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告白

NKJ本部。


ポリアンナが振り返る。


「ふぉろんたいごさん」


「お願いがあります」


ふぉろんたいごが顔を上げた。


「はい」


「日御子さんを探してください」


ふぉろんたいごは表情を引き締めた。


「分かりました」


懐から振り子を取り出す。


埋蔵金探索トレジャー・ハント


ふぉろんたいごの異能。


愛用の振り子を使い。


指定した対象の現在位置を特定する。


普段はこの異能で。


金目の物ばかり探しているが。


大抵は変な物を拾って持ち帰っていた。


だが。


探したい対象を明確にイメージ出来るなら。


高確率でそれを見つける事ができるのだ。



「地図」


もりやんが机へ地図を広げる。


ふぉろんたいごは振り子をかざした。


ゆらり。


振り子が揺れる。


ゆっくり。


ゆっくり。


やがて。


一点を指した。


「見つけました」


全員が身を乗り出す。


「どこですか?」


ふぉろんたいごが地図を指差した。


森の中。


街外れにある屋敷。


ポリアンナの表情が険しくなる。


「間違いありませんか」


「ありません」


迷わず答えた。


「日御子さんはそこです」


ポリアンナは立ち上がる。


「行きます」


「全員で」


のぶおも続いた。


鬼龍神が武器を掴む。


アイザックが椅子を蹴って立ち上がる。


もりやんは無言で頷いた。


「助けます」


ポリアンナはそう言って。


駆け出した。



森の中の屋敷では。


日御子は椅子へ座らされていた。


周囲には帝国兵。


頭痛はだんだん酷くなっている。


状況は何一つ理解できなかった。


「……どうしてですの?」


感情のない声だった。


「何故こんな事をしたんですの」


ユリウスは答えない。


しばらく沈黙。


数秒後。


「申し訳ありません」


静かに頭を下げた。


「ですが必要でした」


「意味が分かりませんの」


「そうでしょうね」


ユリウスは小さく頷く。


「歪んでしまったのですから」


日御子の眉が動いた。


続けて。


「貴女は忘れてしまった」


「何がですの」


「全てです」


その答えはあまりにも曖昧だった。


「だから何を言っているか分かりませんの」


「私は日御子ですの」


「そうですね」


ユリウスは微笑む。


どこか懐かしむように。


寂しそうに。


「ですが」


「それだけではありません」


日御子の頭がさらにズキリと痛んだ。


最近どんどん酷くなる頭痛。


でも今回は違う。


頭の奥。


何かが引っ掛かる。


思い出せそうで。


思い出せない。


ユリウスが一歩前へ出た。


「そろそろ本題に入りましょう」


日御子の身体が硬直する。


どこか聞き覚えがある声だった。


だが。


思い出せない。


ユリウスは静かに微笑む。


「お忘れですか?」



その瞬間。


激痛。


また鮮血が滴り落ちる。


「っ……!」


頭を押さえる。


城。


王座。


誰かの背中。


優しい声。


断片。


断片。


断片。


思い出せない。


「あなたは……」


日御子が顔を上げる。



その時だった。


ドォン!!


凄まじい轟音。


屋敷全体の揺れと共に。


扉が吹き飛んだ。


帝国兵達が一斉に振り返る。


砂煙の向こう。


「日御子さん!」


ポリアンナだった。


その後ろには。


咲夜姫。


アイザック。


のぶお。


鬼龍神。


もりやん


そしてソリムド。


全員が武器を構えている。


頭を割られるような激痛の中。


それでも日御子はそちらへ視線を向けた。


「みなさん……」


だが。


ユリウスは動じない。


「思ったより早かったですね」


穏やかな声。


まるで予想していたかのようだった。


ポリアンナが一歩前へ出る。


「一体あなたは」


拳を握り締める。


「いつから計画していたんですか!」




数日前。


統天帝国エテルナ。


旧ヒノモト領。


ポリアンナと咲夜姫は。


隠れるように、資料館の一室にいた。


革命当時の記録。


行政文書。


新聞。


証言記録。


片っ端から目を通していく。


最初は違和感だった。


革命の話を聞けば聞くほど。


資料を読めば読むほど。


暴君の記録が出てこない。


むしろ逆だった。


民を守る王。


国を立て直そうとした王。


そんな記録ばかりだった。


「おかしい……」


暴君だったはずだ。


少なくとも。


日御子はそう信じている。


だが。


どこにも存在しない。


暴政の証拠が。


「ではなぜ革命を……」


ポリアンナは呟いた。


その時だった。


一冊の資料が目に入る。


統天帝国。


ヒノモト統治機構関係者名簿。


何気なくページをめくる。


そして。


ポリアンナの手が止まった。


「……え?」


そこに描かれていた似顔絵。


見覚えがあった。


ユールだった。


正確には。


ユールに酷似した男。


あまりにも似過ぎている。


名前を見る。


ユリウス。


統天帝国諜報局所属。


ポリアンナの背筋を冷たいものが走った。


「そんな馬鹿な……」


あり得ない。


手が、かすかに震えた。


だが。


嫌な予感だけは膨らんでいく。


もしユールが偽名なら。


あの経歴も偽物ではないのか。



ポリアンナ達は資料館を飛び出した。


次に向かったのは。


以前。


誘拐事件の依頼を受けたミズホの役所だった。


受付へ向かう。


当時依頼をしてきた行政担当官を呼ぶ。


「案内人だったユールという人物について調べたいのですが」


担当官が首を傾げた。


「ユール?」


帳簿を調べる。


登録記録を確認する。


だが。


見つからない。


何度探しても。


存在しない。


「おかしいですね……」


担当官が首を捻る。


「確かに居た気がするんですが」


「なぜか記憶がぼやけています」


ポリアンナは顔を上げた。


「記憶が?」


「はい」


職員は困惑していた。


「依頼の時も話したはずなんですが……」


「顔も名前も曖昧で」


その瞬間。


全てが繋がった気がした。


ユール。


存在しない経歴。


曖昧な記憶。


不自然な信用。


そして。


ユリウス。


ポリアンナ達は急いで本部へ戻る事にした。




現在。


ポリアンナがユリウスを睨む。


「あなたは一体何者なんですか」


静寂。


帝国兵達も身動き一つしていない。


日御子は痛みに息も絶え絶えだった。


「そこまで辿り着きましたか」


ユリウスは。


静かに微笑んだ。


やがて。


ゆっくりと口を開いた。


「姫様」


「お久しぶりです」



【三十五話 天照の鏡】へ続く


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