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#掌編未満  作者: 深川夜
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第七夜:勿忘草の花束を/幸福な王子

【勿忘草の花束を】


さよならは言わないでください。

そんなさみしいひとことで、今までのあなたとわたしを消さないで。

勿忘草の花束と、「ご機嫌よう」で別れましょう。

いつか会えると思いながら、わたしとあなた、思い出にしたほうがきっと明るく生きていけるわ。


それではあなた、ご機嫌よう。

可愛いあのひととお幸せにね。


ーーー

【幸福な王子】


幸福な王子が幸せだったのは、ひとに分け与えられる「価値」を彼自身が持っていたことと、ツバメという理解者がいたことだ。

私にはルビーもサファイアもないから、別の価値を差し出すしかない。

例えば、寂しいと嘆く誰かのための、一夜限りの相手になるとか。

それなのにどうしてだろう。それでよかったと思うのは一時のことで、いつもその後に酷い後悔に苛まれる。


季節が戻ったような嵐を避けて古いデパートに入った。

待ち合わせまで三十分、時間を潰すにはちょうど良かった。

ゆっくりと降りてくるエレベーターの数字を目で追いながら、私は幸福な王子を羨ましく思った。

私が死んでも、きっとあの王子のように鉛の心臓が残ることはないだろう。

本当に相手のためになる幸福は、鎮痛薬にもならない一瞬の快楽とは違う。


本当は分かっている。

分かっているのだ。

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