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第十六夜:僕が僕であるために
【僕が僕であるために】
書くしかないのだと彼は言った。
例え読まれなくても自分が自分で在り続けるためには書くしかないのだと。
僕はそんなのごめんだ。
僕は誰かにとっての宝石になりたかった。
あるいは消えない傷に。
僕が生み出したものが代替不可能な何かになれと強く祈った。
分かっている。僕の技量じゃあそんなの不可能だ。
だから僕の書く物語にはなんの価値もない。ただの文字の羅列だ。
分かっている。
それでも、僕は僕を完全には諦めさせてくれない。
一縷の望みをかけて、僕は今日も言葉を吐き出し、文字を紡ぐ。
彼が言った通り、自分が自分で在り続けるために。
届け。届け。届け。どうか心の、奥深くまで。




