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婚約破棄された悪役令嬢ですが、すべて計画通り〜ここからが本番です  作者: 一条 咲夜


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第17話:選択の代償

王城・執務室。


重い沈黙が、まだ続いていた。


「……今は話せない、だと?」


王太子の声には、明らかな苛立ちが混じっている。


「はい」


リリアーナは、変わらず穏やかに頷いた。


「時期尚早かと」


「ふざけるな」


机を叩く音が響く。


「こちらは遊びではないんだ」


「ええ、存じております」


まったく動じない返答。


その温度差が、余計に苛立ちを煽る。


「ではなぜ言わない」


「簡単なことです」


リリアーナは、静かに視線を上げた。


「今お伝えしても、実行できないからです」


その一言で、空気が変わる。


「……どういう意味だ」


「そのままの意味です」


一歩も引かない。


「条件が整っていない状態で知識だけ得ても、意味はありません」


「……条件、条件と」


王太子は、苛立ちを抑えきれない。


「ならば、その条件とは何だ」


「それを整えることが、先決かと」


あくまで主導権は渡さない。


「……回りくどいな」


「必要な手順です」


淡々とした返答。


その態度に、王太子は歯を食いしばる。


だが。


(……否定できない)


現実として、状況は悪化している。


聖女は使えない。


民の不安は広がっている。


(このままでは……)


一瞬の沈黙。


そして。


「……何をすればいい」


その言葉は、事実上の降伏だった。


リリアーナの口元が、わずかに緩む。


(来たわね)


「まずは」


静かに言葉を紡ぐ。


「現状の“認識”を改めることです」


「……認識?」


「はい」


一歩、近づく。


「聖女の力に依存する体制を、見直す必要があります」


「……そんなことをしている時間はない」


即座に否定が返る。


「ええ」


リリアーナは、あっさり頷いた。


「ですので、優先順位をつけます」


その言い方に。


王太子はわずかに眉をひそめる。


「優先順位だと?」


「はい」


「第一に、民の不安の鎮静」


「第二に、聖女の“再評価”」


「第三に――」


一拍置く。


「代替手段の確保です」


「……代替?」


「ええ」


リリアーナは、静かに微笑んだ。


「“奇跡に頼らない手段”です」


その発想は、王太子にとって想定外だった。


「……そんなものがあるのか」


「あります」


即答だった。


「ですが」


わずかに視線を細める。


「それには、多少の決断が必要になります」


「……何だ」


警戒の混じった声。


リリアーナは、はっきりと告げた。


「エミリア様の立場を、一時的に下げていただきます」


その一言で、空気が凍りつく。


「……それは」


王太子の顔に、迷いが浮かぶ。


当然だ。


つい先日まで“聖女”として扱っていた存在だ。


それを、自ら否定することになる。


「今なら、まだ間に合います」


リリアーナは続ける。


「完全に信頼を失う前に、“調整”することが可能です」


「……だが」


「選択の問題です」


淡々と、突きつける。


「国を守るか、個人を守るか」


その言葉は、鋭かった。


逃げ場がない。


「……っ」


王太子は、言葉を失う。


そして。


ゆっくりと、目を閉じた。


数秒の沈黙。


やがて――


「……分かった」


低く、絞り出すような声。


「お前の言う通りにしよう」


その瞬間。


すべてが決まった。


「ありがとうございます」


リリアーナは、優雅に一礼する。


(これで、完全にこちら側)


王太子は、もう戻れない。


選択したのだから。



その頃。


「……嘘でしょ」


エミリアは、震える声で呟いていた。


「なんで……そんな……」


聞かされた内容が、信じられない。


「聖女としての活動を、一時停止……?」


ありえない。


(そんなの……)


“主人公”である自分が、外されるなんて。


「ふざけないで……!」


感情が、爆発する。


机の上の物を、乱暴に払い落とした。


「なんで私がこんな目に……!」


怒りと、恐怖。


そして――


焦り。


(このままじゃ、本当に終わる)


その思いが、強くなる。


「……取り戻さないと」


ぎゅっと拳を握る。


その目に、危うい光が宿る。


「何をしてでも」


その決意は。


確実に、破滅へと向かっていた。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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次回、ついに新たな一手が動き出します。

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