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虫の居所が悪いと

時系列的には翌朝です。

「ああ、くそっ!」

 登校中。

 ボクは昨日のことを思い出して歯ぎしりをする。

 世界が終るんじゃないかと思うほど悩んでいたのに、元凶のバカ兄貴は知らん顔。

 夏姉から諭されたあの後、バカ兄貴は一昨日のことなど全く忘れ去ったかのように鼻歌を歌っていた。

「駄目だ、全然冷静になれない」

 ボクは爪を噛んで怒りを紛らわそうとする。

 中学以来控えていた癖なんだけど、余程バカ兄貴の所業に腸が煮えくりかえっていたらしい。

 みっともないと頭の片隅では理解しつつも辞めるつもりは毛頭なかった、が。

「おーい、さとりん。美少女が台無しだぞー」

「え?」

 後ろから明るい声音が聞こえたと同時に肩に重みが走る。

「ああ、宮坂さんか――」

 こうボクに親しげに声をかけてくる人物は1人しか知らない。

 なのでボクは笑顔を浮かべて振り向こうとしたけど。

 ぷにっ。

「……」

「アハハハハハ、引っかかったー」

 そう。

 宮坂さんの人差し指はボクの頬にめり込んでいた。

「小学生じみたことをやらないでほしいな」

 羞恥の感情で一杯になっているボクは顔を引き攣らせながら抗議する。

「良いじゃん、良いじゃん。減るもんじゃあるまいし」

 が、宮坂さんは笑うだけで謝ろうとしなかった。

「……」

 宮坂さんの性格上、追及しても馬鹿を見るだけ。

 無駄なことをしたくなかったボクは肩を竦めて終わらせる――とでも思った?

 残念だけど今のボクはそれを笑って許せるほど機嫌が良くなかったんだよねこれが!

「さ、さとりん!? 痛い痛い!」

 ギリギリギリ。

 ボクに人差し指を掴まれた宮坂さんは悲鳴を上げるけどボクは無視して続ける。

 握力は人並みしかないが、それでも指の1本や2本ぐらいなら折ることも出来るよ?

「わ、分かった! 謝るから許してさとりん!」

 涙目を浮かべている様子から宮坂さんは本気で痛がっているのだろう。

 まあ、ボクとしても宮坂さんが反省してくれば良いので、掴んでいた指を離すことにする。

「おお……愛しい我が指」

 そう己の指を優しくさする宮坂さん。

 その様子を見ながらボクは呆れ調子で苦言を呈す。

「宮坂さん、スキンシップは大事だけど、もう少し人の機嫌を鑑みようね」

 夏姉ほど空気を読めとは言わないけど、ボクが普段と違うことを察したら別のアプローチ法を取ってほしかった。

「さ、さとりん。それって盗人猛々しいよ」

「先にちょっかい掛けてきたのはそっちでしょ?」

 宮坂さんの抗議は半分合っている。

 しかし、それを認めると突っ込んでくるのは明白だったので、ボクはあえて強気に出た。

「うう……さとりん。ひどーい」

 半分涙目でそう訴える宮坂さんが嫌に印象的である。

どんなに大らかな人でも機嫌が悪い時があります。

そしてその時に、おちょくると、誰であろうと怒られます。

過去、大学の友人が教授の機嫌を読むのを失敗し、雷を落とされました。

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