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キレイクリーンラボの異常清掃記録  作者: 舞響


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9/12

9話 ヤニの匂いは消臭

「おはようございます!」


元気よくキレイクリーンラボに入ると——


「あ、おはよ〜。君が新しく入った子?」


そこにいたのは、ふわふわのピンク髪を揺らす少年……いや、少年“みたいな”人。

バイトの子かな?


「は、はい! 新人のミガク ココロです! よろしくお願いします!」


「こちらこそ〜。ヤニ シュウです。シュウでいいですよ〜、ココロちゃん。」


か、かわいい。

そして……あざとい。


「じゃあ、シュウさんで。」


「うん、よろしく〜。」




数日後。


「おはようございます!」


と挨拶しながら入った先で、私は固まった。


シュウさんが、外のベランダで——

スパスパとタバコを吸っている。


「あ、ココロちゃん、おはよー。」


「だ、だめですよ!! まだ子供でしょ!? タ、タバコなんてダメです!! 身体壊します!!」


「え、えーー!?」


思わず掴みかかろうとしたその時。


「あれ、何してるの? 二人とも。」


ヒカルさんが顔を覗かせる。


「シュウさんが、た、タバコ! まだ子供なのに!!」


その言葉に、後ろにいたレイさんがブハッと吹き出した。


「彼…29歳。ここの最年長。」


ヒカルさんが補足する。


「え、え、えーーー!!」


私の絶叫がラボ中に響き渡った。


シュウさんは着替えを済ませ、歯磨きをし、さらに消臭スプレーをこれでもかと振りかけてから、こちらへ戻ってきた。


「わあ〜ごめんなさい。紛らわしくて〜」


ふふっと笑うその顔が、またあざとい。


「いえ……こちらこそ、早とちりしてしまってすみませんでした。」


私はぺこりと頭を下げた。


「ココロちゃんは悪くないわよ。紛らわしいのはこっち。」


レイさんが淡々と言う。


「もう〜レイちゃんってば厳しい〜」


「下の名前で呼ぶなって言ってんだろうが。」


レイさん。

シュウさんに厳しい。



「それにしても……タバコ吸うのに、すごく念入りに消臭してましたよね。やっぱり、お掃除の仕事だから気を遣ってるんですか?」


私が尋ねると、シュウさんは「うんうん」と頷いた。


「そうだね。タバコの匂い嫌いな人も多いし……キレイにしに行く人がタバコ臭かったら説得力ないでしょ? まあ、でもそれは建前で。」


「たてまえ?」


「俺、めちゃくちゃ鼻が利くの。」


「は、はあ……」


「だからね、自分が臭いのが無理。周りが臭いのはもっと無理。だから人一倍着替えるし、口腔ケアも欠かさない。」


「でも……タバコは吸うんですか?」


どう考えても矛盾してる。


「タバコはオアシスです。煙は旨みです。やめられない。でも……臭いのはいや。」


「な、なるほど……」


「変わってるわよね〜」


レイさんが手にクリームを塗りながら呟く。


「レイちゃんも変わってるよね〜」


「レイって呼ぶなって言ってんだろ、このヤニやろうが。」


し、辛辣……。



「さて、ということで。今日僕とシュウ、ココロさんの三人で行きましょう。

アブラーキさんとシズクは、別件の清掃お願いね。」


ヒカルさんが微笑む。


「わかりました!」


「は〜い」


私とシュウさんが返事をそろえる。


「わかりました……行くわよ、ヌメリー!」


「は、は、は、いいいい!」


ヌメリー先輩は慌ててレイさんの後を追っていった。


そして私たち三人は、伯爵家へ向かった。



伯爵家に到着し、案内された部屋に入ると、伯爵夫人が困ったようにため息をついた。


「この部屋なんだけどね……主人がタバコを吸ってから、匂いが全然落ちなくて。壁紙も張り替えて、掃除もしてもらったんだけど……だめなのよ。

娘が妊娠していて、しばらくはここに滞在する予定なの。日当たりもいいし、広さもちょうどよくて、どうしてもこの部屋を使わせてあげたいのだけれど……。

何をしても、タバコの匂いが残っちゃってね。どうにかなるかしら?」


伯爵夫人は心底困っている様子だった。


「わかりました。お任せください、奥様。」


ヒカルさんが丁寧に頭を下げ、シュウさんも綺麗にお辞儀をする。

私も慌てて同じように頭を下げた。



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