紙の見習い証。


「ギルティ」

 そのまま兄は判決を言う。


 駆け寄った仲間の手により始末される。

 所詮、市民権も無い下等生物。例え殺しても咎める者はいない。それよりも何故こんなに獣人が王都に入ってきているのかが気に掛かる。


「おい、あんな奴らに丁寧な言葉なんて不要だ」

 不機嫌そうに言う兄の言葉に頷いて返事をする。


 仲間の声がする。

「あっちに行ったぞ。ガキだ!」

 まだいたのか。虫と一緒だな、どんどん湧いてくる。


 高等部の指示で俺達中等部が路地を走り、獲物を追う。まるで猟犬だな、なんて言葉が口から漏れそうになる。


 兄が追いついてきた。

「こっちだろう」

「確かにこっちの方に逃げて来たと…………」

 大通りの眩しさが差し込んでくる路地の一本目で、追っていたガキを見失った。代わりにいたのは、場違いな服を着た三人。

 お嬢様と侍女と護衛といったところか。

 身持ちは、しっかりとしていそうだな。

 でも、何故こんな路地に?


 そんな自分の疑問を他所に、兄のイングウェイが声をかける


「そこの者、ここらで怪しい娘を見なかったか?」


「隠し立てすると、許さんぞ!」

 兄の言葉に追従。さっき言われた通りの荒い口調。


「本当に怪しい者を見なかったか?」

 何故か落ち着いた感じで、質問を続けた兄。

 俺には注意してきたのに腑に落ちない。

 俺の不満を他所に、兄は言葉を続ける。

「見たところ、この辺りの住民ではなさそうだな。その容姿からして、何処ぞの小金持ちの商人の縁戚といったところか、お前達、こんな路地で何をしていた。そもそもがこの地区に不釣り合いな感じがするのだが?」


 女の後ろに立つ男に見覚えがある。いや、正確には男の着ている服に見覚えがあるのだ。


 何となくであるが、男は我がアリアドル家の護衛の中にいた。しかし、女達は、見たことがない。

 抜刀した俺達を前にしても妙に落ち着いた雰囲気の女二人。やもすれば、護衛の方が狼狽えているように見える。


「──ん、そこのお前。どうした?その服は、うちの物だろう」

 兄が口にしたから、やっぱりそうなのだろう。


 次の瞬間、護衛の男の鼻から赤い筋が…………。


「だ〜!どうしたお前!」

「大丈夫か!」


 鼻血?

 兄と共に狼狽えてしまった。

 何となく分かった。おそらく、護衛の者が体調を崩したので、大通りから路地に避難したのだろう。でも、だとしたら情けない。主人を気遣い、守る護衛の職にあたる者が、体調を崩し、主人に気遣われているなんて、我が家の者故に恥だ。全く、父上も祖父殿も何をしているのか。護衛の訓練が足りない。

 ということは、この二人は?


 思い出した!

 確か、田舎から従兄弟が来ると聞いていた気がする。

 名前が…………プ、プニ、いや、プニエラ。そう、プニエラだ。


「そうか、お前がプリエラか〜」

 兄が先に名前を思い出した。

 そうか、プリエラか──プニエラじゃなかったんだ。良かった、プニエラって言わなくて。

 って、可愛いな。いや、ロリコンって訳じゃない。ただ普通に可愛い。いや、普通じゃなくて、そう、普通に普通じゃないくらい可愛い。本当に、同じ血が流れてるのか?

 と、侍女であろう女性。

 マニシュマニさん、マニマニで良いと言ってた人は、美人だ。美女って感じじゃない。何となく美女って言うと、妖艶な感じがするけど、妖艶さじゃない。整ってる──そう、まるで精巧なビスクドールみたいに整ってるんだ。

 なんて、心の中で自分に言い訳じみた事を言ってる内に、仲間達が集まってきた。


「えっえっ、この可愛い子、イングウェイの従姉弟。良かったな〜似てなくて」

 これは、バーネッサ伯爵家のサリンジャ先輩。


「で、貴女がマニマニさんですか?いや〜お美しい」

 これは、トルルト伯爵家のシンデリウス先輩。


 プリステント第三王子も輪の中に入って、プリエラとマニマニさんを値踏みしている。

 ちなみに、このブリステント第三王子が兄と同学年で私設王都自警団の名誉会長。


 気が付けばプリエラ派とマニマニ派の二派になっているのかと思える輪ができていた。皆が口々に自分の正義感を語っている。

 正直、皆ほどの正義感なんて持っていない。皆が言うような人族至上主義に傾倒する気もないし、亜人種が全ての悪の原因とも思わない。ただ、家を継ぐ可能性が低い次男として、嫡子である兄に付き従うのは仕方のない事だし、この組織には上位貴族の出が多いから、顔を売ることもできる。我ながら次男らしい考えだな、なんて思ッてると、すっかりとマニマニ派の輪の外縁に追いやられていた。

 せめて、顔だけでももう一度と、外縁でぴょんぴょんとジャンプしながらマニマニさんの顔を見てる。


 ──ドガン──


 爆発音が響いた。




【昊ノ燈】と申します。


読んでいただき、ありがとうございます。

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