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第十五夜:ひかり/境界線
【ひかり】
青のインクを流したような空から、真っ直ぐに白い日差しが降り注いでいた。
しんと静まり返った世界で、蝉だけがけたたましく泣き叫び、その存在を主張している。
眩い夏の午後。
僕の頬を伝った汗とも涙ともつかない液体がぽたりとアスファルトに落下し、足元の影に黒い染みを作った。
失うものなど何もないと嘆いた夜、光が見えないと俯いた朝、手を差し伸べてくれたのは君だった。
君が僕に、僕の価値と世界の美しさを教えてくれた。呼吸の仕方を教えてくれた。笑い方を教えてくれた。
愛し方を、教えてくれた。
君は今日、世界のどこにもいなくなってしまった。
視界が揺れる。
また頬を何かが流れ落ち、影の中へと消えていった。
ーーー
【境界線】
君は朝が怖いという。何もかもを照らす朝日が怖いという。
午前三時、僕は君の弱音をじっと聴いている。
君の紡ぎ出す言葉は震え、夜と朝の狭間に消えてゆく。
じきに僕達は朝を迎える。大丈夫。大丈夫。怖くないよ。
この境界線の向こうでも、君は綺麗で素晴らしい人に変わりはないのだから。




