表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/40

22.

(どうやら機嫌がいいみたい。気分がよくなると、色が変わるのかしら……? 今までの黒は不機嫌だったってこと? そして機嫌がよくなって黄色になった……)


 パーティー会場では、大半の人間のオーラが黄色か緑色だった。あのような華やかな場であれば、特別な事情がない限りは気分も高揚し楽しむだろう。


 となれば、黄色や緑はそういった楽しみを表す色なのだろうか。


「エメリーネ王女。補佐官が決まるまでは、私のほうでお手伝いしたいと思いますが」

「まぁ。アルマスが手伝ってくださるの? 心強いわね」


 ニコニコと笑みを浮かべるアルマスのオーラは黄色のままである。


「アルマス、早速で悪いのだけれど、お母様が書かれたお礼状の写しってあるかしら……」

「王妃様のですか?」


 怪訝そうにアルマスは眉を寄せた。


「ええ。みんな、お母様のお礼状を褒めてくださったの。わたくしも勉強のために見てみたいと思ったのだけれど……」


 胸の前で両手を組んで、少し上目遣いでアルマスを見上げる。


 これもパーティーで誰かが言っていたのだ。殿方にお願いをするときは、可愛らしく手を組んで、上目遣いで「お願い」と言えばイチコロだと。


 二十歳も年上のアルマスにこの技が通じるかどうかは微妙なところだが、少し世間に疎い十七歳のエメリーネという設定であれば、これで問題ないはずだ。


「……コホン。エメリーネ王女。しばしお待ちください。探してみます」

「ありがとう、アルマス。頼りになるわ」


 そこでエメリーネはニッコリと微笑んだ。


「では、早速お願いしてもいいかしら? その間に、こちらの目録を確認しておくわね」

「御意」


 なんとかアルマスを追い払うことに成功した。

 退出した彼を見届け、エメリーネもほっと息を吐く。


「エメリーネ様、舞台女優になれますよ」


 シーラがくすりと笑みをこぼせば、彼女の眼鏡も光を反射する。


「そうね。だってアルマスの中では、少し愚かな王女エメリーネができあがっていると思うの。だからいきなり、彼に反抗するのも得策ではないような気がして……」


 エメリーネが一人対抗したところで、孤立するのが目に見えている。というのもオウネル侯爵の話を聞いてしまったからだ。誰がどうアルマスと繋がっているかわからない。


 あまり敵対心を剥き出しにして、味方と引き離されても困る。それは先日の贈り物の件で学んだことでもある。

 特にシーラを奪われるのだけは避けたい。


「ねえ、シーラ。そろそろメルケルを呼んでもいいかしら?」

「そうですね。怪我の治り具合を診ていただいたほうがよろしいかと思います」


 エメリーネは苦笑した。怪我などしていないのに、診察をするメルケルが少し気の毒だった。だが、大げさに「もう痛くないわ、治ったわ」と演技すれば、彼も納得するだろう。


「お願いしてもいいかしら?」

「はい、すぐに連絡いたします」

「それから、明後日は聖堂に向かいます。メルケルの診察を受けたのであれば、きっと歩いてもいいと言うと思うのよね」


 エメリーネの言葉には、確信があった。

 オディロンに家庭教師を紹介してもらおうとしたところ、アルマスの邪魔が入った。そこでオディロンがベルトルトに会うよう伝えたのは、暗に彼に教育係を相談しろという意味なのだ。


 ゆっくりとソファから立ち上がったエメリーネは、執務席へと移動した。朝のうちに式武官からもらった目録と、今、アルマスがもってきた残りの目録。


 足の怪我が治ったら、念のため、現品との突き合わせも行おう。


 アルマスが王妃の令状の写しを持ってくるまで、エメリーネは目録に視線を走らせた。


(なるほどね……アルマス派の人間は、宝飾類が多いわね。それに引き換え……)


 やはり、もう少し味方となる人間が欲しいところだ。

 エメリーネの赤い瞳には強い決意が輝く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ