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伯爵家をクビになった元メイドは、穢れを掃除する異常清掃会社で働きます  作者: 舞響


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12話 掃除機は隅までかかる


ここで働き始めて一ヶ月。

だいぶ慣れてきた……気がする。


今日はみんなで、図書館の清掃に来ている。


それにしても……広い。

広すぎる。

本棚が天井までそびえていて、まるで迷宮みたい。


「じゃあ、ココロさんとシズクは、Static Featherスタティック・フェザー ― 静羽の祓箒しずはのはらいぼうきでホコリを落としてね。」


「了解しました!」


「は、は、はい。」


ヌメリー先輩――は、相変わらずキョロキョロして落ち着かない。


「ちなみにこれは 静電気を利用してホコリを吸着し、一度取ったホコリを再付着させないものだよ。」


「そうなんですね!」


ただのハタキではないのか…


「ヌメリー先輩、よろしくお願いします!」


そう声をかけると、


「よ、よ、よ、ろよろく。」


……よろく?

相変わらずのどもり具合だ。


「そして、アブラーキさんとシュウは、ホコリを落としたところからDust Eaterダスト・イーター無塵の暴食むじんのぼうしょくかけて。」


「はーい。」


「はい。」


シュウさんは元気よく手を挙げ、レイさんは短く返事をする。

朝早いからか、レイさんはいつもよりトゲトゲオーラが強め。


「ダスト イーター?」


私が首をかしげると、


「あー、初めて見る? もしかして。」


シュウさんが笑う。


「これはね、吸引力がすごいんだよ。ホコリがめちゃくちゃ吸えるの。

あ、わたあめちゃん気をつけてね。」


私の肩にいたわたあめにも声をかけてくれる。


「は、はい! 今日は大人しくしてます!」


わたあめはぴょこんと跳ねて、私のポケットにすぽっと入った。


私とヌメリー先輩は、はたきを手にホコリを落としていく。

それにしても……すごいホコリ。

本にも、棚にも、空気にも、全部に積もってる。


はたき終えたところから、ダスト?…掃除機が動き出した。


ごおおおおおおお——!


すごい音。

そして吸引力、本当にすごい。

床のホコリが一瞬で消えていく。


「ココロちゃんとシズクは、このをDust Suckerダスト・サッカー塵喰いの吸筒ちりぐいのきゅうとう使って、本棚の細かいところも吸って。」


「わかりました!!」


渡されたのは、手持ちタイプのミニ掃除機。

ノズルの先端がブラシになっていて、細かいところも吸えるらしい。


「こ、こ、ころころころさんは、あ、あっちの隅からお願いします。」


ころころ……?

相変わらずのどもり具合に、ちょっと和む。


「わっかりました!」


私は本棚の隅から順にホコリを吸っていく。

ブラシでこすりながら吸うと、みるみる綺麗になっていく。


……本棚の奥の隅。


あ、綿埃!

掃除機で吸おうとする。


……あれ、吸えない。


なんで?

ホコリじゃないのかな?


んー、と目を凝らす。


その綿埃みたいなものが、すぽっ、と棚の奥の隙間に消えた。


え!?

ええーー!?

ど、どこ行ったの!!


キョロキョロと隅を探していると、棚の端に小さなボタンがあるのに気づく。


「えいっ。」


思わず押してしまった。


ごごごごごごご——!


あ、なんか動いてる。

やばいかも。


「ココロさん、何の音?」


「ちょっと何事ー?」


「どうしたのー?」


「な、な、な、なんですか?」


ヒカルさん、レイさん、シュウさん、ヌメリー先輩が近づいてくる。


「あの……何か未知の扉、開けてしまいました。」


恐る恐る指さした先には、ぽっかりと開いた別空間。


「……とりあえず入ってみようか。」


ヒカルさんが微笑む。

みんながぞろぞろと続く。


中に入ると——


「これは……貴重な古書ばかりだね。」


ヒカルさんがホコリを払って本を開く。


「そんなにすごいものなんですか?」


「うん。金額にしたら相当だよ。

伯爵家の屋敷が一棟は余裕で建つね。」


「え!? そんなレベルですか!」


びっくりしすぎて声が裏返る。


「それにしても……まさか、こっちも掃除?」


レイさんがため息をつく。


「そ、そ、そうなりますよね……」


ヌメリー先輩もキョロキョロと見渡す。


「わあー……ほんとに。

そろそろニコチン摂取必要になってきたかも。」


シュウさんがしゃがみ込む。


あ……

可愛さが減ってきた。

あの“やさぐれヤンキー”に変身する前兆だ。


「……とりあえず、こっちも掃除だね。」


ヒカルさんが古書をそっと閉じる。


そこからみんなで一気に掃除に取りかかり、

ホコリはすっかり綺麗になった。


「はあー……つっかれたー。これ追加料金でしょ?」


レイさんが肩をぐるぐる回す。


「もう無理ー……煙が足らねぇ……」


シュウさんは項垂れて、完全にヤニ切れモード。

あの可愛い雰囲気がどんどん消えていく。


「みんな、お疲れ様。」


ヒカルさんが穏やかに笑う。


そんな中で——


さっき動いた“ホコリ”。

あれって何だったんだろう?


気になって、私は膝をつき、隅を覗き込む。


……いた!!!


「ココロさん、どうしたの?」


ヒカルさんが私の視線を追う。


「あれです、あれ!!」


ヒカルさんも同じようにかがみ込む。


「あれ……穢れだね。」


「えー、ちょっとまじー?」


レイさんもコソッと近づいてくる。


ヌメリー先輩も、シュウさんも静かに集まってきた。


「あれは処理しないと、この部屋、永遠にホコリだらけだね。」


ヒカルさんの言葉に——


「え!?」


思わず声が裏返る。


「じゃあ、もう一踏ん張りだ。」


「えー……もう最悪。」


レイさんがグッと立ち上がる。


「あー……もうニコチン足りねぇってのに……やってらんねぇ……」


シュウさんは完全に“やさぐれヤンキー”へ変貌。


「と、と、とりあえず……ダスト・サッカーの吸引力、マックスに変更します。」


「吸引力マックス?」


「そ、そうです。充電はすぐ切れますけど……穢れを吸うには、こ、これじゃないとダメです。」


ヌメリー先輩が説明してくれる。


「わかりました。」


「じゃあアブラーキさんはダスト・イーターでここに構えてて。」


「はーい。」


「シュウと俺でスタティック・フェザーを使って、穢れを追い込む。」


「……ういっす。」


ういっすって……誰。


「ココロさんとシズクも、逃げそうになったらそれで吸っちゃってね!」


「了解しました!」


「は、は、い。」


「じゃあ始めるよ。」


ヒカルさんが人差し指を構える。


「迷いし、穢れよ。姿を現せ。」


空気をふっと払う。

その瞬間、空間がぐにゃりと歪んだ。


う、うそ……!!!


私はぎゅっと掃除機を握りしめた。




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