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伯爵家をクビになった元メイドは、穢れを掃除する異常清掃会社で働きます  作者: 舞響


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18話 今更ですが…歓迎会


ヌメリー先輩は、両手でワイングラスを包み込むように持って、

ちび、ちび……と慎重に飲んでいた。

顔がほんのり赤くて、目元がとろんとしている。


普段は緊張でガチガチなのに、

お酒が入ると急に柔らかくなるようだ。


「……おいしい、です……。」


小声でつぶやいて、またちびっと飲む。

完全に子動物みたい。


一方で――


スイマクリさんは、というと。


マスクの下から、

自前の細いストローをにゅっと差し込んで、

ワインをちゅー……ちゅー……と吸っていた。


なんだそれは!!


ストローの先は、

マスクの内側にある“専用飲み口”に繋がっているらしく、

まるで宇宙飛行士の補給みたい。


「……ふむ、悪くない。」


いや、飲めてるんだ……。


その姿があまりにもシュールで、

思わず二度見してしまった。



「気になってたんですけど…みなさん結婚とかされてないんですか?恋人とかはいますか?」


その瞬間、空気がピリッとした。


……あれ?

まずい話題だった?


「うーん、僕はいないかな。」


ヒカルさんが苦笑しながら答える。


「え?

カッコいいし、綺麗好きで、料理もできて、仕事もしてるのに!?」


「あはは……。」


どこか困ったような笑い。


するとレイさんが、酔った勢いで私の肩に腕を回す。


「ヒカルはねー、元彼女が一生懸命掃除したところにね、

“え?これで掃除したの?どこを?”ってサラッと笑顔で言うやつよ。」


「え!?」


「そんなの言われたら、顔よくたって嫌でしょ?」


「そ、そうですね……。

そこは、もっと言い方があるかと。」


「いや……ほんとに“どこを?”って感じだったから。」


ヒカルさんは困ったように笑う。

悪気がないのが逆にタチ悪い。


「それだけじゃない。

彼女が一生懸命オシャレしてきてもね……」


レイさんが続ける。


「“その服、てんとう虫みたいで可愛いね”って!

なにそれ!? バカにしてんのってなるじゃん。」


「あー……。」


「え?だって赤い服に黒い斑点だったから……

褒めたつもりだったんだけど。」


ヒカルさんは本気で不思議そうに笑う。

……残念すぎる。


「デリカシーがないの! デリカシーが。」


「なるほど……。」


ヒカルさん、イケメンなのに致命的だ。


「でも、アブラーキさんも彼氏と長続きしないよね。

美人なのにジェットコースターみたいな気分屋だからかな?それに見る目もないよね。クズみたいな人ばっかりよく見つけてくるなって思うよ。」


ふふっと笑うヒカルさん。


「うっ……。」


レイさんの心にグサッと刺さった音がした。


「レイさん、キレイですよ!

女性は仕方ないです!

ホルモンバランスあるから気分にムラがあるのは当然です!!

世の中には良い人もいます!絶対!」


全力フォロー。

届いてくれ。


「それから……シズクは、

思慮深くて感受性が強くて優しいんだけど……

陰の気が強すぎてね。

みんながジメジメに持ってかれちゃうから、

彼女どころか仕事以外の友達もいないよね。」


「うっ……。」


今度はヌメリー先輩からグサッと音がした。


「ヌメリー先輩!

私は先輩と仲良くしたいです!!」


全力フォローその2。

聞こえてるよね!?

ね!?


ヌメリー先輩は、「俺なんてどうせ、排水溝のヌメリ以下ですーごめんなさい。」と項垂れる。

あ、聞こえてないわ。これ。



「それから…シュウは。

見た目可愛いけど、タバコとお酒はねー。

性格変わりすぎてみんな引くよね。

これを受け入れられる人なんていないと思う。」


「ははー、ヒカルくんしんらつーぅ。」


シュウさんは、ソファの向こう側からにこにこ笑っている。



「だ、大丈夫です、たぶん、だれか……

いる、いるかな?

いや私は無理かなー。」


「ちょっとココロちゃん、フォローするならしっかりフォローしてくれる〜?」


にこにこしたまま、じわじわ視線だけ寄ってくる。

圧がすごい。


「す、すみません。」


フォロー難易度が高すぎる。


「それと、ソウジは頭も良いし顔も良いけど、極度の潔癖だしね。

これは論外でしょ。」


「そうですねー。」


本人は気にしてないけど、論外って。

ヒカルさん、容赦なさすぎる。


そして、ふと私を見る。


「ココロちゃんは、素直で真面目で可愛いよね。」


か、可愛い!?

て、照れる……と思ったのも束の間。


「色気なくて、妹みたいって言われて、女性として扱ってもらえなそうだよね。」


グッサ。


さ、さ、ささった……!!

強い、強すぎる……!!


「あ、あの。本当にそれ、ずっと好きだった人に告白する前にそう言われたんですよ!

くそー!!告白すらさせてもらえなかったよ!!

言う前に振られたんですよーー!

挙句スタイル抜群の美人と付き合ってたよ!!」


わーーん。


私はレイさんに抱きつく。


「ほら、やばいやつでしょ。

ヒカルには気をつけなさい。」


レイさんが頭をぽんぽんしてくれる。


ヒカルさんはニコニコしながらワインを飲んでいる。

絶対怒らせない。

あの腹黒デリカシーなし男め!!


ジロリと睨む。


「ん?」


ひっ……こ、こわい。

目の奥が笑ってない。


気をつけよう……。


その後もどんちゃん騒ぎして、

笑って、刺されて、また笑って、

ヒカルさんの家を後にした。


傷はえぐられたけど――

楽しかった。


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