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キレイクリーンラボの異常清掃記録  作者: 舞響


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3/13

3話 クビになったので掃除屋になります

「さて、本来なら穢れは浄化するところなんだけど。」


ヒカルさんがちらりと私を見る。


「えっと……それは、なんか可哀想です。」


思わず口にしていた。


ヒカルさんは、ふっと微笑む。

その笑みは優しいけれど、どこか意味深だった


「そうだね。

本来なら穢れって、意思を持たないんだよ。

こんなふうに話をするものなんて、聞いたことがない。」


ヒカルさんは顎に手を当て、興味深そうにわたあめを見つめる。


「そもそも……穢れってなんですか?」


私が恐る恐る尋ねると、ヒカルさんは静かに説明を始めた。


「汚れが溜まった部屋は、人の負の感情も溜まりやすい。

そこに現れるのが、この“穢れ”だよ。」


「もしかして……ただの掃除屋ではないってことですか?」


「いや、普通の清掃もするよ。

だけど今日みたいに“特殊な清掃”もする。

それが――キレイクリーンラボ。」


「な、なるほど……」


胸がどきどきする。

まさか、こんな世界があったなんて。


「とりあえず、この子は様子見ということにしましょう。」


「わかりました。

あの……この子、私が引き取ってもいいですか?」


「もちろん。

でも何かあると困るし……」


ヒカルさんは少しだけ身を乗り出し、

まっすぐ私を見つめた。


「ココロさん。ここで働かない?」


「え?」


心臓が跳ねた。


「原因がこの子だってわかったし、

もう同じことは起こらないだろうから、

他でも働けると思うけど……」


ヒカルさんは小首を傾げ、柔らかく微笑む。


「この穢れが“見える”人は少ないんだ。

僕は……君が欲しい。どうかな?」


ほ、ほしいって……

そんな綺麗な顔で言われたら、心臓がもたない。

でも…こんなよくわからない所で働くのは…。


「あ、もちろん危険手当もつけるよ。

お給料は今までの二倍でどうかな。」


「やります!!」


思わず食い気味に返事をしてしまった。


ヒカルさんは嬉しそうに笑う。


「それでは、よろしくね。ココロさん。」


「はい!お願いします!」


「ココロ〜、よろしくね〜!」


ふわふわと揺れながら、わたあめが寄ってくる。


「よろしく!わたあめ。」


「わたあめ?」


ヒカルさんが首をかしげる。

あ、心の声が漏れた……!


「ふわふわしてるからだめ?」


「わたあめ!気に入ったの!」


ふわりふわりと揺れて喜ぶわたあめ。

その姿が可愛くて、思わず笑ってしまった。



「ふー……つっかれたー」


ベッドに倒れ込みながら、思わず声が漏れた。

でも、胸の奥は不思議と軽い。


働き口も見つかったし、

原因もわかったし、

わたあめも無事だったし――


なんだか全部がスッキリした気分。


それに、住む場所まで用意してもらえた。

ヒカルさんの計らいで、事務所のすぐ近くにある社員寮へ入れてもらえたのだ。


家具も揃っていて、清潔で、

今までのメイドの部屋よりずっと広い。


「……感謝しかないなぁ。」


ぽつりと呟くと、

ふわり、とわたあめが目の前に浮かんだ。


「それにしても……わたあめって何食べるの?」


「うーん、特には?」


ふわふわと揺れながら答える。

本当に雲みたいだ。


ヒカルさんが言っていた通り、

わたあめは私とヒカルさんにしか見えないらしい。

普通の人には、ただの空気にしか見えないんだとか。


「じゃあ……私のご飯、少しあげるね。」


パンをちぎって差し出すと――


「あむあむ。美味しい〜」


小さな口(?)で一生懸命食べる姿が可愛すぎる。


「そっか、良かったね。

これからよろしくね、わたあめ。」


「はい。よろしくなの〜」


ふわりふわりと揺れながら、嬉しそうに回る。


その姿を見ていたら、

今日の疲れが全部溶けていくようだった。


「……ふぁ……」


大きなあくびが出る。

ベッドに横になると、柔らかい布団が体を包み込んだ。


「明日から……頑張らなきゃ……」


まぶたが重くなり、

わたあめがふわりと寄り添うように浮かんでいるのを最後に――


私は静かに眠りについた。



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