悟の悩み
「やっぱり電気料金が高いねえ」
ボクは電気料金のレシートを眺めながらそう漏らす。
5月。
午後4時。
家へと帰ったボクは先月分の光熱費の領収書が届けられていることに気付き、制服姿のまま家計簿と向かい合っていた。
春はクーラーや暖房を使わない季節のはずだけど、今月はピークである8月とほぼ変わらない光熱費。
もしこのまま夏に突入したらとても愉快な金額が出現することは目に見えている。
ただ、誤解しないでほしいのはボクはちゃんと対策を取っていた。
電球をLEDに変え、冷蔵庫にも必要最低限の物しか入れていない。
なのに電気料金はピーク並みである
どうしてこうなったのかと言うと……
「何で電気料金を値上げするのかなあ?」
自分の足をテーブルの向こうにある椅子に乗せたボクは恨めしげに呟く。
そう。
様々な諸事情によって電力会社が値上げに踏み切った影響によるものである。
おかげでボクがどんなに工夫を凝らそうとも、結果的に例年より高くなってしまった。
「はあ~……」
自分のせいではないと分かっているけどため息が出てしまう。
これ以上何を削れば良いのかとボクは頭を抱えてしまった。
だからボクは気付かなかった。
家計簿に頭を悩ませていたため後ろの注意が散漫になってしまっていた。
話は変わるけど、世の中には漫画の様なスキルを持つ人間が必ずいる。
それは女性がピンチに陥った時に現れる悪夢の様な人間が。
「さ~と~り~」
ギュム。
「わっ! ひゃあ!」
後ろから伸びてきた腕がボクの両肩を掴んだのでボクは思わず声を上げる。
飛び上がりそうになったボクだけど、その両腕は首に巻き付くようボクを抱いていたため、椅子をガタガタと揺らすだけで終わる。
「ん~、暗い顔をしているけど何かあったのかい?」
ボクの耳元で囁きかける甘い声。
その心底『俺はお前のことを心配している』の想いが込められた言葉にボクの心拍数は跳ね上がった。
「何でもない! 何でもないって!」
ボクはおたおたしながら腕を外そうともがくのだけど、憎らしいことにうんともすんとも言わない。
「こら、暴れるなって」
結局のところ、力で抑え込まれてしまった。
「よしよし」
ボクが脱力したことを感じ取ったのか、途端に体の拘束が解かれる。
「で、改めて聞くけど何があった?」
「……」
そしてボクは後方を振り返る。
見上げなければならない高身長に平均より少し長めの髪。
細い、けど軟弱と映らない程度に筋肉を付けた人物は歯を見せて笑う。
「……馬鹿義兄、何のつもり?」
様々感情を詰め込んだ僕はそう詰問するが、当の本人に届いていない。
それどころか悪気のない様子で。
「何って……悟が沈痛な表情をしていたから、それを解してあげようと思ってね」
そうのたまうのは風倉進。
ボクの親戚であり、同級生で同居人。
「うん、とりあえず死んで♪」
「ぐはぁ!」
何かもう色々と突っ込むのが面倒くさくなった僕はとりあえず殴っておいた。




