24話 お風呂掃除はカビ退治
「おはようございます〜」
「おはよう。ココロさん。」
いつも通りラボに入ると、ヒカルさんが爽やかに微笑み、みんなが準備をしていた。
「今日は、騎士団の大浴場の清掃にいくよ。」
「騎士団ですか?」
「あっそこ……いつも汚いのよねー」
レイさんが肩を落とす。
その表情は“思い出したくもない”というレベル。
「確かに…。ちょっと気合い入れてヤニ吸ってくる〜」
気合い入れてって吸うって何。
シュウさんはベランダへ向かい、すでにライターをカチカチ鳴らしている。
「お、お、おれは好きです。ヌメリがたくさんあって。」
ふふふっと笑うヌメリー先輩。
……この人だけは本当にブレない。
「とりあえず、準備してみんなで頑張りましょう。」
ヒカルさんが声をかけ、私たちは車に乗り込んだ。
そして到着した先は──
「ふ、古いですね。」
思わず声が漏れる。
目の前にそびえるのは、石造りの巨大な浴場施設。
外壁はところどころ黒ずみ、歴史を感じるというより“放置されてる感”が強い。
「そうなんだよ。騎士団の大浴場だからね。」
ヒカルさんが苦笑しながら先に進む。
古い木の扉を押し開けると、
むわっと湿気とカビの匂いが押し寄せてきた。
……うん、これは確かに“気合い”が必要だ。
中に入ると──
「ひろーい! でも汚い…。」
思わず声が漏れた。
大浴場は体育館みたいに広いのに、床はベットリ、壁はカビだらけ。
湿気と古い石の匂いが鼻にまとわりつく。
「…それにしても、今回はすごい汚れてるな。」
ヒカルさんも眉をひそめる。
「前回掃除したのって三ヶ月前でしたっけ〜?」
シュウさんが言いながら、キョロキョロ見渡す。
「あー、やだ。」
レイさんは肩をがっくり落とす。
「すごい、、ヌメリ!!」
ヌメリー先輩だけは目を輝かせていた。
……一人だけ楽しそうなのなんで?
「さて、じゃあ、みんなScrub Brush 磨き落としの毛刃持って。」
「はーい」
私たちはそれぞれブラシを手に取る。
ヒカルさんは大きいスプレーを二本持っていた。
「それなんですか?」
「White Erasure Fluid“白滅の浄剤」
白滅。
物騒すぎる名前だ。
「まずはこれでカビをきれいにするよ。
そして次はこれ。」
「それは?」
「Bath Grease & Scale Remover(バス・グリース・アンド・スケール・リムーバー)、浴垢油痕除去液。」
また、ややこしい名前だな。
「あれ、油?ってことは…キッチンで使うのとは違うんですか?」
確かレイさんがよく使ってたやつも油を溶かす洗剤だったよね?
「これは、皮脂と湯垢の両方を落とす万能な洗剤だよ。お風呂では、人の油も石鹸カスもつくからね。」
ヒカルさんが淡々と説明する。
「じゃあ、みんなで擦ってね。」
「はーい!」
それぞれ返事をして、ブラシで擦り始める。
おー、結構黒カビあるなー。
ゴシゴシ……よく落ちる。
スイマクリさんの洗剤、やっぱりすごい。
……と、その時。
カサ……カサ……
壁の黒カビが、
“動いた気がした”。
え?
気のせい……じゃないよね?
わたあめが私のポケットから出てくる。
「おはようございます〜」
「あ、わたあめ。どうしたの?」
「みんな大変そうですねー。手伝うことありますかー?」
「じゃあ…わたあめってさ。ブラシとか持てるの?」
「持てますよ!」
もふもふっと、綿の中から小さな手が生えてきた。
「す、すご!」
「じゃあ、細かいところ擦ってって」
小さいブラシを渡す。
「わかりました〜」
わたあめはちょこちょこっと壁の隙間を擦り始める。
……可愛い。癒し。




