表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、すべて計画通り〜ここからが本番です  作者: 一条 咲夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/21

第15話:選ばれなかった者

王城・礼拝堂。


高い天井に、静かな祈りの声が響いている。


本来なら、神聖な空気に満ちた場所。


だが――


今日は違った。


「……聖女様が奇跡を見せるらしい」


「本当か? この前は失敗したって……」


ざわめきが、あちこちから聞こえてくる。


期待と、不安。


そして、疑い。


それらが混ざり合い、落ち着かない空気を作り出していた。


その中心で。


エミリアは、静かに立っていた。


(大丈夫……)


胸の奥で、自分に言い聞かせる。


(ここで成功すれば、全部戻る)


そう。


まだ、終わっていない。


終わらせるわけにはいかない。


「……始めます」


わずかに震える声で、そう告げる。


視線が、一斉に集まる。


逃げ場はない。


それでも。


「……奇跡よ」


手をかざす。


意識を集中させる。


これまで何度もやってきたこと。


“できて当然”だったこと。


(お願い……!)


祈るように、強く念じる。


(今度こそ……!)


――光が、灯った。


「……!」


ざわめきが止まる。


淡い光。


確かに、それは現れていた。


「出た……!」


「やっぱり聖女様だ……!」


安堵の声が、広がる。


(やった……!)


エミリアの胸に、喜びが込み上げる。


(戻った……!)


勝った。


そう思った、その瞬間。


――光が、歪んだ。


「……え?」


違和感。


次の瞬間。


光は、急激に膨れ上がった。


「な、なんだ……!?」


「光が強すぎる……!」


ざわめきが、悲鳴に変わる。


制御が、効かない。


(うそ……!)


止めようとする。


だが。


(止まらない……!)


光は暴走し、周囲を巻き込み始める。


床にひびが入り、壁の装飾が砕ける。


「危ない!」


誰かの叫び。


人々が、慌てて距離を取る。


その中心で。


エミリアは、ただ立ち尽くしていた。


(なんで……!)


理解できない。


さっきまで、確かに――


「……そこまでだ」


低い声が、響いた。


次の瞬間。


――光が、消えた。


まるで、最初からなかったかのように。


「……っ」


空気が、一気に静まる。


誰もが、何が起きたのか分からずにいる。


その中で。


ひとり、前に出る影があった。


リリアーナだ。


「……無理に使えば、そうなるわ」


静かな声。


その一言で、すべてが凍りつく。


「な……」


エミリアは、震える声を漏らす。


「どうして……」


「簡単な話よ」


リリアーナは、淡々と答える。


「条件が揃っていない状態で、無理に発動させた」


その視線は、冷たい。


「当然、制御はできない」


「違う……!」


思わず、叫ぶ。


「私はちゃんと……!」


「ええ」


遮るように、リリアーナが言った。


「“できていたつもり”だったのでしょうね」


その言葉は、容赦がなかった。


「……っ」


言葉を失う。


反論できない。


「あなたは、“再現”していただけ」


静かに、告げられる。


「本質を理解せずに」


その一言が、突き刺さる。


(再現……?)


頭の中で、何かが崩れる。


「だから」


リリアーナは、一歩近づく。


「少し条件が変わっただけで、何もできなくなる」


「やめて……」


声が震える。


「やめてよ……!」


「現実から目を逸らさないで」


冷たく、言い放つ。


逃げ場はない。


「あなたは、“選ばれた存在”じゃない」


その一言。


「……っ」


心が、完全に折れる音がした。


「ただ、“そう見えていただけ”」


静寂。


誰も、何も言えない。


ただ。


その言葉が、すべてだった。


「……もういい」


王太子の声が響く。


その表情は、明らかに冷めていた。


「これ以上、見苦しい真似はするな」


完全な拒絶。


「衛兵」


短い命令。


「彼女を連れていけ」


抵抗する力も、残っていなかった。


エミリアは、そのまま連れていかれる。


すべてを失ったまま。


静まり返った礼拝堂。


誰もが、リリアーナを見ていた。


先ほどの光景。


そして、その言葉。


すべてが、印象に焼き付いている。


「……見事だ」


誰かが、ぽつりと呟いた。


それは、賞賛だった。


完全に。


評価は、逆転した。


リリアーナは、静かにその場を後にする。


足音が、規則正しく響く。


「――これで、終わりじゃない」


小さく呟く。


むしろ。


ここからが、本番。


「次は……」


わずかに、笑みを浮かべる。


「誰を崩そうかしら」


その瞳には、揺るぎない確信があった。


すべては、掌の上。


そして。


物語は、さらに加速していく。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

続きが気になる方は、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります✨

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ