教室の戦い③
直斗とレンは向かい合って座った。
二人の間には、一つの机。
その上に並ぶ二本の定規。
直斗の透明な青い定規と、レンの白い定規。
教室の空気が静まる。
さっきまで騒いでいたクラスメイトたちも、今は固唾をのんで見守っていた。
美咲がタブレットを見ながら言う。
「クラスリーグ予備戦第一試合。準備はいい?」
二人は同時に頷いた。
「それじゃあ――始め!」
瞬間。
レンの指が動いた。
カッ!
鋭い音とともに白い定規が滑る。
直斗は反射的に自分の定規を弾いた。
二本の定規がぶつかる。
パシッ!
互いに弾かれ、机の中央で止まる。
「速っ!」
雄太が叫んだ。
まだ一手目。
それなのに、まるで何試合も戦い抜いた選手同士のような緊張感だった。
直斗はレンを見る。
レンの表情は変わらない。
冷静だ。
まるで次の一手がすでに見えているようだった。
(読み合いか……)
角真との試合は力のぶつかり合いだった。
だがレンは違う。
力ではなく、位置取りと角度。
少しずつ有利な場所へ追い込んでくる。
二手。
三手。
四手。
気付けば直斗の定規は机の端へ寄せられていた。
観戦していた美月が息を呑む。
「まずい……」
あと数センチ。
そこまで追い込まれていた。
レンが定規に指を置く。
「終わりかな」
静かな声。
そして放たれる一撃。
白い定規が一直線に走る。
誰もが決まったと思った。
しかし。
直斗は机の反射を見ていた。
窓から差し込む夕日。
その光で、自分の定規のわずかな傾きを見抜いたのだ。
(ここだ!)
パチン!
直斗は定規を弾く。
青い定規が回転しながら動く。
ガツン!
レンの定規の側面を打ち抜いた。
予想外の角度だった。
レンの目がわずかに見開く。
次の瞬間。
白い定規は机の端へ滑り――
カタン。
床へ落ちた。
一瞬の静寂。
そして。
「落ちたぁぁぁ!!」
雄太の絶叫が教室に響いた。
「勝者、直斗!」
美咲が宣言する。
歓声が上がる。
だがレンは悔しそうな顔をしなかった。
落ちた定規を拾いながら、小さく笑った。
「なるほど」
直斗が首をかしげる。
「?」
「君、思ったより面白いね」
レンはそう言った。
そして定規をポケットにしまう。
「次は負けない」
その言葉には強い自信があった。
直斗も笑う。
「俺もだ」
二人は握手した。
しかしその時。
教室の後ろで誰かが言った。
「代表選抜の優勝候補が来るらしいぞ」
教室がざわつく。
「え?」
「六年生の全国大会準優勝者だって」
「うそだろ……」
直斗とレンは同時に振り返った。
まだ見ぬ最強の定規使い。
定規戦争は、クラスリーグだけでは終わらない。
もっと大きな戦いが待っていた。
直斗の胸が高鳴る。
新たな強敵との戦いが、すぐそこまで迫っていた。




