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婚約破棄された悪役令嬢ですが、すべて計画通り〜ここからが本番です  作者: 一条 咲夜


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第13話:二度目の選択

夜は深く。


王城の一角は、静寂に包まれていた。


灯りの落ちた廊下を、リリアーナはひとり歩いている。


足音だけが、静かに響く。


迷いはない。


向かう先は――決まっている。


やがて、足を止める。


重厚な扉の前。


そこは、誰も近づかないはずの一室。


「……久しぶりね」


小さく呟き、扉に手をかける。


鍵は、かかっていなかった。


軋む音と共に、ゆっくりと扉が開く。


中は、薄暗い。


長い間使われていないのか、空気は少し重たい。


その奥へと進みながら、リリアーナは目を細めた。


(ここから、すべてが始まった)


視線の先。


壁際に置かれた、小さな台座。


その上にあるのは――


ひびの入った、古い水晶。


「……まだ残っていたのね」


そっと、手を伸ばす。


指先が触れた瞬間。


――微かに、光が揺らいだ。


「やっぱり」


確信したように、呟く。


(原因は、これ)


聖女の“奇跡”が不安定になった理由。


その一端が、ここにある。


「本来なら」


水晶を見つめながら、静かに言葉を紡ぐ。


「これは、あの子のための“補助装置”だった」


聖女の力を安定させるためのもの。


だが――


「今は、違う」


ひびの入ったそれは、もはや完全ではない。


力は、歪んでいる。


(だから、条件が揃わない)


ほんの少しのズレ。


それが、すべてを狂わせている。


「……前は、壊さなかった」


ぽつりと、零れる言葉。


その意味は、重い。


(その結果が、あの結末)


一瞬だけ、表情が曇る。


けれど。


すぐに消えた。


「でも、今回は違う」


静かに、水晶を持ち上げる。


ひびの奥で、かすかな光が揺れている。


「ここで終わらせる」


迷いはなかった。


次の瞬間。


――パキン。


乾いた音と共に、水晶が砕け散った。


光が、消える。


同時に。


空気が、わずかに震えた。


見えない何かが、解放されたかのように。


「……これでいい」


リリアーナは、砕けた欠片を見下ろす。


その瞳に、後悔はない。


「これで、もう戻れない」


それは、誰に向けた言葉でもなかった。


ただの事実。


そして――


「最初から、そのつもりだけど」


小さく笑う。


同じ頃。


「……っ」


エミリアは、はっと目を覚ました。


荒い呼吸。


額には、うっすらと汗が滲んでいる。


「……今の、何……?」


胸を押さえる。


妙な感覚が残っていた。


まるで、何かが“切れた”ような。


(さっきまで……何か……)


思い出そうとする。


けれど。


形にならない。


ただ、ひとつだけ。


強い不安が、残っていた。


「……やばい」


ぽつりと呟く。


理由は分からない。


でも。


(何かが、決定的にまずい)


そう、本能が告げている。


リリアーナは、静かに部屋を出た。


扉を閉めると、再び静寂が戻る。


そのまま歩き出す。


「――これで、準備は整った」


すべては、次の段階へ。


「さて」


わずかに視線を上げる。


「どこまで耐えられるかしら」


その言葉の意味を知る者は、いない。


だが。


確実に。


終わりへ向かって、進んでいる。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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