教室の戦い②
「今日は転校生佐伯レンが初登場します。」前の学校では代表戦の常連。
「直斗、こっち」
美咲がタブレットを抱えて廊下へ出る。
直斗は鞄を机に置いたまま、定規だけを握ってその後を追った。
クラスリーグの試合は、放課後の教室で行われる。
机を端に寄せ、中央にスペースを作ると、そこが戦場になるのだ。
すでに数人が集まっていた。
雄太、美月、そして、見慣れない顔が一人。
「お、直斗。今日の主役じゃん」
雄太が軽く手を挙げる。
その隣で、美月が興味深そうに直斗の定規を見つめていた。
だが直斗の視線は、もう一人の新顔に吸い寄せられていた。
短い黒髪、鋭い目つき。
制服の袖から覗く手首には、細いゴムバンドが巻かれている。
その手には、まだ使い込まれていない新品の定規。
「紹介するね」
美咲が一歩前に出る。
「この子、佐伯レン。来月の代表選抜に向けて、今日からクラスリーグに参加するの」
「佐伯レンです。よろしく」
レンは短く挨拶すると、直斗の定規を一瞥した。
その目は、まるで“強さ”を測るような鋭さだった。
(……こいつ、ただ者じゃない)
直斗は直感した。
角真とは違うタイプの強さ、静かで、研ぎ澄まされた刃のような気配。
「レンは転校してきたばかりだけど、前の学校では代表戦の常連だったらしいよ」
美咲の言葉に、雄太が「マジかよ」と声を上げる。
レンは淡々と続けた。
「こっちのルールはまだ慣れてないけど……強い人とやれるなら、すぐ覚えるよ」
その視線が、直斗に向けられた。
挑むようでもなく、見下すわけでもなく。
ただ純粋に、戦う相手として興味があるという目。
胸が熱くなる。
角真に勝ったばかりなのに、もう次の強敵が現れるなんて――
定戦は、本当に終わりがない。
美咲がタブレットを操作し、今日の組み合わせを表示する。
「じゃあ、予備戦の初戦は……
直斗 vs レン」
教室がざわついた。
「いきなりかよ!」
「転校生と直斗って、絶対面白いじゃん」
「角真の次はレンか……直斗、忙しいね」
直斗は深く息を吸った。
角真に勝って見えた背中。
その先に、また新しい背中が現れる。
強くなりたい。
その思いが、再び定規を握る手に力を宿す。
レンが一歩前に出た。
「じゃあ、始めようか。直斗」
その声は静かで、しかし迷いがなかった。
直斗は頷き、戦場となる教室の中央へ歩み出る。
新たな戦いが、今始まる。




