4/16
第四夜:才能/月のない夜
【才能】
男は焦っていた。周囲を見渡せば才能の塊ばかりだった。
男には自身に才能がないということを嫌というほど分かっていた。
故に、周囲と肩を並べるには努力するほかないと思っていた。
周囲は疑問に思っていた。男が劣等感に喘いでいたからだ。
男には誰よりも努力を重ねることができる才能があった。
それを誰しもが認めていた。
男の不幸は、才能に憧れるあまり、自身の才能に気づかないところにあった。
ーーー
【月のない夜】
三日ぶりに君と逢う。
待ち合わせはいつもの公園で、少し早く着いた僕はひとりベンチに座って君を待っている。
墨を流したような夜空は黒く、ああ今日は月が出ていないとぼんやり考える。
立待月。居待月。寝待月。
月の異名を教えてくれたのは君だった。
今日の月齢はいくつだっただろうか。確か、明日が新月のはずだ。
なあ聞いてくれよ。昼間電話があってさ。
友達が言うんだ。君が死んだって言うんだ。事故に遭って死んだって言うんだ。
そんなはずあるわけないだろうって僕は怒鳴ったんだ。
だって今夜、君と逢う約束をしていただろう?だから、――……。
月のない夜。僕は君を待ち続ける。
君はまだ来ない。




