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「南方から珍しいお茶をいただいたの。健康にとってもいいお茶なんですって。一緒にいかが? たまには誰かと美味しいものを分け合いたいときだってあるのよ。お父様は今、体調を崩されているみたいで……」
国王に断られたから、アルマスのところにやってきたのだろう。
彼女が親しくしているのは、ラモン伯爵家のシーラのみ。一時期はそのシーラすら排除しようとしたが、うまくいかなかった。だが、エメリーネの周囲からすべての人間を遠ざけても、不審がられるだけ。昨年は、護衛の騎士を遠くにやったばかりなのだから。
少しずつ、少しずつ、鳥の羽をもぐようにエメリーネから余計な人間を取り除く。そうすれば彼女は、最終的にアルマスを頼ろうとするはずだ。
「エメリーネ様にお気遣いいただき、至極恐悦に存じます」
「まぁ、アルマスったら。大げさね」
くすくすと笑うエメリーネに、ソファに座るよう促す。
「シーラ。こちらのお茶を用意してくれる?」
「かしこまりました」
「シーラはこのお茶を淹れるのがとっても上手なのよ」
シーラはアルマスの秘書官にお湯や茶器の場所を尋ねている。彼女にはまだ、エメリーネのために働いてもらおう。
「ところでエメリーネ様。王妃殿下の宝飾類を確認したいと、コンストから聞いたのですが……」
アルマスのほうからこの話を切り出せば、彼女だってこの件を疑ったりはしないだろう。
「ええ、そうなの。お茶会でクロック公爵夫人が素敵な首飾りをつけていらしたの。わたくしも公爵夫人を見習いたくて、お母様の宝飾類を借りようと思って……」
「エメリーネ様にはエメリーネ様の良さがありますから。何も公爵夫人の真似をなさる必要はありませんよ?」
「でも、お母様がどのような宝飾類を持っていたか、確認するのも娘の役目ではなくて?」
なるほど、とアルマスは頷く。
「では、コンストに目録を用意させましょう。まずはそちらで確認していただくのがよいかと」
「ありがとう、アルマス。やはりあなたに頼んでよかったわ」
アルマスに感謝の意を示し、心からの笑みを浮かべるエメリーネの姿に、アルマスの胸の奥がざわりと音を立てる。
ちょうどそのとき、お茶の用意を終えたシーラがカップを並べた。
嗅いだことのない不思議な香りに、アルマスもつい顔をしかめる。
「エメリーネ様、こちらのお茶は?」
「シナモンティーというそうよ? ハーブティーの一種ですって。風邪の予防とか、冷え性対策とか、とにかく健康にいいお茶なんですって。リナが言っていたわ。どうぞ、アルマスも飲んでみて」
エメリーネの透き通るような白い指が白磁のカップを掴み、それを口元にまで運ぶ。コクリと一口飲む様子を、アルマスはじっくり見つめていた。
「最初はクセがあって飲みにくいかと思ったのだけれど、わたくしも今では、毎日これを飲んでいるの」
無垢に笑うエメリーネに釣られ、アルマスもカップに口をつけてみた。舌に刺激が走るものの、味は悪くない。渋すぎず、甘すぎず。
「どう? アルマス。お口に合うかしら……」
不安そうにおずおずと尋ねるエメリーネは、小動物のようだ。
「ええ、エメリーネ様が言うように、クセのある味ですが……やみつきになりそうですね」
「そう、よかったわ」
そこでエメリーネはパチンと手を叩く。
「アルマスには健康でいてほしいもの。こちらのお茶、お裾分けするわね」
オディロンがエメリーネの側から離れたからだろう。アルマスの望む彼女が戻ってきた。
「ありがとうございます、エメリーネ様」
アルマスの言葉に、エメリーネも笑顔で返した。




