表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伯爵家をクビになった元メイドは、穢れを掃除する異常清掃会社で働きます  作者: 舞響


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/47

14話 異常な潔癖症

ラボに戻り、


「じゃあ、早速ソウジのところへ案内するよ。」


ヒカルさんが穏やかに笑う。

スイマクリさん…どんな人だろうか。

不安しかないけれど。


でも、洗剤や道具を作ってるすごい人なんだよね?

それは尊敬だなー。


そんなことを思いながらヒカルさんとエレベーターに乗り込む。


「彼、地下にいるんだよ。」


「へぇー。」


エレベーターを降りて歩き出すと、ヒカルさんが軽く手を上げた。


「まずは、これ。」


次の瞬間――


足元がシューッ!!


「ひゃっ!?」


靴底どころか、靴紐の隙間まで狙い撃ちしてくる勢いで消毒液が噴射される。


そこから先は、もはや“通路”ではなく“儀式の道”だった。


一歩進むごとに、

シューッ(足)

シューッ(膝)

シューッ(腰)

シューッ(肩)

シューッ(頭)

と、まるで全身をスキャンされているように細かく消毒される。


「え、え、まだ続くんですか!?」


「ここからが本番だよ。」


ヒカルさんがさらっと言う。


本番……?


そう思った瞬間、壁がガコンと開いた。


「こちら、専用の手洗い場です。」


専用……?


普通の蛇口じゃない。

手を差し出すと、まず“前洗い用の水流”がシャーッと流れ、

次に“薬用泡”が自動でぶわっと噴き出し、

さらに“爪の間専用ブラシ”がウィーンと回転し始める。


「ちょ、ちょっと待って!?勝手に動く!?」


「指先は念入りにね〜。彼、爪の間の菌が一番気になるらしいから。」


念入りどころじゃない。

爪の間の奥の奥まで、もはや“磨かれている”。


そして手洗いが終わると、次はうがいステーション。


「口を開けてください。」


機械の声がしたと思ったら、

自動で適温のうがい液が注がれ、

さらに“うがいの角度を誘導するレーザーガイド”まで出てきた。


「こ、ここまでやる!?」


「彼、飛沫が苦手でね。」


いや、飛沫どころじゃない。

もはや空気そのものを信用してないレベル。


うがいが終わると、今度は全身消毒ブース。


シューッ!!(全身)

ブォォォォ!!(熱風)

キィィィィン!!(冷風)

シューッ!!(仕上げ)


「な、なんなんですかこれ!!」


「うん、だいたいみんな最初はそう言うよ。」


ヒカルさんは笑っているけど、私は笑えない。


そして――


「最後に、静電気除去ね。」


パチッ!!


「いったぁ!!」


「これを通らないと、彼の部屋には入れないんだ。」


……ここに来るまで、もう30分以上経ってるんですけど。

これ、室内だよね!?

外より厳重なんだけど!!



「もう着くよ。この扉の先」


「はあ……」


ここまでの消毒ラッシュで、体力ゲージはすでに赤。

正直、もう疲労感が半端ない。

まだ目的の人に会ってすらいないのに、今日いちばん疲れてる。


ヒカルさんが軽くノックする。


「ソウジ、入るよ」


「……」


扉が開いた瞬間――


す、すごい。

色んな機械や器具が所狭しと並んでいて、まさに“実験施設”そのもの。


「触らないようにね。危ないから。」


「は、はい!!」


見たことのない色の試験管が光ってる。

(もう疲れてるから、余計に怖い……)


「ソウジ、今いい?」


ヒカルさんがにっこり声をかけると――


クルッとこちらを振り向いた人物が、ピタッと固まった。


その姿に、私も固まる。


ガスマスク!?


「……」


完全にフリーズしている。


「ソウジ、それ取って」


ヒカルさんの言葉に、ソウジさんはゆっくりとガスマスクを外す。

緑色の長い髪をひとつに結んだ、ロン毛。

切れ長の目で、顔立ちは驚くほど整っている。



切れ長の目でじっとりとこちらを見つめてくる。


ひえっ。

(もうメンタルHPがゼロに近い……)


「あ、あの、私は――」


「喋らないで。」


ノズルの長い噴射器をむけられ、

シューッ、シューッ。


全身に消毒液が噴射された。


え、え、えーーーー!?

さっきまでの消毒ルートより容赦ないんだけど!


「この人だめ。追い出して。」


「え、えーーー!?

そ、そんな汚いですか!?わたし!!」


ショックでさらに疲労が増す。


「ソウジ。」


ヒカルさんが呆れた顔をする。


「こほこほ。ちょっと消毒しみますよー。」


ふわりん、と私の肩からわたあめが顔を出した。


「それ!!」


ソウジさんの切れ長の目が見開かれる。


「穢れなんでいるの!?」


そう言うなり、慌ててガスマスクをかぶり直し、

小さい掃除機を構える。


「ま、待ってください!!」


私が慌てて前に出る。



「ソウジ、説明するからしまって。」


「穢れだめ。絶対だめ。」


「ソウジ……」


ヒカルさんの低い声に、ソウジさんは渋々ハンディースイトリを下ろした。


「じゃあ、これに入れて。」


マジックハンドで渡されたのは透明のケース。

というか…そのマジックハンドめちゃくちゃ長いな。


っというか虫かご……?


「はやく。」


「あ、はい。

わたあめ、ちょっとここ入っててくれる?」


「わかった!」


自主的に入ってくれた。

ごめん、わたあめ……。


「あとで出してあげるからね。」


「大丈夫でーすぅ。」


わたあめは相変わらず可愛い。

唯一の癒しだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ