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田坂さんに連れてこられた教会は一檎が予想していたものではなかった。
一檎が住んでいる地域よりは都会だが、大都会とは言えない場所。よくある住宅がたくさん並んでいる中にそれはあった。
教会と言われていたので、真っ白な滑らかな壁とステンドガラスをイメージしていたのだが、この教会は違った。
壁は真っ白だが木製で、頭から白をかぶった大きな日本家屋のような建物だった。
「さあ、林さんこっちですよ」
一檎は田坂さんの後を追った。建物のと垣根の間を通り、裏口へとやってきた。
木製のシンプルなドアには林檎の形の窓がついていた。
田坂さんがドアを開けるとすごく異質な光景を目にした。
そこは真ん中に丸いカーペット以外何もない部屋で壁や床、カーペットでさえすべてが白かったのだ。その部屋は木の床だったが、空いた襖の奥、隣の部屋を見てみると畳でさえ白かった。
一檎は驚きで固まった。
「さあさあ林さん、我が家のようにくつろいでくださいな」
一檎が遠慮していると思った田坂さんがにっこり笑って促した。
「し、失礼します」
一檎は靴を脱いで部屋に足を踏み入れた。
「そこのカーペットでお待ちください。お茶を持ってきますね」
田坂さんはそう言って一檎が大丈夫だと言う間もなくドアの奥に消えていった。
一人残された一檎は部屋を見渡してみた。よく見ると壁紙は林檎柄で、カーペットにも林檎の刺繍が入っていた。それらも白かったが。
しばらくしてやってきた田坂さんは服装が変わっていた。
ファンタジー系の本で見るような聖職者の格好をしていた。白と黒と金で装飾が細かかった。
田坂さんの格好と部屋雰囲気が相まって異世界にいるような気分になった。
田坂さんの手にはティーカップとクッキーが乗った銀のお盆があった。
「田坂さん…?その格好は…?」
「ああ、これですか?これは正装です。選ばれし方をお迎えするならきちんとした格好にしなければと思いましてね」
「正装、ですか」
「ええ、私は神官長ですので」
神官長…歴史上とか本でしか聞いたことない言葉だ。現実にいるなんて知らなかった。
「そうなんですね」
田坂さんはお盆をカーペットの上に置いた。
「どうぞ。アップルティーです。クッキーもありますよ」
一檎はとりあえずティーカップを手に取った。湯気が立ち上る表面からはほのかに林檎の香りがした。
一檎はだんだんこの場所が不気味に感じてきた。
だけれど、林檎尊信団がどんな活動をしてるのかを知ってみたい気もした。ほかの信者はどんな格好をしてるのかとか、どんな場所で祈りを捧げてるのかとか。
「林檎はお好きなんですよね?紅茶が嫌いですか?」
一檎はハッとして、紅茶に口をつける。ちょっと怖かったからほんの少しだけすすった。
「お、おいしいです」
「よかった。我が林檎尊のお恵みを使用してるんですよ」
目の前の田坂さんの優しそうなほほえみがなんだか不気味に思えてきた。
そろそろ帰ろうと一檎は立ち上がった。
「ごちそうさまでした。ありがとうございました………あれ?」
頭がぼーっとする。足元もおぼつかない。
そして、一檎は前に膝をついた。
「え?」
体から汗が噴き出した。両手をついて深呼吸をしようとするが息は荒くなっていく一方だ。
「た、田坂さん?」
一檎が田坂さんの顔を見ようと頭をあげたら、クラっとしてカーペットの上に倒れ込んでしまった。
視界が歪んでいき、一檎は意識を失った。
真っ白で何もないと不気味ですよね…




