5/16
第五夜:少女は祈る/紫陽花
【少女は祈る】
ずっと一緒にいようね、なんて口約束を信じ切れるほど私はもう幼くもない。関係性は常に変化し続けるし、永遠が確約されたことなど有史以来一度たりともないだろう。それでもその言葉を心のどこかで信じて期待してしまうのは、私が心の内に思春期の少女を押し隠しているからだ。その少女が、甘い口約束を信じたがっている。「本当に?」と縋るような声をあげるのだ。
ーーー
【紫陽花】
僕の家が紫陽花屋敷なのは近所では有名な話で、六月にはそれはそれは見事な花をつける。よっぽど肥料がいいのねえなんてお隣さんが言うものだから、僕はとりあえず笑っておく。
開いた新聞には連続殺人事件の一報。犯人は三年前から捕まらない。人間って弱アルカリ性なんだなあ。雨の中、赤紫色が眩しい。




