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6話 ヌメリはツルリと

「終わったね」


「はい!」


「……はい」


三人で顔を見合わせる。


それよりも――わたあめ。


「水で洗ったら萎んでだね。」


「はい。でも乾けば膨らむから大丈夫です!」


「そういうものなの?」


「はい!」


よくわからない。

けど、わたあめだから……まあ、そういうものなのかもしれない。

それよりも…。


「あの、さっきの穢れってよく現れるんですか?」


ヒカルさんをみる。


「うーん、よく……ではないけどね。

汚れが溜まって、人の負のエネルギーが加わると、

それが穢れになって暴走するんだ。」


「なるほど。

じゃあ、さっきの噴水が巨大化したり、

ドラゴンが動いたりしたのって……

他の人にはどう見えてるんですか?」



ふと疑問を口にする。ヒカルさんは続ける。


「小さい穢れなら、普通の人には見えないよ。

ただ、さっきみたいに大きく暴れ出すと、見えてしまう人もいるね。」


「え?じゃあ、さっきの噴水が巨大化したり、

ドラゴンが動いたりしたのって……大騒ぎになるんじゃ…?」


「それはね、僕がYojō Protection Barrierヨウジョウ・プロテクション・バリア、養生結界をを張ってるから大丈夫だよ。」


「ようじょう?ヒカルさんって陰陽師か何かなんですか!?」


「そういうわけではないけど。

掃除のときって、周りに汚れが飛ばないように、

まず“守るための準備”をするでしょ?」


「……あー、はい。しますね。」


「これも同じでね。

穢れが暴れたときに、周りの人に見えたり、影響が出たりしないように、

この場所を丸ごと覆って守ってるんだ。」


「つまり……周りを汚さないための結界みたいな感じですね!」


「そうだね。そんなところ。」


ヒカルさんがふっと笑う。



「あ、あ、あ、あの。それより、そのブローチどうするんですか?」


ヌメリー先輩が震える指でブローチを指した。


「とりあえず返しに行こうか。

それと、作業が終わったことも報告しよう。」


「はい。」


三人で伯爵家の主人のもとへ向かう。



「ありがとうございます。綺麗にしてもらって……。

使用人にもやらせたのだけど、すぐ汚れてしまって。

やっぱりプロの方は違いますのね。」


伯爵夫人はほっとしたように微笑んだ。


「いえ、しばらくは大丈夫だと思います。

ただ、定期的なメンテナンスはおすすめします。」


「ええ、またお願いするわ。これ、お代ね。」


「ありがとうございます。

それと……噴水の中から、これが見つかりました。」


ヒカルさんが赤い宝石のブローチを差し出す。


伯爵夫人は目を丸くした。


「あら……これは。懐かしいわね。

失くしたと思っていたのだけど。」


そのとき、扉の影から小さな男の子がそっと顔を出した。


「……あ、あの。」


「どうしたの?」


「それ……隠したの、僕なんです。」


「あなたが?」


少年はぎゅっと拳を握りしめ、うつむいた。


「お母様が……妹ばかりに夢中だったから……。

悲しくて……ご、ごめんなさい。」


深々と頭を下げる。


伯爵夫人は一瞬驚いたが、すぐに柔らかく微笑んだ。


「あら、そうだったのね。

気づいてあげられなくて、ごめんなさい。」


そして、そっと少年を抱きしめる。


「でもね、これは大事なものなのよ。

だって……あなたと同じ瞳の色なんだもの。」


少年の目が大きく開く。

ブローチと同じ綺麗な色だ。


「……ごめんなさい、お母様。」


小さな声でそう言って、少年はぎゅっと抱き返した。


「良かったですね。綺麗になって、失くしものも見つかって。

仲直りもできましたね。」


「そうだね。」


ヒカルさんがふっと笑う。

夕暮れの光に照らされた金色の髪が、柔らかく揺れた。


「でも、初日がこれで驚いたでしょ?」


「そうですね。

でも……頑張ります!」


「頼もしいな。」


「お、おれは……おれは……や、や、やくたたずだ……」


ヌメリー先輩がしょんぼり肩を落とす。


「ヌメリー先輩!そんなことないですよ!

ヒカルさんにホース投げた時、すごくかっこよかったです!」


「か、か、かっこいい? お、俺が……?」


目をキョロキョロさせて、もじもじし始める。


「そうだよ。

ハイドロ フォースを持ってきてくれたのはシズクなんだから。

助かったよ。」


「ひ、ヒカルくん……」


ヌメリー先輩の耳まで真っ赤になった。



そして、私たちは一日を終えた。


初日から大騒ぎだったけれど――

なんだか、この仕事が少しだけ好きになれそうだ。



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