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伯爵家をクビになった元メイドは、穢れを掃除する異常清掃会社で働きます  作者: 舞響


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29話 レイさん修羅場中


必死で穢れを押さえつけているけど——


「もう無理なんですけど!!」


養生テープの隙間から、

ウニョウニョと黒い影が這い出ようとしてくる。


やめてくれ!!


「絶対はなすな!

この穢れは私がなんとしてでも葬るんだから。」


レイさんの顔が、

完全に“鬼” になっている。


こ、こわい。

怒りで空気がビリビリしてる。


「おい!綿埃!!」


「は、はい!」


わたあめがビクッと震える。


「あんた、でかくなってもっと必死に抑えなさいよ!

じゃないと、あんたも葬るわよ!!」


完全に八つ当たりだ。

でも今は誰も逆らえない。


わたあめ……ごめん……。


「は、はい!

やってみます!!」


わたあめはビクビクしながら、

スゥーーっと息を吸い込み……


ぽよんっ と巨大化した。


まんまるの綿菓子みたいな体で、

穢れを上から押しつぶす。


その瞬間——


穢れが、空気が抜けるように

しゅぅぅぅ……と萎んでいく。


「これって……。」


「効果ありよ!

溶けてきた!

このまま抑えるよ!!」


「はい!!」


必死に押さえ続け——


じゅわっ……

じゅわじゅわじゅわ……


そして——


と、とけた!!


黒い影は完全に溶け、

ただの焦げた液体になって消えた。


「よし!よくやった!」


レイさんが大きく息を吐く。


穢れは片付いた。

……が。


「よし、私はもう1人も葬ってくるわ。」


レイさんが腕をぐるぐる回し始める。


やばい。

完全に“戦闘モード”だ。


「ま、ま、まずいですよ!!それは!!」


「一発どころか十発ぐらいお見舞いしないと気がすまないのよ!!」


レイさんが荒ぶる。

私は必死に腕を掴んで止める。


「落ち着いてください!!

ここで暴れたら——」


その時。


「キャーー!!」


奥の部屋から奥さんの悲鳴。


「ど、どうしたんでしょう!?」


「とにかくいくわよ。」


レイさんと顔を見合わせ、

私たちは隣の部屋へ駆け込んだ。



「どうしました!?」


「は、破水しちゃったみたいなんです。」


奥さんが涙目でお腹を押さえている。

床にはすでに水が広がり、旦那(レイさんの浮気相手)はオロオロと右往左往していた。


「ど、ど、どどうすれば!」


完全にパニックだ。

いや、お前が一番落ち着け。


レイさんは迷わず奥さんのそばに膝をつき、

プロの顔でお腹に手を当てた。


「予定日いつでしたか?」


「まだ……予定日は一ヶ月以上先なんです。」


奥さんの声が震える。


レイさんは一瞬だけ眉を寄せたが、すぐに落ち着いた声で言った。


「確かに……少し早いですね。

とにかく急いで病院行きましょう。」


そして振り返る。


「ココロ!」


「は、はい!!」


「救急車呼んで。」


「は、はい!」


救急車の番号……えっと……

頭が真っ白になる。


「えっと、もしもし!

あれ、なんて言えばいいんですか!!?」


完全にパニック。


「スピーカーにしなさい。」


レイさんがスマホを奪い、

落ち着いた声で状況を的確に伝えていく。


その姿がもう、かっこよすぎる。


「おい!そこの旦那!」


「は、はい!!」


旦那がビクッと背筋を伸ばす。


「タオル持ってこい!」


「え!?」


「清潔なタオル!さっさとしろ!!」


レイさんの一喝に、旦那は敬礼して走っていった。

(いや、なんで敬礼……)


奥さんは涙をこぼしながら言う。


「赤ちゃんが……何かあったら……どうしよう……」


レイさんは優しく微笑んだ。

さっきまで鬼の形相だったのに、

今はまるで天使みたいな顔。


「大丈夫よ。

赤ちゃんが早くあなたに会いたくて、出てこようとしてるのかもしれない。

だから、こっちも準備してあげなきゃ。」


奥さんは目を丸くし、

その言葉に少しだけ呼吸が整った。


「は、はい……

お母さんがちゃんとしないとダメですよね……」


レイさんはそっと奥さんの手を握る。


「そう。あなたはもう“お母さん”なんだから。」


その瞬間——


れ、レイさん……かっこよすぎる!!

すごい!!


さっきまで浮気相手を十発殴る気満々だった人と同一人物とは思えない。


でも……

これがレイさんなんだ。

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