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第三話 領地を彩るピンクの光と美味しいおやつ

男爵家に引き取られてから、

早いもので3年の歳月が流れた。


私は8歳になり、

前世の擦り切れたアラサーメンタルは、


この温かい領地での生活ですっかりピカピカに修復されていた。


何せここの人たちはみんないい人すぎるのだ。


「ユーナお嬢様! 今日採れたてのイチゴです、どうぞ!」


「わあ、ありがとう、トムさん!

すっごく美味しそう!」


領民の優しさに触れるたび、

私の自己肯定感は天井知らずで

爆上がりしていく。


前世の、理不尽に怒鳴る上司や

クレーマーに怯えていた日々が嘘のようだ。


そんな居心地最高の男爵領を守るため、

そして何より


「将来、面倒な乙女ゲームの舞台(貴族学院)に巻き込まれないため」に、


ある一大決心を両親に告げた。


「お父様、お母様。

私、王都の貴族学院には行かず、

この領地で家庭教師の先生に学びたいです。


お父様たちのお手伝いをもっと早くからしたいから!」


「まあ……! なんて健気な子なの!」


「ユーナ、そこまで我が家を愛してくれているのか……っ!」


両親は案の定、感動の涙を流して快諾してくれた。



これで「王都に行って攻略対象たちと強制エンカウントする」という

最大のリスクを完全回避!


……したつもりだった。


だが、私の「無理せず、楽しく」というモットーが、

思わぬ方向へ領地ごと動かし始める。


事の発端は、領地のみんなと

「もっと楽しいことをしよう」

と企画した、収穫祭のイベントだった。


ロレッタ男爵領は、

娯楽が少なくて、お世辞にも豊かとは言えない。


(せっかくの美味しい野菜や果物が

あるんだから、もっとみんなで

ハッピーに楽しみたいよね)


そう思った私は、少ない前世の知識を総動員。


さらに、この5年で少しだけ上達した、

私の「ぽわん」と光るピンクや白色の魔法を

組み合わせることにした。


「夜の広場を、これで彩れたら綺麗かも!」


私の魔法は、攻撃力こそゼロだが、

イメージ通りの形(星やハート)で、


優しく幻想的に空間を照らすことができる、

いわば「生身のプロジェクションマッピング」だ。


迎えた収穫祭の夜。


広場の特設ステージで、

領地の子どもたちと一緒に劇やダンスを披露した。


その瞬間、私は指先から満天の星空のようなピンクの光の粒を、

ふわあぁ……と広場全体に降らせたのだ。


「おおお……! なんて美しいんだ!」


「まるで妖精の国に迷い込んだみたいだわ!」


大人も子どもも歓声を上げ、

目を輝かせて拍手を送ってくれる。


さらに、私が考案した

「領地の果物をふんだんに使った特製パンケーキ」を屋台で出すと、これが大ヒット。


笑顔。

美味しいご飯。

そして幻想的な光の演出。



ただ「みんなで楽しみたい」一心で作ったこのお祭りが、口コミでじわじわと隣の領地へ、

そして王都へと広がっていった。




「ユーナ、大変だ!

噂を聞きつけた王都の商人が、我が領の果物を買い付けたいと押し寄せている!」


「お嬢様の魔法の演出を、王都の劇場でもやってほしいという依頼まで来ております!」


気がつけば、数年後には

男爵領に観光客が溢れ、お金が回り、見違えるほど豊かな領地になっていた。


お父様の顔から心なしかシワが減り、

お母様のドレスも少し豪華になっている。


(……あれ? おかしいな。

私はただ、みんなと楽しくおやつを食べて、

ちょっとキラキラさせて遊んでいただけなんだけどな……?)


「さすがはユーナだ。

お前は我が家の、いや、この領地の勝利の女神だよ」


これでもかと褒めてくれるお父様。


ニコニコと頭を撫でてくれるお母様。


領民たちからも「ユーナお嬢様万歳!」と、

好感度がうなぎ登りなことを感じている。


(まあ……いっか!

みんな幸せそうだし、

私も毎日美味しいものが食べられてハッピーだし!)


前世の社畜根性を捨て、

純粋に「楽しいこと」を追求した結果、


私は最高の居場所と

たくさんの大好きな人々に囲まれていた。


これなら乙女ゲームのシナリオなんて、

私の人生には一生関係ないわ。


……そう、高を括っていた、12歳の春までは。

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