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いや、つかまろうとした。

もうすぐ手が吊革にかかるというところで電車が動き出した。

一檎はバランスを崩してしまい、隣の人に倒れ込む。

隣の人は一檎を受け止めてくれた。


「すみません!ごめんなさい!」


「だいじょうぶですよ。って、昨日のお嬢さん?」


「え?」


一檎が顔をあげると昨日の男がいた。


「奇遇ですね。これから学校ですか?」


「はい。そうなんです」


彼は昨日よりもフォーマルな格好をしていた。


「これから仕事ですか?」


「そうですね。仕事みたいなものです」


それから無言で電車に揺られていた。


     ・ ・ ・


降りる駅が来たので男に声をかける。


「あ、お仕事頑張ってくださいね!では!」


「ええ」


そして、一檎は電車から降り、改札へ向かった。

一檎の高校は私立の学校だ。電車に乗ればすぐに着けるし、イベントも楽しそうで、充実した学園生活を送れると思ったから選んだ。

実際、毎日楽しく過ごしている。

駅を出ると、後ろから声がかかってきた。


「ば~ら!」


『ばら』は私のあだ名だ。

名前が一檎で、フルネームで見たら林檎もあるから、バラ科からとって『ばら』だ。


「おはよう、みく」


「うん!おはよう!」


この子は大花実紅(おおはなみく)。一檎の親友だ。

腰までの長いサラサラの髪の毛がうらやましい。

みくとは二年連続で同じクラスになれてすごくうれしかった。


「じゃあ、れっつご~!ゆったりできない時間だよ」


みくに言われて腕時計を確認する。


「あ、ほんとだ!」


一檎たちは早歩きで学校へ向かった。


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