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『ダンジョン少佐の兵站改革 〜最弱コアの少年を閣下と呼び、軍事知識で無敵の要塞都市を築城いたします〜』  作者: たい丸
【フェーズ2:ダンジョン都市化編】

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第17回:不夜の支配人と、テオドールの「黄金率」

カシムとの契約締結から数日。地上のダンジョン入り口周辺では、かつてない規模の突貫工事が完了し、白亜の宿場町『テオドール・グランド・テラス』がその姿を現していた。

「――第1工兵大隊、整列! 貴公らの労働により、地上拠点ロジ・ハブは完成した。これより本拠点は『サービス業』へと移行する。槌を捨て、礼節を持って客を迎えよ!」

レティシアの号令のもと、元野盗たちは清潔な制服に身を包み、不器用ながらも「接客」という新たな任務に従事し始めていた。

「レティシア、あの建物の看板、すごくキラキラしてるね! でも、誰がここを切り盛りするの?」 テオがコアから魔力を送りつつ、不思議そうに問いかける。

「閣下、兵站の維持には専門の管理官が必要です。宿泊部門と娯楽部門、それぞれにふさわしい責任者マネージャーを選定しました」

レティシアが手招きすると、二人の人物が前に出た。

「お初にお目にかかります、テオ閣下。本日から宿屋『テオドール・イン』の支配人を務めます、ハンスと申します」 現れたのは、かつてレティシアの北方軍時代の部下であり、兵站局で宿営地設営の神と呼ばれた男。戦傷で前線を退いていた彼を、レティシアが独自のルートで呼び寄せたのだ。

「そして、こちらがカジノ『黄金の方程式ゴールデン・レシオ』の支配人だ」 ロレッタが、赤い髪をかき上げながら、不敵な笑みを浮かべる男を指差した。 「シルバ。僕が王都の裏社会から数学的アルゴリズムで見つけ出した、伝説のディーラーさ」

シルバは優雅に一礼し、手品のようにコインを指先で躍らせた。 「閣下、カジノとは確率の神殿です。我々が1%の『ハウスエッジ(控室利益)』を積み重ねるたび、閣下の魔力は増幅される。……勝っても負けても、最後には笑顔で財布を空にしてもらう。それが私の仕事です」

「……報告。最初の『獲物』……失礼、お客様が到着。中規模の行商人一派、総勢二十名。……誘い込みます」 セアラの影が揺れ、森の境界線から不安げにこちらを窺う行商人たちを、「安全な道」へと誘導し始めた。

「さあ、閣下。幕開けです」 レティシアは冷徹な碧眼に微かな満足感を宿し、最初の客が門をくぐるのを見届けた。

「いらっしゃいませ、テオドール・グランド・テラスへ。ここは貴殿の命と財産が、世界で最も正確に守られる場所です」

ハンスの丁寧な案内と、シルバが鳴らすルーレットの回転音。そして、セアラが影から見守る圧倒的な治安。行商人たちは、その「異常なまでの快適さ」に驚愕し、吸い込まれるように宿へと入っていった。

「すごい! 攻撃してないのに、魔力がどんどん溜まっていくよ!」 「それが兵站経済の真髄です、閣下。……さて、ロレッタ殿。次はインフラをさらに強固にする必要がありますね。特に武器のメンテナンス、および独自の通貨鋳造のために、どうしても『あの種族』の力が必要です」

レティシアの言葉に、ロレッタがニヤリと笑う。 「分かっているさ。計算によれば、北の岩山に住む『頑固な連中』が、そろそろ酒と希少金属に飢えている頃合いだ」

「……ドワーフ、ですね」 セアラが静かに付け加える。

要塞都市テオドールは、宿場とカジノという「胃袋」を手に入れ、次なる目標を「生産の心臓部」へと定めた。


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