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家族会議

ようやく投稿出来ました。

「ん~、やっぱり悟のご飯は美味しいわね」

「そっか。夏姉、ありがとう」

 夜。

 今日の夕飯を夏姉が褒めてくれたので嬉しくなる、が。

「でも俺としてはもう少し塩が欲しいな」

「じゃあ自分でかけなよバカ兄貴」

 バカ兄貴の発言がその喜びに少し水を差した。

 時宮家の決まりとして朝食と夕飯は全員で取ることになっている。

 その掟を作ったのは両親じゃない、夏姉だ。

 時宮夏月。

 ボクとバカ兄貴の一個上であり、都築原高校生徒会長。

 ショートカットで猫の様な雰囲気を持つ夏姉はその陽気な性格で先生や生徒からの信頼が厚い。

 学校でも家庭でも夏姉はよく変なルールを制定して周囲に迷惑を掛けているけど、あまり反発が上がらない。

 それは偏に夏姉の、ふざけるけど一線は越えないという絶妙な空気の読み方ゆえだった。

 ああ、ちなみにボクと夏姉の両親は海外で放浪している。

 どの国で何をやっているのかは分からないけど、毎月決まった額を届けてくれることから生きてはいるだろう。

 だから食卓にはボクとバカ兄貴、そして夏姉こと時宮夏月の3人で取っていた。

「夏姉、そしてバカ兄貴、相談があるのだけど」

「うん?」

「何かしら?」

 バカ兄貴と夏姉がボクの方を向く。

 どうやら2人とも聞いてくれるようだ。

 なのでボクは安心して悩みを打ち明ける。

「今日、光熱費の請求が来たんだ」

 その悩みとは今後の家計の行方。

 3人全員が気を付けなければならない議題のため、敢えて口にする。

「夕食時に似合わない辛気臭い話ねえ」

「ごめん夏姉。だけど今回は許して頂戴」

 夏姉が不機嫌そうに鼻を鳴らしたのを見たボクは両手を合わせる。

 ご飯は美味しく食べるものという観念がある夏姉は、この手の話題が嫌いなのである。

「ほら、ボク達が3人揃うことなんて食事の時だけじゃん? だからお願い」

「まあ、そうね」

 ボクの説得に夏姉は顎をさする。

「振り返ってみればここ最近私達が揃うのはこの時期しかないわ」

「分かってくれて良かった」

 夏姉が理解を示したのでボクは安堵する。

 第一関門はクリア出来て良かった。

「……家のルールに1日1時間、3人はリビングで過ごすよう追加しようかしら?」

 と、そんな不穏な言葉が聞こえたけど、多分気のせいだろうね。


「このままいくと家計が大変なことになる。だから2人にも協力してもらいたのだけど」

 削れるところは全て削った。

 これ以上の節約となると2人の協力が必要不可欠となる。

 具体的には0時を回ると消灯してほしい。

 どうせ夜中に起きていてもロクなことをしないのだから。

 と、まあボクはそう口に出そうとしたのだけど。

「俺の家から仕送りの量を増やしてもらうのはどうだ?」

 バカ兄貴が議題の前提そのものを覆す意見を出してきた。

「悟って俺の家からあまり援助をしてもらっていないだろ? 何なら今の倍にしてもらっても大丈夫だと思うが」

 実はバカ兄貴こと風倉進。

 家は相当な資産家。

 パンが無ければケーキを食べれば良いと考える思想を持つ憎きブルジョワである。

「それは却下よ、進」

 ボクがどう返そうかと悩んでいた矢先、夏姉がバカ兄貴の意見を否定する。

「風倉家から支援増額は最終手段。本当にどうしようもなくなるまでよ」

 夏姉は自立心が強いのか他人からの施しを拒否する癖があった。

 まあ、おかげで余計な苦労を強いられる時もあるけど、面倒見が良いのか何だかんだ言って助ける時は助けてくれるので邪険にしていない。

「悟、今月の請求費を言いなさい」

「ええと……」

 夏姉に促されてボクは記憶を引っ張り出す。

「なるほどねぇ……」

 全てを聞き終えた夏姉はそう呟いた後、少し沈黙した。

 はてさて、夏姉はどんな結論を出すのか。

 ボクは当然のこと、バカ兄貴も固唾を飲んで見守っている。

 そして出した答えが。

「うん、悟1人がこのまま頑張りなさい」

「はあ!?」

 余りにも酷い答えだったのでボクは思わず驚愕した。

「いや、夏姉。聞いてた? このままだと不味いっていう話」

「ええ、聞いていたわ。だからその点を踏まえて頑張りなさいと言っているの」

 ボクは抗議するも夏姉は受け入れてくれない。

「だって悟って年がら年じゅう悩んでいるでしょう?」

「ああ、この前は中国産がどうとか、円安がどうとかで眉間にしわを寄せていたな」

 夏姉の言葉にバカ兄貴が追従する。

「いや、だって本当のことでしょ!?」

 両方とも甘く考えていれば家計に響く。

 どちらも目を瞑って考えるわけにはいかない問題だ。

 予め悩む価値がある。

「で? その結果どうなった?」

「スーパーで買う食料品が変わった」

「違う、そうじゃないの。問題の家計はどうなった?」

「……特に何も変化が無かった」

 むしろ支出が減って喜んだ覚えがある。

「そう、だから今回も大丈夫ね」

「いや、その理屈はおかしいって!?」

 前回はイケたから今回もイケるって。

 その教訓に従って破滅した企業や人は数知れないよ。

「ボクは絶対反対! 夏姉やバカ兄貴も協力して!」

「はあ……悟は煩いわねえ」

 ボクの徹底抗戦に夏姉は1つため息を吐いた後。

「進、私が許可するわ。悟を黙らせてちょうだい」

「はいはい、了解っと」

 夏姉の言葉にバカ兄貴が立ち上がる。

「って、バカ兄貴。何をするつもり」

 バカ兄貴から不穏な気配を感じ取ったボクは思わず身を震わせる。

「悟、言っておくけど抵抗しちゃ駄目よ」

「だから何を!?」

 夏姉もまた意味不明なことを言う。

「悟は本当に幸せ者ねえ。大好きな進に構ってもらえるから」

「ねえ答えて! 一体何をやるつもりなのか教えてよ!」

 ボクのその抗議に夏姉は妖艶と微笑んだ後。

「フフフ、とっても良いことよ」

 と、その一点張りで全く答えてくれなかった。

「~~~!!」

 その後ボクの身に起こった事は答えたくないとだけ言っておこう。

時宮家の家族構成はこんなもんです。

夏姉こと時宮夏月がヒエルラキーの頂点です。

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