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第十二夜:海/正しい愛し方
【海】
凪の夜に海辺を歩いてはいけないよ。
そう教えてくれた友人が死んだのは去年の夏だった。
海で死んだ亡霊が海へと人を誘うのだという。
今日、僕は暗い海辺を歩く。
静かな海に友人が立つ。
手招きをする彼に僕は静かに首を振る。
まだ行けない。
だけど君に会えて良かった。
友人は寂しそうに笑い、波の狭間に消えてゆく。
さざ波の音を背に、僕は月のない夜空の下帰途に着く。
また来年、きっと君に会いに行く。
ーーー
【正しい愛し方】
優しいだけの愛情はいつだって物足りなくて、苦しくて、居心地が悪くて、それができないことを責められているような錯覚に陥る。
だからあなたがわたしと同じだと分かった時は嬉しかった。
愛し方を間違えた者同士理解しあえると思った。
だけど駄目だった。
あなたの愛はいつだって優しい。
あなたは正しい愛し方を知っている人だった。
ぐずぐずに泣いてあなたの首に手をかけた。
わたしの力はあなたの首を絞め上げるにはあまりに弱かった。
あなたを殺しきれずにうつむいたわたしの頭を、あなたはやはり優しく撫でた。




