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第十四夜:動けないのは/脚
【動けないのは】
今日、街できみとすれ違った。
一瞬のことだったからきみは気づかなかったと思う。
明るい色のワンピースと、隣には見知らぬ男。
幸せそうに寄り添う姿は、ぼくに呼吸を忘れさせた。
きみと別れて半年が経つ。
ずっと、頭の隅にきみのことがあった。
きみは脆い人だから、ひとりで泣いてやしないかと自分勝手な心配をしていた。
きみを選ばなかった罪悪感が、ぼくをそうさせたのかもしれない。
だけど違った。
今日はっきりと分かった。
あの日から動けないのはぼくの方だった。
きみはとっくに、動き出していたんだね。
ーーー
【脚】
僕は、僕ぁね、女の脚が好きなんだよ。
すらっとした女の脚が、ハイヒールにぴったりと嵌っている様が好きなんだ。
どんな女でも良いってわけじゃあない。
女は二十代後半が一等良い。ハイヒールは赤が良い。
鮮血のような赤の、てらてらと光るエナメルのヒールが良いんだ。
その脚に、僕ぁそっと口づけて舌を這わせたい。
何、そんなことをさせる女はいない、マネキンの脚で我慢しろと。
それはもうやったんだよ。女の死体を盗んだ時もあった。それでは駄目なのだ。生きた女じゃないと。
だから今、こうして君に打ち明けたのだ。
そのために君を誘拐したのだから。
さあ、もういいだろう。僕のささやかな願いを叶えてくれるね。




